2023年3月1日
世界の子ども デンマーク ヨーロッパ

赤ちゃんはマイナス10度までは外でお昼寝!? デンマークのお昼寝事情

北欧のデンマークでは赤ちゃんがお昼寝する場所は、外。

しかも、氷点下の寒さでも、外。

最初に聞いたときには耳を疑いましたが、実際にデンマークに行ってみると…

本当に赤ちゃんたちは、外で寝ていました。

(国際部記者 松田伸子)

外に置かれたベビーカーから聞こえてきたのは…

去年2022年の11月、取材でデンマークを訪れました。街の広場で取材していると、店の外にベビーカーが置かれているのが目に留まりました。

少しして聞こえてきたのは、赤ちゃんの泣き声。ベビーカーには赤ちゃんがいたのです。

すると、すぐに店の中から母親とみられる女性が出てきて、赤ちゃんをあやし始めました。

その日の気温は12度ほど。風もあり、防寒していても寒さを感じました。

こんな中、赤ちゃんを外に置いておいたら風邪をひいてしまうのでは?そもそも、なんで外に置いているの?

いろいろな疑問がわいてきました。

外でお昼寝が当たり前?

「デンマークでは、赤ちゃんはなるべく外でお昼寝させるんです」

こう話し、デンマークの“お昼寝事情”を教えてくれたのは、デンマーク在住20年のニールセン北村朋子さんです。

ニールセン北村朋子さん

ニールセンさんは、自身が出産した際には、自宅を訪れた助産師から「マイナス10度までは外で寝かせてね」とアドバイスをもらった経験があり、当時は、とても驚いたそうです。

ただ、ニールセンさんは子育てをする中で、赤ちゃんを外でお昼寝させることが、デンマークでは当たり前のことだということを実感していったということです。

「レストランやお店の外にベビーカーが並んでいる光景をよく見ます。親は目が届く窓際などにいることが多いですし、ほかの人の目があるから、赤ちゃんが傷つけられたということも聞いたことはありません」

デンマークでは、赤ちゃんによいとされていることの1つが、外の新鮮な空気を吸わせること。子どもが健康に育つと言われているのだそうです。

夏の平均気温は、8月でも17度ほどと過ごしやすいデンマークですが、逆に冬の2月には、寒いところでは平均気温がマイナス3度と、厳しい寒さになります。

それでも、赤ちゃんたちは、服の上にウールのセーター、ズボン、帽子を着て、さらにダウンのロンパースにくるまり、毛布を掛けて、カバーの付いたベビーカーに入って、外でお昼寝をします。

まだまだ疑問が…

日本人の感覚からすると、大丈夫なんだろうかと少し不安になります…

ただ、赤ちゃんを外でお昼寝させるのは、デンマークだけでなく、同じく北欧のノルウェーやスウェーデンなどでも習慣だということです。

外の空気が子どもによいのだとしても、子どもに何かあっても気付けるの?起きて泣いていたらどうするの?まだまだ、疑問がわきます。

ただ、その点については、赤ちゃんを見守るグッズが充実しているのだそう。ベビーカーに取り付けるカメラ、離れていても赤ちゃんの声が聞こえるトランシーバー、温度を計るセンサーなどなど。

ちなみに、デンマークの幼稚園では、お昼寝はテラスに寝具を出してするのだそうです。

デンマーク大使館に聞いてみた

赤ちゃんの外でのお昼寝。日本にあるデンマーク大使館のヨナタン・クヌセンさんに聞いてみると、別の効果があるという研究もあると教えてくれました。

デンマーク大使館 ヨナタン・クヌセンさん

「当たり前のことだったので考えてみたこともありませんでした(笑)今回初めていろいろ調べてみましたが、外で昼寝をさせることで、室内で寝かせるよりも睡眠時間が長くなるという研究があるようです。1.5倍から2倍長くなったそうです。こうしたことから、保健省も『マイナス10度までは完全に安全』として、外で寝かせるための注意点などを周知しているんです」

7歳と10歳の娘がいるクヌセンさん。育休中、子どもは、住んでいたコペンハーゲンのマンションのバルコニーにベビーカーを置いて、お昼寝をさせていたといいます。

お昼寝の間は、家にあるエアロバイクでエクササイズするのが日課で、トランシーバーを通して赤ちゃんの泣き声が聞こえると、エクササイズをやめて、あやしていたのだそうです。

赤ちゃんの頃のクヌセンさんの娘

クヌセンさんは、赤ちゃんを外でお昼寝させる別のメリットがあることも教えてくれました。

「赤ちゃんが長く昼寝するのは子どもの成長にもよいですし、親としても助かりました。デンマークでは、妻と夫両方が育休を取りますが、片方が休んでいるときは、もう片方は働いていることが多いので、一人で子育てをしないといけません。ですから、お昼寝の時間は、貴重な“自分だけの時間”なのです」

雨の日でも楽しむデンマーク

今回の取材の中で、デンマークでは、子どもたちはなるべく外で遊ばせることがよいとされていることも知りました。

幼稚園の中には園舎がなく、園児たちは一日中、森の中で過ごすところもあるようです。こうした幼稚園は「森の幼稚園」と呼ばれていて、デンマークでは一般的だということです。

雨の日でも、屋根のある「あずまや」のようなところで過ごすのだそうです。

それは大人になってからも変わらないようで、街では、雨の日でもおしゃれなレインコートを着て自転車で出勤する人が多く見られました。

「天気が悪いんじゃない。服装が適していないだけ」

デンマークにはこんな言い回しがあり、どんな天気であっても、外で過ごす時間を楽しむ人が多いのだそうです。

雨の日や寒い日は憂鬱になりがちですが、そんな気持ちになったら、このことわざを思い出してみようと思います。

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