最初の大きな地震が発生してから2週間。
トルコ国内で特に多くの犠牲者が出ているハタイ県に向かいました。
中心都市アンタキヤで、50人の住民が犠牲になったという地域を訪れると、1人の男性ががれきの上に座り込んでいました。
名前をメフメド・アシュカルさん(32)といいました。

今回の地震で、父親と弟を失いました。
見せてくれた写真には、ぴったりとメフメドさんと頬を寄せ合う父親の姿がありました。

「父も弟も私に似ているでしょう。一緒に過ごした時間すべてが美しい思い出なんです」
そう語るメフメドさんが今、特に気にかけているのが母親のファトマさん(60)のことです。
愛する夫と息子を同時に失ったファトマさんは、1人では歩くことができないほど憔悴していました。

「私の人生は終わってしまいました。まるで悪夢のようです。今も朝がくるたび、本当は2人が生きているのではないかと考えてしまいます。そして、ここを離れるお金さえありません」
倒壊した家は、15年前から外国に出稼ぎに行ったメフメドさんからの仕送りで建てたのだそうです。
そして、トラック運転手をしていた父親と、パン屋で働いていた弟、メフメドさんの3人が、家族9人の暮らしを支えていました。
家と一家の大黒柱を失ったメフメドさん家族。今は、近くの空き地にある小さなテントで残された7人が身を寄せ合って暮らしています。
立っているのもつらそうな母親の手をそっと握りながら、メフメドさんは、これからの日々について不安を口にしました。
「私はすべてを失いました。最愛の家族と、外国で一生懸命働いて建てた我が家も失いました。もう涙も出ません。これからどうすればいいのかもわかりません」
