トルコと隣国シリアを襲った大地震から1週間あまりがたった2月15日。
取材に訪れた避難所は、大きな公園に防災当局が用意した何百ものテントが所狭しと並んでいました。
そんな中、ぼう然と立ち尽くす、1人の男性の姿が目に留まりました。男性の名前は、ムハンマド・バイラクタルさん(43)といいました。

608番と書かれたテントで、家族9人で避難生活を送っていました。
バイラクタルさんたちは、元々、シリア北西部イドリブ県で暮らしていましたが、内戦から逃れるため11年前に、トルコ南部に逃れてきました。

トルコ南部には、バイラクタルさんたちのような、シリアからの難民が大勢暮らしています。
3年ほど前に、アパートを借りるまでは、長く、トルコ国内に国連が用意したテントで避難生活を送っていたといいます。

トルコで生活をゼロから立て直し家具加工の仕事も見つけて、ようやく暮らしが安定し始めた矢先、大地震によって再び家を失ってしまいました。
テントでの暮らしは、これで2度目です。
幼い頃に足に障害を負ったバイラクタルさん。これまでも、仕事を見つけるのは容易ではなかったと話しました。
地震で破壊された町で、職を見つけることができるのか。2歳半から21歳までの7人の子どもと妻を、どうやって養っていけるのか。

先行きを見通すことは全くできません。
「祖国シリアでは、空爆と銃弾が飛び交う中で恐怖を感じ、家も失いました。トルコでも家を失うことになりました。トルコ政府の支援には感謝していますが、私たちシリア難民の置かれた状況は厳しいです」
狭いテントの中、バイラクタルさんは、言葉を絞り出していました。