地震発生から丸3日たった2月9日。
トルコ南部ガジアンテプ郊外のマンションが建ち並ぶ地区では、複数の建物が倒壊していました。

救助の現場では、地震の発生から72時間、つまり3日を過ぎると生存率が急激に下がると言われています。
加えて、この日の現地の最低気温はマイナス3度。
それでも、家族の無事を信じて、多くの人たちが毛布にくるまり、たき火で暖を取りながら、がれきの山の前で救助活動を見守っています。
この日の朝、現地では家族3人が救助されました。
この家族の知り合いだという男性は、その時の様子を次のように話しました。
「3人は台所にいました。建物は倒壊したのですが、台所はなんとか原形をとどめていて、空間が残されていました。大きなけがもなく無事でした」
3人は、石で壁を叩いて音を出し、救助隊に助けを求めたということです。
ただ、この家族の母親は、まだがれきの下に取り残されているそうで、男性は険しい表情を浮かべて語りました。
「状況は厳しいですが、希望を捨ててはいけません。今もがれきの下に取り残されている人たちが、同じように助かることを願っています」
取材を続けていると、マンションの倒壊現場で生存者の捜索活動の様子を見守る人たちの中に、木材を杖にして、体を支えている男性がいました。
立っているのもやっとなほど、見るからに疲れ切った様子でした。男性の名前は、イスマイル・ベエンディさん(36)といいました。

実家があったマンションに、63歳の両親が暮らしていました。
最初に発生した地震の前日、2月5日は、イスマイルさんの妹の結婚式で、両親も出席して、一緒に祝ったばかり。
そして、地震が起きる約4時間前まで、一緒に過ごしていたのだそうです。
「直前まで両親と楽しい時間を過ごしていたのに…。突然のことで本当につらいです」
別の救助活動の現場では、見守る人たちの中で礼拝を始めた人がいました。名前を、ナイム・ヤサルさん(43)といいました。
数日前に降った雪で湿った地面の上にレジャーシートを敷いて、靴を脱いだナイムさん。
聖典コーランの一節を唱えたあと、立ったり座ったりして頭を下げる動きを3回ほど繰り返していました。

礼拝を終えたナイムさんに声をかけると、次のように話しました。
「取り残された人、見守る人、被害に遭ったすべての人たちのために、祈りを捧げました。ここから歩いて5分ほどの所にモスクはありますが、今は一瞬たりともこの場を離れることはできません」