発災から一夜明けた2月7日午前8時。
私は、地震の被災地・南部アダナへ向かうため、イスタンブール空港に到着しました。
空港の搭乗ロビーには、オレンジの蛍光ジャケットにヘルメットを持った人たちが大勢集まっていました。

集まった人たちはトルコ防災当局傘下の組織に所属するボランティア。これから被災地に赴き、行方不明者の捜索にあたるといいます。
メンバーの女性に話を聞くと、すでに100人くらいが被災地に向かったものの、まだ80人ほどが航空便を待っているとのことでした。
トルコの災害緊急事態管理庁によると、7日午前10時までに2万4000人あまりが現地に入って活動しているということで、被災地には続々と支援する人たちが集まっています。
話を聞いた女性にどのくらい空港で待っているのか尋ねてみると「昨夜8時から」と答えました。
半日、ロビーで待機していることになります。

被災地へ向かう臨時便が出るなど現地へのアクセスが確保される中、こうしたボランティアの多くは、航空券を持っていません。
航空券なしでも、席の空きがある便に順次乗り込むことができ、被災地に入るのだといいます。
取材した女性は、次のように話していました。
「行き先はどこでもいいので、必ず行方不明者を見つけ出します。そのために訓練をしてきたんです」
取材を続けていると、大きな叫び声がロビーに響き渡りました。
「もうたくさんだ!たくさんだ!」
叫んでいる男性は、被災地カフラマンマラシュ行きの搭乗ゲート前にいました。
男性は今回の地震で親戚を亡くしたものの、現地の空港の閉鎖でフライトがキャンセルになり、残された遺族の元に向かうことができないのだといいます。
彼の悲痛な思いが伝わるからなのか、ロビーは静まりかえっていました。
私が乗る航空便の搭乗が始まり、飛行機に乗り込みますが、1時間たっても出発する気配はありません。
その間も、オレンジのジャケットを着たボランティアの人たちが続々と入ってきました。
ようやく離陸となり、機長の機内アナウンスが流れます。
冒頭聞こえたのは、機長の深いため息。
続けて、こう切り出しました。
「祖国トルコにお悔やみ申し上げます。それではどうか、快適な空の旅を」
7日間の服喪期間を発表したトルコの今を表すような瞬間でした。
