
クリスマスシーズンを迎えたヨーロッパ。
ドイツでは風物詩のクリスマスマーケットが各地で開催されています。
多くの人でにぎわっていますが、ことしはロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で、いつもとは違うクリスマスになっていました。
(ベルリン支局長 田中顕一)
氷のないスケートリンク!?
ドイツ東部ブランデンブルクにあるクリスマスマーケット。
会場の中心には子どもたちに人気のスケートリンクが設置されていました。

一見、普通のアイススケートのリンクのように見えますが、実はプラスチック製です。
特殊なプラスチックパネルを組み合わせたもので、わざわざスペインから取り寄せたと言います。
理由はロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰。
ロシアがパイプラインを通じてヨーロッパに送る天然ガスの供給を大幅に削減したことで電気やガス料金が高騰しているのです。
スケートリンクは凍った状態を維持するために大量の電力が必要ですが、主催者は「氷のリンクだと経費が去年よりも数百万円高くなり、費用を準備できなかった。代わりにいいものを見つけることができた」と話していました。
表面には滑りやすくするための液体がまかれ、スケート靴でも滑ることができます。

子どもたちは最初は慣れない様子でしたがなんとかスケートを楽しんでいました。
毎年楽しみにしている子どもたちを落胆させたくないと努力した主催者側も、その様子を喜んでいました。
あの手この手で節約のクリスマスマーケット

例年およそ200万人が訪れる西部フランクフルトのクリスマスマーケット。
ドイツ有数のこちらのクリスマスマーケットでも値上がりした電気を節約するさまざまな工夫が見られました。
その1つがマーケットの売りの1つ、こちらのメリーゴーラウンドです。

遊具を動かすための電気料金を抑えようと隣の小屋の屋根に太陽光パネルを設置。
再生可能エネルギーを活用することにしたのです。
また、クリスマスマーケットのシンボル、クリスマスツリーもこれまでの高さ30メートルあまりの大きなものから、一回りサイズの小さなツリーにしました。

ツリーを小さくすることで電球の数もおよそ6800個から4900個まで減らすことができました。
さらに点灯時間も日没から5時間と半分以下に短縮し、開催期間中の電気料金を去年の半分以下の7万円ほどにまで削減できる見込みだということです。
ただ、それでも十分大きなクリスマスツリー。訪れた人にどう思うか聞いてみると。

「まだまだ十分明るくて驚きました。もっと明かりを減らしてもいいと思います。ただ、厳しい状況だからこそクリスマスの雰囲気を楽しみたい、という多くの人たちの気持ちもわかります」

「エネルギー価格などのインフレで貯金を取り崩す厳しい状況が続いていますが、戦争が続くウクライナの人たちのことを思えば、クリスマスマーケットがあるだけで感謝です」
クリスマスはクリスマスらしく

エネルギー価格の高騰で苦しい中でも、いつもどおりクリスマスを楽しんでほしいと考える店もあります。
クリスマスの雰囲気を味わうために欠かせない「グリューワイン」。

香辛料を混ぜて温めたワインで飲むと体が温まるクリスマスマーケットの定番ですが、電気でワインを温めているためコストが増加。
本当は値上げをしたい。
しかし、ガスや電気の料金が上がり家計の負担が増す中で「グリューワイン」の値上げはできないと判断し、店ではこれまで通り1杯4ユーロ、日本円で560円余りで販売しています。

家族や友人、それに職場の同僚どうしなど、多くの人たちがコップに注がれた湯気の立つ「グリューワイン」を手に、氷点下まで冷え込む中、この1年の出来事をふり返っていました。

「私たちの仕事はグリューワインを通して人々が集う場所を提供し、日々の暮らしに変化をもたらすことです。いまのインフレは我慢して、来年こそは状況が改善することに期待するしかありません。もちろん先のことはわからず不安でいっぱいですが、頑張って状況に適応していくつもりです」
ロシアによる軍事侵攻で最も厳しい状況に置かれているのはウクライナの人たちです。
ただ、ドイツでもエネルギー価格の高騰などで苦しい思いをしている人が少なくありません。年の瀬のクリスマスぐらいはちょっと一息つきたい。クリスマスマーケットにはそんな人たちが集まっていました。
ロシアの軍事侵攻による影響は続いていますが、来年こそは多くの人が心からクリスマスを楽しめるようになってほしいと願っています。
