
サッカーのワールドカップに沸く中東カタール。一年を通じて暖かく乾燥した気候で、夏場の最高気温は40度を超えます。
通常は5月から7月に開催されてきたサッカーのワールドカップも、暑さを避けるため、史上初めて11月開幕となりました。
現地では、暑さに苦しむ声が聞かれると思いきや、寒い、という悩みも。
どういうことなんでしょうか?
(ドバイ支局長 山尾和宏)
11月でも30度超 強い日差しが

日本対コスタリカ戦が行われた11月27日。
カタールの気象当局の発表では、ドーハの最高気温は32度。東京都心の8月並みでした。
現地時間午後1時のキックオフの時間帯は、強い日差しが照りつけ、日の当たる場所に立っているだけで汗が噴き出してきます。

巨大なモニターで試合が観戦できる特設会場の様子を見に行くと、観客はまばらです。
よく見ると、日差しを避けるように、建物の影の形にそって、座る人たちの姿が。11月とはいえ、やはり日の当たる屋外で試合を見続けるのは大変です。
寒さに凍える? スタジアム内

しかし、スタジアムの中は事情が異なりました。
日本戦が行われるドーハの近くのアハマド・ビン・アリスタジアムを訪れると、ジャンパーやパーカーなど長袖の上着を持つ日本サポーターの姿をよく見かけました。

サポーターの男性は、「スタジアムの冷房がかなり強いと聞いていたので、準備してきた」と話していました。

また、別のサポーターの男性は、「ドイツと日本の試合も見に行ったが、足下からの冷房が強すぎて、冷風が出てくる穴を塞いでいた。今回はきちんと対策をしてきた」と話していました。

そう、スタジアムの中は、肌寒さを感じるくらい冷房が効いているんです。
観客や選手たちが暑さに苦しまないよう、すべてのスタジアムに強力な冷房設備が整備されています。壁に大きな丸い送風口が等間隔に並んでいて、そこから冷たい風がピッチ上に勢いよく吹き出す仕組みです。

観客席の足元にも、冷たい風が吹き出す小さな送風口がついていて、観客席を直接、冷やすことができるようになっています。
ただ、細かい温度調節が可能な日本の空調に慣れ親しんだ私たちにとっては、やや強すぎると感じるくらいです。
開幕戦や日本とドイツの試合をスタジアムで取材した私も、勢いよく吹き出す冷たい風にさらされ、寒い思いをしました。
熱中症対策のためとは言え、スタジアムで大量の電力を消費して空調を効かせすぎるのは、気候変動対策に逆行するのではないかという指摘もあります。
街中が冷やされています

こうした強力な冷房設備は、スタジアム以外にも、地下鉄の駅や電車内、ホテルのロビーなどにも整っています。
産油国のカタールは比較的安い価格で発電できるため、安定的に冷房を供給することができるのです。
ドーハ市内には、暑さを避けられる「モール」と呼ばれる巨大なショッピングセンターが各地にあり、家族連れなどで賑わっています。
強力な冷房が作動していて、夏場でも半袖では寒いくらいで、日本からカタールに旅行や出張で訪れた人が、寒暖の差で、体調を崩したという話はよく聞きます。
冷房は最高のおもてなし?

建物や施設の中は、冷房が効いていますが、屋外は、1年を通じて、厳しい暑さのカタール。
日中は暑さを避けるため、屋内で過ごすことが多いです。出かけるのも、もっぱら夕方以降です。特に夏場は、日中、通りで人が歩いているのをほとんど見かけないほど。
カタールの人たちは、客人をもてなすのが文化だとよく聞きますが、暑さの厳しい国で、しっかり冷やした空間を提供することも、彼らなりの最高のもてなし方なのかもしれません。
暑さの厳しい国ですが、訪問の際は長袖をお忘れなく。