2022年10月18日
韓国 朝鮮半島 注目の人物 テーマ

BTSコンサートで釜山が染まった! 会場の外で取材しました 

2022年10月15日、韓国のプサン(釜山)で、世界的な人気を誇るグループ・BTSが、大規模な無料コンサートを開きました。

2日後の17日には、最年長のメンバーが近く韓国の兵役に就くと発表。ほかの6人のメンバーも順次兵役を履行する予定で、グループとしての活動は2025年ごろ再開したいと明らかにしました。

この発表の前から、インターネット上では「今回のコンサートを最後に、メンバー全員がそろうのはしばらく見られなくなるのではないか」といったファンの声が出ていました。

そうしたこともあってか、プサンにはコンサートのチケットを入手した人もできなかった人も、国内外のファンが大勢訪れました。当日のプサンの様子を取材しました。

(ソウル支局・大谷暁)

コンサート発表後の「狂騒曲」

今回のコンサートは、開催までに紆余曲折がありました。

2022年8月下旬、BTSの所属事務所が、無料コンサートの開催を発表。韓国第2の都市・プサン市が2030年の国際博覧会の誘致活動を行っていて、BTSは「プサン万博」の広報大使を務めていることから、万博開催の実現を祈願するコンサートと位置づけられました。

写真提供:BIGHIT MUSIC

当初は、民間企業の工場の跡地にステージを設置し、約10万人を入れて開催する予定でした。しかし、市街地から離れているため観客輸送に混乱をきたすのではないかという声や、出入り口の数が限られるため安全面で問題があるという指摘が出されました。

これを受け、翌月の9月には、会場を市の中心部に近いスタジアムに変更することを決定。入場できる人数は約5万人と半分になりましたが、所属事務所は「快適な観覧環境を整えるため、場所を変更した」と理解を求めました。

多くのファンを持つBTSだけに、周辺の宿泊施設にも影響が及びました。韓国メディアによりますと、コンサート開催の発表直後から、当日のプサン市内の一部の宿泊施設の値段がふだんの10倍にも引き上げられたということです。

すでにあった予約を一方的にキャンセルし、値段を上げて再び予約を受け付けるケースもあったということで、公正取引委員会が調査を検討していると伝えられました。

そうした中で、1日だけのコンサートに向け、準備は着々と進められていきます。

世界各国から「ARMY」が

韓国では、2022年10月1日から、入国24時間以内にPCR検査を受ける義務がなくなり、新型コロナウイルス対策として入国の際に必要な防疫措置がすべてなくなりました。

さらに、日本からの観光客については、8月からビザなしでの渡航を認めていて、以前と比べて、韓国を訪れるハードルが低くなっています。

BTSのファンは「ARMY(アーミー)」と呼ばれますが、韓国メディアによると、コンサートの数日前から、国内外から多くのARMYがプサン入りしたということです。

ライトアップされるクァンアン(広安)大橋

万博誘致を目指すプサン市は街ぐるみで歓迎します。市内にあるBTSゆかりの場所などを日本語や英語で紹介した新聞の特別版を発行したり、コンサートの数日前からランドマークの「プサンタワー」や公共施設、橋などをBTSのシンボルカラーの紫色にライトアップしたりと、プサンの魅力のPRに力を入れました。

紫一色のプサン

私は、ソウルから高速鉄道KTXに乗って、コンサートが始まる4時間ほど前の15日午後、プサン入りしました。プサン駅に到着すると・・・。

プサン駅構内に設置されたパネル

コンサートのタイトルが書かれた紫色のパネルが目に飛び込んできました。皆さん、かわるがわる記念撮影しています。

プサン駅構内のベンチに座る人

駅構内には、紫色の服を着た人が大勢。

プサン駅構内にいた通訳

通訳できる案内の方も、紫色のチョッキです。この後も街の至る所で、シンボルカラーの紫色を目にしました。

スタジアムは開始前から熱気

早速、会場のスタジアムに向かいます。駅から車で30分程度。会場に近づくにつれて、道路脇には、ファンを乗せてきたツアーバスの列が延々と並んで駐車する様子が見られました。そして、会場前は・・・。

コンサート会場のプサンアシアード競技場前の人だかり

開演3時間前でしたが、すでに多くのファンで埋め尽くされていました。開場を待つ長い列は、はるか遠くまで、数百メートルに及んでいたと思います。スタジアム内からは、リハーサルとみられるメンバーの歌声が聞こえ、曲が終わるごとに歓声が上がります。

各地からのファン

世界的な人気を誇るBTS。会場には、各国から多くのファンが来ていました。
そして、日本からも多くのARMYが。何人かに話を聞いてみました。

東京から来たファンの女性

東京から来た女性
「ずっとオンラインライブしか見られず、コンサートに来るのは初めてなので、緊張とうれしさでいっぱいです」

仙台から来たファンの女性

仙台から来た女性
「しばらく韓国に来られなくて、BTSは3年ぶりです。すごくワクワクしています。おととしにも予約していたんですが、コロナですべてキャンセルになってしまって」

チケット持っていないけど来た!

コンサート会場のプサン・アシアード競技場の外から、内部が見える様子

スタジアムの外から内部が見える場所にいた、名古屋から来たという日本人女性に話を聞くと、なんとチケットを持っていないとのこと。申し込んだものの、抽せんで外れたそうです。

名古屋から来た女性
「それでも、次にいつ会えるかわからないから、メンバーと同じ空気を吸いたいし、少しでも姿を見たいと思って、ここにいることにしました!」

ARMYのBTS愛に圧倒されました。
そして、実は私もこの女性と同じです。チケットを持っていないのです・・・。
でも、そんな人でも、コンサートの雰囲気を味わえる場所があるので、そこへ移動します。

海辺でBTSに酔いしれる

やって来たのは、スタジアムからまた車で30分ほど、プサンの海辺の観光地、ヘウンデ(海雲台)。

パブリック・ビューイングが行われる、プサン市内のヘウンデ(海雲台)の海岸

砂浜が続く、韓国有数のリゾート地です。この日は、プサン港とヘウンデの2か所で、コンサートの様子を同時中継するパブリック・ビューイングが行われました。BTSの所属事務所によると、プサン港では、あらかじめ無料チケットを手に入れた約1万人が、そしてここヘウンデの特設会場には、事前申し込みなどなく2000人が入場できるということです。

パブリック・ビューイングの会場に入るための列

ヘウンデの会場では、開演1時間前の午後5時から、訪れた人が次々と入場していきます。ここでも外国人の姿が大勢みられました。

会場は、波打ち際まで数十メートルの、まさに砂浜の上。夕日が沈みつつある中で、打ちつける波の音を聞きながら開演を待ちます。そして・・・。

コンサートが始まると熱気は最高潮に

午後6時を少し過ぎて、いよいよコンサートが始まりました。スタジアムの様子が大型スクリーンに映し出されると、熱気は最高潮に達します。紫色のライトをかざす人もいて、皆さん思い思いに、BTSの歌やダンス、トークに酔いしれています。

会場外から見る人たちも

ヘウンデの会場は、入場した2000人のほかにも、柵の外の砂浜で観覧している人もたくさんいました。人は大勢いましたが、すし詰めになるような状況ではなく、子ども連れやペットと一緒にコンサートを楽しむ人の様子も見られました。中には、ジョギング途中の人が、足を止めて聞き入っている姿もありました。

そして、日もすっかり落ちた午後8時ごろ、コンサートは終了。興奮冷めやらぬ様子で、ファンたちは会場を後にします。横浜から来た日本人の方に話を聞いてみました。

横浜から来たファンの女性

横浜から来た女性
「スタジアムのチケットにいろいろ応募し、すべて惨敗したのでここに来ましたが、とても感動して泣いてしまいました。次は絶対に会場で生で見たいといっそう思いました」

大きなトラブルなく終了

今回の取材で心配していたことがありました。この1日のコンサートのために、世界中から多くの人が訪れる中で、ひどい混雑や交通渋滞が起こって、街が混乱しないだろうかというものでした。

ただ、少なくとも私が取材した中で、駅からスタジアム、そこからパブリック・ビューイングの会場、さらに終了後に街中に戻るまで、いずれの移動の際にも、渋滞はほとんどなかったように思います。運転手さんによると、ほぼふだん通りの時間で移動できたということでした。

韓国メディアによると、プサン市は街の交通対策のため、警察との間で事前に15回にわたって会議を開催。車を利用する人には、スタジアムから離れたところに駐車して、そこから公共交通機関を使うよう呼びかけ、プサン市内の地下鉄・バスは臨時で本数を増やしました。

このほか、スタジアム周辺の渋滞情報を市民に提供するため、市がドローンを飛ばしてその様子を動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信する取り組みも行われました。万博誘致を目指す市として、訪れた人にプサンにいいイメージを持ってもらおうという本気の取り組みだと感じました。

韓国メディアによると、懸念されていたトラブルなどはなく、無事にコンサートは終わったということです。

取材を終えて

写真提供:BIGHIT MUSIC

街全体がBTS一色となったプサンを取材してみて、スケールの違う人気を改めて目の当たりにしました。そうした中で、彼らの活動が今後どうなっていくのか、心配する声が多く聞かれたのも印象的でした。

兵役もあることから、しばらくは個人での活動に力を入れることになり、2025年ごろまでグループとしての活動は見られなくなりそうです。ただ、この日のコンサートでメンバーからは、10年先を見据えてコンサートでまたファンたちと再会したいというメッセージもありました。兵役を終えたら、また自分たちの音楽を世界中のARMYたちのために届けていくんだという強い決意を感じました。

国際ニュース

国際ニュースランキング

    特派員のスマホから一覧へ戻る
    トップページへ戻る