
2022年、即位70年を迎えたエリザベス女王。
イギリス国民にとってエリザベス女王とはどんな存在なのか。
イギリス全土で盛大に行われた「プラチナ・ジュビリー」を通じて見えてきたものとは。
(前ロンドン支局長 向井麻里)
集めた王室グッズは1万点以上
熱烈な王室ファンとして知られるマーガレット・タイラーさん(78)。

両親の影響で王室好きになったというタイラーさんは、40年前のチャールズ皇太子とダイアナさんの結婚をきっかけに王室グッズを集め始めたといいます。
これまで集めてきたマグカップや置物、写真などは1万点以上。
王室グッズで埋め尽くされている自宅は博物館のようです。

エリザベス女王にも4回面会し、沿道で直接、花束を渡したこともあるというタイラーさん。
ロンドン市内の自宅の外壁には、エリザベス女王をはじめとする王室メンバーのプレートがかかげられ、閑静な住宅街のなかでひときわ目立っていました。

タイラーさんはイギリスにとって女王は「大地の母」のような存在だと話します。
マーガレット・タイラーさん
「女王はいつも私たちのことを気にかけてくれます。96歳になっても私たちのために働き続ける女王がいてくれることはとても幸運なことです」
エリザベス女王が愛するあの犬も
街なかでは、今もちょっとユニークなアートイベントが開かれています。
女王のペットとしても知られる犬のコーギーのアートです。
「プラチナ・ジュビリー」の期間中から始まり、ロンドン市内には、さまざまなアーティストがデザインした色とりどりのコーギーがおよそ20体、広場や公園などに置かれています。

これまでに飼ったコーギーは少なくとも30匹にのぼるとも言われるエリザベス女王。
幼少のころからコーギーをペットとしてかわいがっている様子が写真でも残されています。

イギリスの人たちにとっても「コーギーと言えばエリザベス女王」とすぐに連想できるようで、「ジュビリーだね」などと言いながら、かわいらしいコーギーのアート作品を写真におさめていました。
記念グッズもさまざま
王立造幣局が発売した記念コインがこちら。

「プラチナ・ジュビリー」バージョンの50ペンス硬貨です。
50ペンスは日本円で約83円(9月8日のレートで計算)ですが、販売価格はなんと7ポンド(約1158円)。市場に流通するコインではありませんが、なかなか強気な値段設定です。

老舗の百貨店では「ジュビリー」を記念した紅茶が販売されていたほか、一般のスーパーでも「ジュビリー・エディション」とうたったソースやドレッシングも手ごろな値段で販売されていて、ジュビリー特需を狙ったビジネスが活況でした。
プラチナ・ジュビリー通じて見えてきたものは
即位70年を記念する「プラチナ・ジュビリー」。
イギリスで即位70年というのは前例がなく、6月2日から4日間にわたり国をあげて祝賀イベントが行われました。

エリザベス女王をなんとか一目見たいという人たちは数日前から会場周辺にテントをはって泊まり込んでいました。
イギリス国内だけでなく、アメリカやカナダ、遠くは南半球のオーストラリアから来た人たちもいて、女王の人気を物語っていました。

10年ほど前に比べると王室を支持する人の割合は減少し、特に若い世代の王室離れが指摘されています。
ただ、多くのイギリス国民にとって、エリザベス女王は生まれた時から「君主」であり、あらゆる場面に登場し、時代をともにしてきた存在です。
思いは人それぞれではあるものの、その存在は人々の心に強く刻まれていると感じました。