2022年5月31日
世界の子ども ウクライナ

大好きなおもちゃを1つ抱えて

「去年の誕生日にママが買ってくれたんだ!一番のお気に入りだよ」

笑顔で、小さな手に握りしめた人形を見せてくれた男の子。名前はディマくん。取材した日の1週間後に6歳の誕生日を迎えると話していました。

母親のカリーナさん(27)に話を聞くと、2人は、激しい戦闘が続く東部マリウポリから避難してきたといいます。急いで避難してきたため、荷物はボストンバッグ1つ。ディマくんが持ってくることができたおもちゃは、お気に入りの人形1つだけでした。

2人に出会ったのは、ウクライナ西部の主要都市リビウの中央駅。ポーランドへ避難する途中でした。

カリーナさんはシングルマザーで、地元で小さなネイルサロンを営んでいました。しかし、ロシアによる軍事侵攻で、サロンも攻撃を受け、避難せざるを得ませんでした。そして、避難は何よりもディマくんを守るためでした。

「ポーランドに頼れる人は誰もいません。でも、息子が私の“生きる希望”なんです。ロシア軍が攻めてきてからは、毎日つらいことばかりです。でも、息子の前では、涙は流せません」

そう気丈に話すカリーナさん。でも、ディマくんに取材を続けている際、私たちに背中を向けてかばんを整理している彼女を見ると、頬を伝う涙を拭っていました。

ウクライナでは、カリーナさんのように、小さな子どもを連れて避難する母親の姿を多く目にしました。紛争や経済危機などが起きたとき、まっさきに不利益をこうむるのは、弱い立場にある人たち。そのことを、改めて痛感しました。

なぜ、当たり前の日常が奪われなければならなかったのか。目の前で起きている理不尽な事態を少しでも理解するため、引き続き取材を続けていきたいと思います。

※この記事は2022年4月13日に公開したものです

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