旭川厚生病院の医師
「通常業務全くできず 医療崩壊と思う」

2020年12月8日

新型コロナウイルスのクラスター=感染者の集団が国内最大規模で発生している、旭川市の旭川厚生病院に勤務する医師が、NHKの取材に応じ、「通常業務は全くできず、医療崩壊、機能不全に陥っているのではないか」と深刻な医療体制の現状を語りました。

旭川厚生病院では、11月20日から21日にかけて患者と職員合わせて29人の感染が確認されて以降、急速に感染が拡大し、感染者は230人を超えて国内最大規模となっています。

医療体制がひっ迫する中、旭川厚生病院に勤務する医師が匿名を条件にNHKの取材に応じ、これまでの院内の様子を語りました。

この中で医師は、院内での感染が始まった当初の様子について「看護師1人が発熱して新型コロナに感染していることが確認され、接触した可能性のある入院患者や看護師などを検査したところ、感染が広まっていることが分かった」と述べました。

そのうえで「予想していた以上に感染のスピードが速かった。ある程度の人数で抑えられるとたかをくくっていたが、こんなに一気に感染が広がるとは思っていなかった」と振り返りました。

現在院内では、診療科にかかわらず新型コロナウイルスに感染した入院患者を専用の病棟に集めていて、医師は「感染をこれ以上広げないため、回診は当番の医師が行い、結果をそれぞれの主治医に報告する形をとっている」と説明しました。

そのうえで「通常業務は全くできていない。医療が崩壊し、機能不全に陥っているのではないかと思う」と述べ、新たな感染者の発生が続く中で医療体制がひっ迫して十分な診療を行えない現状を明らかにしました。

そして、医療従事者の現状について「特に看護師が疲弊していると思う。精神的に耐えられなくなって休んでいる看護師もいる。本当に使命感、自分がやらないとだめだという使命感だけでやっている。そういう状況の中で耐えられない人がいてもやむをえないと思う」と述べ、ギリギリの状態で治療を続けている厳しい実情を訴えています。

院長 症状ある人への対応だけで防ぎきれない実態

旭川厚生病院の森達也院長は12月7日、NHKの取材に応じ、最初に感染者が確認された当時の様子やその後の対応を語りました。

この中で森院長は「無症状の人が非常に多く、そうした人から次々と感染が広まったとみられる。無症状でもこれだけの感染力があり、ここまで拡大したことに驚きと怖さを感じる」と述べ、症状がある人への対応だけでは防ぎきれない実態を証言しました。

病院ではその後、新型コロナの感染者を2つの専用の病棟に移したうえで、感染した人と感染していない人の行動範囲を切り離すなどの感染拡大の防止策をとっていて、森院長は現状について「累計では増えているものの、陽性の患者は少しずつ減ってきている」と説明しました。

さらに森院長は、医療体制のひっ迫に拍車をかける一因として、看護師などが子どもを保育所に預けようとして拒否され、働けなくなってしまうケースが起きているとしたうえで「そうしたことがなくなれば、もう少し働ける人が増えると思う」と述べ、医療現場への理解と支援を訴えています。