都内 新規陽性者「下げ止まり」
第3波超の感染拡大可能性を指摘

2021年6月17日

東京都のモニタリング会議で、専門家は、都内の新規陽性者数は下げ止まっていると評価したうえで、第3波を超える急激な感染拡大の可能性があると指摘しました。そのうえで、これまで以上に人の流れを抑え、感染防止対策を徹底しなければならないと強く呼びかけました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は6月16日時点でおよそ376人となり、およそ389人だった1週間前の6月9日時点の97%で、専門家は「下げ止まっている」と評価しました。

そして今後、増加比が100%を超える、つまり増加に転じることが強く懸念されると分析しています。

さらに、年末から年明けにかけての「第3波」では、新規陽性者が今回とほぼ同じ400人前後でおよそ3週間推移したあと、爆発的に感染が再拡大したとして、変異ウイルスの影響を踏まえると、第3波を超える急激な感染拡大の可能性があると危機感を示しました。

そのうえで、これまで以上に人の流れを抑え、感染防止対策を徹底し、再拡大を防がなければならないと強く呼びかけました。

一方、6月16日の時点で入院患者は1346人、重症の患者は45人と、いずれも減少しましたが、依然として高い値で、多くの人材をワクチン接種に充てている医療機関にとっては負担が増していると説明しました。

そして、インドで見つかった「L452R」の変異があるウイルスによる感染拡大が懸念され、新規陽性者の急激な増加で医療提供体制のひっ迫が危惧されると指摘しました。

専門家「決して気を抜けない数字 リバウンドに警戒」

東京都内の新規陽性者数の7日間平均は、2回目の緊急事態宣言が解除された2021年3月はおよそ300人だったのに対し、6月16日時点では380人余りとなっています。

こうした中、今回の緊急事態宣言が解除されることについて、都の「専門家ボード」の座長で、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「これ以上、宣言の効果を長く保つことができるのか、人々の意識も含めて政府が判断したと思います。数だけでいうと、やはり非常に厳しい状態だというのは考えておかなければならない。決して気を抜いてはいけない数字だと思いますので、緊急事態宣言が解除になって、まん延防止等重点措置にいくにしても、リバウンドは本当に警戒しなければいけない」と述べました。

モニタリング会議 分析結果

6月17日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、6月16日時点の7日間平均が376.3人となり、1週間前の6月9日時点の389.4人より、およそ13人減少しました。

しかし、前の週のおよそ97%で、減少の幅が前回から17ポイント縮まっています。

専門家は「増加比は今後、100%を超えることが強く懸念される」と指摘しました。

6月14日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、
▽20代が最も多く33.4%で、前の週から5.5ポイント増えました。
次いで、
▽30代が19.5%、
▽40代が15.8%、
▽50代が11.2%、
▽10代が6.8%、
▽60代が5.1%、
▽10歳未満が3.1%、
▽70代が2.9%、
▽80代が1.7%、
▽90代以上が0.5%でした。

20代から40代を合わせると、全体のおよそ69%を占めています。

一方、65歳以上の高齢者は、今週は181人で、前の週より70人減り、割合も7.0%で減少しました。

感染経路がわかっている人では、
▽同居する人からの感染が52.2%と最も多く、
次いで、
▽職場が19.1%、
▽会食が8.3%、
▽高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が5.6%でした。

今週は施設での感染が減った一方、会食での感染が、先週から1.4ポイント増えています。

専門家は「野外であっても、公園や路上などでの飲み会、バーベキューではマスクを外す機会が多くなる。自宅や友人の家で会食をして感染するケースもあり、会食は感染するリスクが高いことを繰り返し啓発する必要がある」と指摘しています。

また、職場での感染では、先週から横ばいのおよそ19%でした。

1人から2人以上の感染が確認された事例が、6月9日までの1週間で13件報告されているということです。

6月14日までの1週間の新規陽性者2595人のうち、13.9%にあたる360人は無症状でした。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は、16日時点で238.6人で、前の週から0.5人増え、横ばいでした。

増加比は、6月16日時点で100.2%となり、前回の83.1%から上昇しています。

専門家は「第2波、第3波でも、増加比は80%前後から上昇に転じていて、第3波では100%を超えて緩やかな上昇傾向のあと、急激に感染が再拡大した」と述べ、警戒が必要だと指摘しました。

そのうえで「再拡大を回避するためには、さらに増加比を低下させる必要がある。これまで以上に人の流れの増加を抑制するとともに、感染防止対策を徹底することが必要だ」と呼びかけました。

感染経路がわからない人の割合は、およそ64%と、前の週と比べて4ポイント増え、専門家は「やや上昇傾向にある」と指摘しています。

年代別では、10代以下を除く、すべての年代で感染経路のわからない人が50%を超え、特に20代から40代で、70%に近い割合となっています。

専門家は「保健所の積極的疫学調査による接触歴の把握が困難な状況が続いている。その結果、感染経路がわからない人と、その割合も高い値で推移している可能性がある。学校や高齢者施設などで新規の陽性者が発生すると、同じ地域内に感染者が集積し、さらに周辺にも拡大するおそれがある」と指摘しています。

医療提供体制など

検査の陽性率の7日間平均は6月16日時点で4.1%となり、前の週の6月9日時点と比べて0.2ポイント低下しました。

入院患者は、6月16日時点で1346人と、6月9日時点と比べて280人減少しましたが、専門家は「依然として高い値で推移している」と指摘しています。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ69%を占めています。

最も多いのは50代と40代で、およそ17%でした。

専門家は「60代以下の入院患者数の割合は緩やかな上昇傾向にある。あらゆる世代が感染によるリスクを持っているという意識を強く持ち、人と人との接触の機会を減らし、基本的な感染防止対策を徹底するよう啓発する必要がある」と呼びかけています。

都の基準で集計した6月16日時点の重症患者は、6月9日時点より12人減って45人でした。

男女別では、
▽男性36人、
▽女性9人です。

また、年代別では、
▽70代が最も多く22人、
次いで、
▽60代が14人、
▽50代が3人、
▽40代が3人、
▽80代が2人、
▽90代が1人でした。

60代以下の割合はおよそ44%で、専門家は「依然として高い」と指摘しています。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は、6月16日時点で215人で、6月9日時点と比べて44人減りました。

専門家は「重症患者の数は減少しているが、新たな発生も続いていて、いまだ警戒すべき水準にある。増加の予兆を見逃さないよう、厳重に警戒する必要がある」と指摘しています。

また、6月16日時点で陽性となった人の療養状況を6月9日時点と比べると、
▽自宅で療養している人は154人減って681人、
▽都が確保したホテルなどで療養している人は11人増えて778人、
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は86人増えて597人でした。

「療養が必要な人」全体の数は6月16日時点で3402人と、337人減りましたが、専門家は「依然として高い水準で推移している」と指摘しています。

そのうえで「今後の大幅な感染拡大に備え、入院医療、宿泊療養および自宅療養の体制維持と、充実・強化を図る必要がある」としています。

また、6月14日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した48人が亡くなりました。

前の週より8人増えました。

死亡した人のうち、34人が70代以上でした。