「急速な感染拡大の始まり 厳重警戒を」
東京都 モニタリング会議

2020年11月12日

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、専門家は「急速な感染拡大の始まりと捉え、今後の深刻な状況を厳重に警戒する必要がある」と指摘し、感染防止対策の徹底を呼びかけました。

会議で専門家は都内の感染状況について、11月11日までの7日間平均で、新たな感染の確認がおよそ244人となり、前回、1週間前の時点のおよそ165人から大幅に増加したと報告しました。

そして、増加の割合が今のまま4週間続くと、新たな感染の確認は1日当たり1160人程度となり、極めて深刻な状況になると指摘しました。

さらに、65歳以上の高齢者の患者も増えているとして、若い世代だけでなく、幅広い世代に感染が広がっているという認識を示しました。

そのうえで「急速な感染拡大の始まりと捉え、今後の深刻な状況を厳重に警戒する必要がある」と指摘しました。

また、警戒のレベルは上から2番目を維持したものの「感染の再拡大に警戒が必要であると思われる」としていた、先週までの評価のコメントを、今回は「感染が拡大しつつあると思われる」に変更しました。

そして、改めて3密を避けることや、こまめな換気を行うことなど、感染防止対策の徹底を呼びかけました。

一方、医療提供体制については、入院が必要な患者の急増にも対応できる病床の確保が必要だなどとして「体制強化が必要であると思われる」と評価し、上から2番目の警戒のレベルを維持しました。

警戒レベル 前回より悪化もレベル維持

都内の感染の確認は7日間平均でみると、11月11日時点でおよそ244人で、前回、警戒レベルをいちばん上に引き上げた、2020年7月15日より、およそ76人多くなっています。

この7日間平均を含めて、都が感染状況についてモニタリングしている4つの数値のうち2つが、前回の引き上げ時より悪化していますが、今回の会議では警戒レベルは引き上げず、上から2番目を維持しました。

モニタリング会議に出席した、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「検査能力も変わってきたし、治療も柱がたってきた。現場のドクターからすれば、前よりは患者さんを早く、よくして帰すことができるようになったという環境の差がある。今の数字と、そうでなかった時の数字は比べられないと正直に思う」と述べました。

また、専門家の中でも意見が割れたことを明らかにしたうえで「総合的な判断ということになった」と述べました。

一方で「都内での感染が明確に増え始めたのは間違いない。対策をもっと引き締めなければならない」と述べました。

そのうえで「ほとんど、最も高い警戒レベルの赤に近いと思っている。赤の状況は絶対に迎えたくないので、本当に大変なのは、よく分かっているが、皆さんにご協力をお願いしたい」と述べました。

小池知事「正念場 感染対策の再徹底を」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は記者団に対し「感染状況も医療提供体制も警戒レベルは上から2番目のオレンジでとどまっているが、これを1番上の赤に変えないんだという意識を皆さんと共有したい。ここは正念場として、感染対策の再徹底をお願いしたい」と述べました。

そのうえで「今後の急速な感染拡大への厳重な警戒が必要ということなので、何度も申し上げている、手洗いとマスクの着用、3密を避けることに加えて、暖房を利用していても、こまめな換気を心がけていただきたい。また、ドアノブやテーブルの消毒も忘れないよう、お願いしたい」と呼びかけました。

新たな感染確認は7日間平均で244.3人

11月12日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

新たな感染の確認は11月11日までの7日間の平均が244.3人で、「増加比」は前の週から40ポイント増加し、147.7%でした。

専門家はこの増加比が今後、4週間続くと、新たな感染の確認はおよそ4.8倍に拡大して、1日当たり1160人程度となり、極めて深刻な状況になると指摘しました。

そのうえで、「この試算は多すぎるのではないかと言われるかもしれないが、ことしの夏に同じように、週単位で患者が急速に増えていった経験があることは申し上げておきたい」と述べ、今回の試算が決して過大なものではないという認識を示しました。

11月9日までの1週間で確認された1459人の新規陽性者の年代別の割合をみると、
▽20代が25.6%、
▽30代が19.1%、
▽40代が17.1%、
▽50代が12.4%、
▽70代が6.7%、
▽60代が6.5%、
▽10代が6.4%、
▽80代が3.6%、
▽10歳未満が1.8%、
▽90代以上が0.8%でした。

65歳以上の高齢者の割合は13.5%で、前の週と比べてほぼ変わりませんでしたが、患者数でみると165人から197人に増加しています。

このほか、この1週間で確認された新規陽性者のうち18%が無症状でした。

専門家は「経済活動の活発化に伴って、無症状や症状の乏しい感染者の行動範囲が広がる可能性があり、感染者と接触する機会があった無症状者を含めて、集中的な検査ができる体制の強化が必要である」と指摘しました。

一方、感染経路が分かっている人のうち、家庭内での感染は前の週とほぼ同じ40.7%でした。

感染経路別では15週連続で最も多くなっています。

また、年代別にみても、80代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多くなり、10代以下と70代では50%を超えています。

専門家は「職場や施設、飲食店で感染し、家庭内にウイルスが持ち込まれていることが実際に起きている」と説明しています。

このほか、職場内は15.2%、施設内は14.6%で、いずれも前の週から減った一方、これまで減少傾向だった会食が前の週からおよそ3ポイント上昇して10.1%、夜間営業する接待を伴う飲食店はおよそ2ポイント上昇して4.0%となりました。

専門家は年末年始に向けて忘年会や新年会、イベントなどが増えているとしたうえで、「このまま何も対策をしなければ感染のリスクが高まり、新規の陽性者がさらに増えることが懸念される。今後の深刻な状況を厳重に警戒する必要があるため、基本的な感染予防策を徹底することが重要だ」と呼びかけました。

一方、都は、都外に住む人が、だ液によるPCR検査で検体を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けを出したケースを除いた数値で分析・評価していて、今週はこうしたケースが23人いました。

重症患者は1週間前より3人増え38人

検査の「陽性率」は前回の3.9%から上昇し、5.0%となりました。

専門家は「検査数は増えているが、それ以上に新規陽性者が増えているため、陽性率が上がっている。やはり、検査が足りていないため、クラスターが起きている周辺で戦略的な検査をしたほうがいいのではないか」と指摘しました。

また、入院患者は11月11日時点で1076人で、1週間前・11月4日の時点より36人増えています。

専門家は「医療現場には第1波と第2波の時に感じたベッドの確保を拡張していかなければいけないという圧迫感がある。非常に注意しなくてはいけない状況だ」と説明しました。

また、都の基準で集計した重症患者は11月11日時点で38人で、前回・1週間前より3人増えました。

38人を年代別にみると
▽40代が2人、
▽50代が5人、
▽60代が10人、
▽70代が11人、
▽80代が10人です。

性別では男性が31人で、女性は7人でした。

専門家は「重症患者のための病床を今より確保しておくためには、通常の手術や救急の受け入れを大幅に制限せざるをえないなど、一般の医療が必ず圧迫されるので、陽性患者が増えていることは本当に心配な状況だ」と述べ、懸念を示しました。

また、11月9日までの1週間で都に報告された亡くなった人は3人でした。

3人のうち2人が70代以上でした。