新型コロナウイルスに感染した当事者だからこそ感じたことを伝え、正しい理解を広めたい。埼玉県川越市の小島大補さん(37)は、その思いから実名で証言してくれました。語られたのは病気の怖さや家庭内感染の不安、そして感染者に対する偏見への懸念でした。

備えていたのに…

人と接する飲食店経営。できる対策はやっていたという

新型コロナウイルスにかかるかもなというのは思っていました。人と接する機会も多いですし、すぐには終息しないだろうなというのも思っていて、これからもどんどん増えるなとは思っていました。

こんなに早くかかるとは思っていなかったんですけど、なるべく注意するようにするとか健康にいるようにはしたんですけど、それでもかかってしまうというか難しい病気というか、大変ですよね。なので、ふだんからできることは全部していて、手洗い、うがいもそうですし、マスクも着用したりですとか、あと特に遊びに行くということは控えていました。仕事の用事以外では動かないようにしていたので。仕事場の換気はもちろんですし。

感染の経路ははっきりしていないんですけど、仕事がですね、飲食店と小売りを一緒にやっているようなお店で、カウンターにお客さんが座るというようなこともあったので、どう考えても、つばが飛ぶような距離ではあったので、やっぱりずっと怖かったなというのもありますし、それをやらないと仕事にならないし、難しいところですよね。

店ではコーヒーとか、お酒とかも提供しているんですけど、みんなが集まれる場所がなくなったら精神的につらいんじゃないかなと思って、新型コロナウイルスにかかることよりも、自分が普通にしているということが大事なんではないかなと思った部分もあります。お客さんのために。怖いけど仕事しないといけない。

経験したことがない病気

最初は普通のかぜかなと思っていたんですね。初診の4月1日は、のどが痛くて、かぜかなと思っていまして、かかりつけの耳鼻科に行ったんですけど、その時はへんとう炎ということで、その次の2日に、ごはんを食べていたら急に熱がどーんとあがって異常だなという感じがありました。

1日に病院に行って、2日の日にばーんと上がってしまって。一応その県の発熱外来みたいな所に電話をして確認をとって、近所の医者に行っていいのかというのを確認して行きました。そうしないと行っちゃいけないというお話を聞いたので、変に動けないじゃないですか、やっぱり。

最初から疑っていたんで、仕事も仕事だし、いつかは来るんだろうなと思って、そしたら本当にこうなってしまって。2日の夜に熱が上がって、その時に、これは本当におかしいぞと思って、そこから本格的に別のお医者さんに連絡したりとか、県もそうですし、保健所にもかけたりして。とにかく僕としては異常な感じがしていたので、いろいろな人の意見を聞いてみようと思いました。

ぼく、インフルエンザとか子どもの手足口病とか最近うつったことがあるんですけど、どーんてきますね。じわじわくるのではなくて。本当にウイルスが入った感じが分かりますね。体が一気に重くなるというか、漫画でいうと顔が紫色になるというか、ありますね。精神的にいちばんしんどいですね。

怖いというのか。やっぱり有名な方も亡くなっていたりしますし、テレビでも「死者が何名」とか、とにかく怖いですね。食事もふだんの半分くらいかな。必要最小限くらいは食べられていたので、本当は熱が出て食べたくなかったですけど、食べなきゃいけないなと思って食べていましたね。

発熱の感じがずっと同じ体温で、解熱剤が切れたら、また戻る。解熱剤が効いたら、また下がるみたいな、太刀打ちできていない感じがありましたね。でも普通のへんとう炎と言われているから、そういう気持ちもまだ残りつつ微妙な感じでした。

よく、けん怠感があるとか話があるんですけど、僕の場合は発熱に際して関節が痛かったりとか、寒気がするとかいうのがあったですね。普通は3、4日したら症状が改善されたりとか復活の兆しが見えるんですが、全く見えなかったので、ずっと毎日同じというか。

何か分からないですし、めちゃくちゃ不安ですよね。やっぱりニュースとかインターネットとか、悪いほうが目に付きますよね。死者が何人出ましたとか、そういう怖い話ばかり頭に入るようになってきて、冷静じゃないといけないんだけどなかなか冷静じゃいられないような気持ちにはなりました。

9日間続いた自宅待機

埼玉県の相談窓口に電話したが、PCR検査を受けられたのは発症から6日後だった。入院できるまで9日間、自宅待機を余儀なくされた

結構何回も電話していますね。子どものこともあったので。まず「4日間自宅にいてください」というのと、発熱からとりあえずは4日間というのがあるみたいで。とにかくいろいろな所に連絡をしたりとか、かかりつけの先生に相談したりとかいろいろなことをして、それでやっと保健所から「近所の病院に行ってください」ということです。

でも相談できる先生がいてよかったなとは思いますね。「新型コロナウイルスを疑ったほうがよいんじゃないかな」って。その先生は決め手でしたね。それで「うちの病院には来ないでくれ」と。「小さいクリニックだし、そういうレベルじゃないから」という話をして、それで保健所に改めて相談をして大きい病院に行きました。

僕の時は症状があからさまだったと思うんですけど、入り口も別の入り口を用意してもらったりとか看護師さんもそれなりの防備をした格好で、きちんとした状態でPCR検査をしてもらいました。陽性は電話で聞きました。直接、保健所の方から電話をもらって、PCR検査を受けた段階から毎日電話を頂けるようになって経過観察みたいなことをしてくれて。

恐れたのは家庭内感染

症状が出てから入院までの9日間。2LDKのマンションで妻と幼い子どもたちと、家庭内感染の不安を抱えながらの生活だった

大きい一軒家とかでもないですし、自分の仕事のものが置いてあったり趣味のものが置いてある部屋で過ごしていました。1個だけ布団が敷けるのでそこに逃げていました。6畳くらいあるんですかね。

2歳の子どもと1歳の子どもがいるんですけど、引き戸で子どもが開けちゃうんですけど、でも同じ所にいるよりは、ましなのかなっていう感じですね。やっぱり子どもは分からないから、こっちが避けてても向こうが寄ってきちゃうので。

具合が悪いのは何となく分かるみたいで「大丈夫?」とか聞いてきたりはあったんですけど。よくない状態というのは何となく分かっていて、子どもたちにもストレスはかかってくると思いますね。トイレとかお風呂とかは、どうしても一緒のものを使わないといけないのでちょっと怖いなとは思っていたんですけど。

なるべく隔離というか、近寄らないようにはしていました。やっぱり怖いです。トイレを使ったあとには掃除をしていましたけど、コロナウイルスかもしれないというのもあって具合が悪い時点ですごい怖かったので。自分が感染源になっていないかというのももちろん不安ですし、とにかく自分が感染しているということより、それを広げていないかというのがすごい心配で。

保育園ってみんな1年中かぜをひいているようなところがあって、みんな鼻をたらしているようなところがあって、だからそれが本当にかぜなのかコロナウイルスなのか、判断がつきづらいと思ったので、それもだいぶ怖かったですね。小さい体で感染した時に本当に生きていけるのかって気持ちでいっぱいでした。

妻は冷静に受け止めてくれて。自分はかかっているだろうと妻は不安に思っていたと思うんですけど普通に接してくれました。ぼくが陽性なので家を空けなきゃいけないのは確実だったので、子どものこととかは話しましたけど。

結構早めに保健所の方に相談をして、両方がなったらどうするのかと。「なった時にならないと分かりません。その時に考えましょう」という答えをもらって、保健所の担当の人も妻も冷静にいてくれたことは、ぼくは心強かったのかなと思います。

どっちにしろ両親のところには行きづらいなって。うつすということを念頭に置いたら(子どもを)預けられないなと思って。やはり母も具合が悪いというのもあったし、妻の両親も70代半ばの高齢なところもあるので預けられないなというのもありまして。

妻の陰性は本当かなと思いましたよ。でもまあよかったなとも思いました。こんなにつらい思いをするのは最小限でいいなと思ったので。ぼくはかかってしまいましたけど本当、1人でよかったです。

頭に浮かんだのは店のスタッフや常連客のことだった

一緒に働いているアルバイトのスタッフとかお客さんのことを考えましたね。そこまで責任がとれない関係だし。家族は「ごめんね」で済むかもしれないけど、アルバイトのスタッフやお客さんには「ごめんね」ではすまないし、何か賠償することもできないし、家族よりそっちのほうが心配でした。

もしかしたら自分のせいで死んでしまうかもしれないということを考えました。

注意していたのに感染 動かないで我慢を

テレビに出ている有名な人も言ってたけど「すごく注意していたけどかかりました」って。本当にそうなんですよね。無理もしていないし、むしろ毎日電車で通勤されている方よりは穏やかな生活をしていたと思うんですよ。行動範囲だってすごく狭いですし。それでもかかってしまうというのは、しかも感染経路は分からないですし、心当たりも全くないので、すごく怖いものだと思います。

緊急事態宣言とかが出ましたけど、これからもどんどん増えていくんじゃないかなとは思うので、かからない方が少数派になってくると思うので。

正直ですね、取材を受けさせていただいたのも、みんなにわかっていただけたらなと思って受けさせてもらいまして。やっぱり、この事態はすぐに収まるものではないでしょうし、終息してからも社会が大きく変わると思うんですね。

だからやっぱり今できることを最優先に考えて、なるべく動かないという方法をとってほしいですね。会社を経営されている方ですと金銭面ですとかあると思うんですけど、思い切ってですね、自分のところの従業員の人達を動かさないようにするというのも判断の1つかと思います。

本当にこれは大変な病気ですし、1人でも多くの方が感染しないほうがいいには決まっているので、やっぱりみんなが少しずつ我慢をしてほしいなと思います。

これは絶対にかかってはいけないやつです。僕はそんなに重症ではなかったんですけど、人によってかかり方も違いますし、すぐに簡単に治るものではないので本当に自分が死んでしまうかもしれないというのを考えてほしいなと思います。

実名証言 もう1つの理由

僕はお店を経営しているんですけども、そこのSNSに実名と感染の事実を書いているので。あと、保育園の関係で、感染しましたというのを先生からプリントで公表してもらって、それに対して親御さんたちからうわさみたいなのが出ているというのは聞いています。

なんか僕の感覚では、ひぼう中傷したりとかは感じられなくて、やっぱりみんな保身なんじゃないかなと思っていて、友達とか連絡もらうときも「感染経路わかったの?」とか「濃厚接触者いるの?」とか早々に聞いてくる人が結構な人数いて、やっぱり自分はかかりたくないというのがいちばんに来ているのかなとは思います。本当に優しい励ましをくれる人とかもいるから、みんながみんな嫌がっているわけではないんですけど。やっぱり自分の保身なのかなというところはあります。

僕がいちばん危惧していたのは、うわさとか作られた事実じゃない話が拡散してしまうというのがいちばん怖かったので、これ以上広げないために何かできないかなと思って公表した部分もあります。

かかっていても言い出せない人がいっぱいいるんじゃないかなと思います。でも誰もが悪い人じゃないですし、かかったらみんな治していくほうに変えられないかなとは思います。

有名な方というのは、仕事を飛ばしてしまったこととか、心配をかけたことに対して謝罪することはいいと思うんですね。立場とかもあるし。でもあんまりむやみに謝るのは、みんなにごめんなさいというのは、違うのかなと思っていて。遊んでいたからかかるわけではないですしね。真面目に仕事をしていてもかかるし、ちゃんと感染予防したってかかると思うので、本当に誰がかかるか分からないですよね。かかっている人に罪はないと思います。

今後、新型コロナウイルスに感染した人に対して、差別とか悪い発言とか、SNSとかありますし、そういうのが増えると思うんですね。それ、理由としては自分の身近な人がかかっていないというのもあるだろうし、リアリティーが持てていないんじゃないかなとも思います。自分だけよければいいという気持ちではなくて、もうちょっとこう、社会全体とか世界で新型コロナウイルスがなくなるように考えてもらえないかなと、僕はちょっと思います。

だから、みんなでちょっとずつ我慢して、ちょっとずつ感染を減らしていくのを考えたほうがいいんじゃないかなと思っています。

(2020年4月21日取材 さいたま放送局 古市駿)