新型コロナ新規感染者
全国では前週比2.14倍 全都道府県で増加

2022年7月13日

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、7月12日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて2.14倍と、すべての都道府県で増加し、3倍を超える地域も出てきています。

首都圏の1都3県では、東京都が2.37倍、神奈川県が2.41倍、千葉県が2.33倍、埼玉県が2.19倍と2倍を超えています。

また関西では、大阪府が2.22倍、兵庫県が2.13倍、京都府が2.27倍、東海でも愛知県が2.26倍、岐阜県が2.18倍、三重県が2.07倍と、いずれも2倍を超えています。

今週に入って、一日当たりで過去最多の感染者が確認された地域でも、島根県は1.80倍、鳥取県は2.18倍などと増加が続いています。

このほかにも、秋田県が3.57倍、奈良県が3.01倍、岩手県が2.77倍、群馬県が2.70倍、静岡県が2.65倍、また、人口当たりの感染者数が最も多い沖縄県も1.52倍など、すべての都道府県で増加しています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、沖縄県が1117.70人と1000人を大きく超えて全国で最も多く、次いで島根県が776.46人、熊本県が639.99人、佐賀県が626.42人、東京都が445.54人、大阪府が420.52人などとなっていて、全国では290.14人となっています。

8月第1週には ほぼ全体が「BA.5」に置き換わると推定

7月13日に開かれた厚生労働省の専門家会合では、国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長がオミクロン株の1つで、より感染力が強いとされる「BA.5」について、今後の国内での広がりを推定したデータを示しました。

それによりますと民間の検査会社で検出された「BA.5」の割合をもとに推定すると全国の「BA.5」による感染の割合は、7月第1週の時点で全体のおよそ36%とみられるということです。地域的には同じ7月第1週時点で、首都圏の1都3県ではおよそ57%、関西の2府1県でおよそ29%と推定されています。

国内の「BA.5」は、今後も増加を続けるとみられ、8月第1週には、全国的にほぼ全体が「BA.5」に置き換わると推定されるということです。

専門家「原因は感染力強い『BA.5』の拡大が大きい」

新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大していることについて、海外の感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、「原因としては、オミクロン株の1つで、感染力が強いとされる『BA.5』の拡大が大きいのではないかと考えている」と述べました。

「BA.5」の感染力について濱田特任教授は「これまでのオミクロン株に比べて感染が広がるスピードがかなり速いほか、ワクチンを接種したり感染を経験したりした人の場合でも『BA.5』は免疫から逃げてしまうことが見られる。こうしたことが総合的に感染力が強いということにつながっている」と述べました。

一方、感染した場合の重症度については、「重症化を引き起こす割合はこれまでの『BA.1』や『BA.2』とあまり変化がないとされているが、もう少し様子を見ていかなければいけないと思う。今の段階で、重症者や死亡者が増えている国はあまり多くないが、今後の変化を見極める必要がある」と述べました。

今後の感染状況の見通しについて濱田特任教授は、「『BA.5』はワクチンが効きにくいと言われているが、それでも日本国内では多くの方がワクチンの3回目の接種を受けていることや、寒い時期ではないことなどを踏まえると、2022年1月にオミクロン株が流行し始めたころほどには感染者数は増えないのではないかと考えられる。ただ、フランスやイタリア、ドイツなど西ヨーロッパで、ここ1、2週間の間に感染者数がかなり増えている。こうした国々で感染者数や重症者数がどのように増えるか、今後の日本の状況を予測するうえで非常に重要だ」と指摘しました。

また、今後求められる対策について濱田特任教授は、「ただ、感染が以前経験したより拡大することも想定して準備するべきだ。3回目のワクチン接種をまだ受けていない方は、早めに受けていただきたいし、高齢者の方は4回目の接種を受けることがいちばん大事だ。感染者数が特に増えているときは、一人ひとりの予防対策をある程度強めに行うことが大切で、感染を疑う症状があれば、早めに検査したり医療機関を受診したりしてほしい。多くの地域では病床はまだひっ迫していないが行政機関は前もって準備し、医療従事者や介護施設の職員などへの4回目の接種も検討してもらいたい」と指摘しました。

官房長官「感染拡大防止と経済社会活動の両立図る」

松野官房長官は午後の記者会見で、「感染拡大の防止と経済社会活動の両立を図りつつ重症化防止を念頭に保健医療体制の維持・強化、ワクチン接種などの取り組みを着実に進める考えだ」と述べました。

また、新型コロナの感染症法上の扱いを季節性のインフルエンザと同程度に見直すかどうかについて、「オミクロン株であっても致死率や重症化率がインフルエンザよりも高く、さらなる変異の可能性もあると専門家から指摘されており、最大限の警戒局面の現時点で『五類』に変更することは現実的ではない」と述べました。

さらにオミクロン株のうち、感染力がより高いとされる「BA.5」について、「現時点では国内における感染の主流ではないが、今後既存のオミクロン株からの置き換わりが進み、感染者数の増加要因となる可能性が指摘されている」と述べました。

そのうえで、「『BA.2』系統と比較して、感染者数の増加スピードが速い可能性が示唆されているが、現時点では重症度や症状の違いについて科学的知見は得られていない。引き続き専門家の意見も聞きながら、知見などの収集、監視を続けていく」と述べました。

日本医師会常任理事「4回目接種対象拡大来週早々くらいに検討」

日本医師会の釜萢常任理事は記者会見で、感染の再拡大について「『BA.5』への置き換わりや接触機会の拡大もあるが、基本的にはこれまで獲得できていた免疫の減衰による感染拡大が大きいと思う」と述べました。

また、4回目のワクチン接種の対象範囲の拡大については、「今後なるべく早い時期に合意形成し適切に対応したい。得られたエビデンスも厚生労働省が提示してくれるだろう。来週早々くらいに検討されると思う」と述べました。

一方で、釜萢氏は現時点では行動制限は必要ないとしながらも、「今後は自宅療養の選択が必要な感染者の増加が見込まれるので、自宅療養へのフォローができるように地域で確認が必要だ。フォローアップの体制が不十分な自治体は拡充の必要がある」と述べました。