新型コロナの水際対策
大幅緩和で外国人観光客に歓迎の声

2022年10月11日

新型コロナウイルスの水際対策が10月11日から大幅に緩和されました。

入国者数の上限が撤廃され、個人の外国人旅行客の入国も解禁されるなど、制限はほぼコロナ禍前の状態に戻ることになりました。

国内の空港や観光地などで歓迎の声があがる一方、マスクの着用をめぐっては議論が続いています。

成田空港 海外の観光客から歓迎の声

成田空港では10月11日、海外から到着した人たちがワクチン接種の証明書や陰性証明書を提示し、入国審査に向かっていました。

マレーシアから家族で観光に訪れた男性は「ビザを取ろうと思っても2か月はかかるので、個人の外国人旅行客の入国が解禁されたのはすばらしいことだ。都内を回ったり東京ディズニーランドに行ったりするのが楽しみだ」と話していました。

ベトナムからアメリカに帰国する途中、日本に立ち寄って観光するという女性は「個人で観光で入国できなかった期間はとても長く感じる。渋谷のスクランブル交差点に行って寿司やラーメンを食べたい」と話していました。

個人の外国人旅行客の入国が解禁に

具体的には一日あたり5万人としていた入国者数の上限が撤廃されるとともに、ツアー以外の個人の外国人旅行客もおよそ2年半ぶりに入国が解禁されました。

アメリカ、韓国、イギリスなど68の国や地域から観光などで訪れる短期滞在者のビザを免除する措置が再開されるほか、地方の空港や港でも順次、国際線の受け入れが再開される見通しです。

またすべての入国者に対し、発熱など感染が疑われる症状がなければ入国時の検査は行わず、入国後の自宅などでの待機も求めないことになります。

ただ、3回のワクチン接種を済ませたことの証明書か滞在先の出発前72時間以内に受けた検査の陰性証明の提示を求める措置は今後も継続されます。

政府は感染拡大が世界で最初に確認された中国・湖北省に滞在歴のある外国人などの入国を2020年2月に拒否して以降、さまざまな入国制限を行ってきましたが、ほぼコロナ禍前の状態に戻ることになります。

一方、国内の観光需要の喚起策として、政府が新たに全国を対象に導入する「全国旅行支援」やスポーツ観戦や映画などのチケット価格を割り引く「イベント割」も始まりました。

このうち「全国旅行支援」は東京都では準備などで9日遅れて10月20日からの開始となります。

岸田総理大臣は先週の所信表明演説で、円安なども背景にコロナ禍前を上回る額の年間5兆円を超えるインバウンドの消費額達成を目指す考えを示していて、今後はそれに向けた取り組みも課題となります。

関西空港 横断幕や記念品で歓迎

関西空港では関西の自治体や経済団体などが横断幕を掲げたり、記念品を配ったりして海外から到着した人たちを歓迎しました。

アメリカから来た44歳の男性は「韓国に行く予定だったが、きょうが日本が開かれた最初の日ということで予定を変更して日本に来ました。初めての来日で大阪や京都、東京を訪れて日本の文化や暮らしを知りたい」と話していました。

ベトナムから来た35歳のイギリス人の男性は「ずっと日本に来たいと思っていて、この2年間で願いがかなうのが遅くなったが、ようやく来ることができました。大阪と京都に1週間滞在し、ラーメンや刺身など本当の日本食を食べるのが楽しみです」と話していました。

韓国から来た24歳の女性は「ビザがいらなくなったのできょう来ました。5日間滞在し、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行ったり、すしやすき焼きを食べるのが楽しみです」と話していました。

関西の自治体や経済団体などでつくる関西観光本部の東野祥策総合企画室長は「きょうは待ちに待った記念すべき日です。インバウンドは関西経済の屋台骨で今後、ますますの関西の経済を支えるお客さんの来日を期待している」と話していました。

台湾の空港には日本への旅行客が

また台湾の空港では早くも日本へ向かう多くの旅行客の姿が見られました。

台湾の桃園国際空港では10月11日の早朝から早くも日本に行こうという多くの旅行客がチェックインカウンターに長い列を作っていました。

台湾の大手旅行会社によりますと円安も背景に日本への旅行の人気が高まっていて、海外への航空券の予約数は大阪が最も多く、次いで東京が多くなっているということです。

母親や女性の友人とともに大阪へ向かう30代の男性は「とてもうれしいです。水際対策緩和が発表され、すぐに航空券を買いました。何年も台湾から出ることができなかったので、母親と一緒に楽しみたいです」と話していました。

また、家族とともに九州を旅行するという20代の女性は、早朝の便に乗るため昨夜、空港に着いて一晩を過ごしたということで「日本に着いたらすぐにきょう1日の旅行のスケジュールが始まります。大変ですが苦労した分の値打ちはあります」と話していました。

一方、10月13日からは台湾でも水際対策が緩和されることから、旅行業界では日本から台湾を訪れる旅行客の増加についても期待が高まっています。

日光のホテルでは外国人観光客の予約増

国内有数の観光地がある栃木県日光市のホテルでは外国人観光客からの予約が増え、歓迎の声が上がっています。

世界遺産の日光東照宮のすぐ近くにある「タートル・イン・日光」は外国人観光客に人気があるホテルで、利用客のおよそ90%が欧米や東南アジアなどから訪れる個人旅行の観光客だということです。

一時は新型コロナの感染拡大によって利用客数が激減し、売り上げが感染拡大前の10%から20%程度にまで落ち込みました。

しかし、10月11日から水際対策の緩和で外国人観光客の個人旅行も解禁されるなか、秋の紅葉シーズンを迎える10月下旬から11月にかけては予約が徐々に増えていて、すでに50件近くに達しているということです。

ホテルではすべての利用客が安心して過ごせるようにこまめにマスクを着用するよう呼びかけるなど感染対策も徹底していきたいとしています。

ホテルのオーナーの福田金也さんは「個人の外国人観光客からすぐに予約が入ってきたのですごくうれしいですし、今後につながると思います。マスクは習慣の違いもありますが失礼にならない程度にお願いしながら、日光のいいところを楽しんでもらいたい」と話していました。

マスクの着用ルールも整理へ

新型コロナの感染者の減少傾向が続いていることなどから、政府はマスク着用のルールも整理する方針です。

政府が示している「屋外ではマスク着用は原則不要」のルールについて、加藤厚生労働大臣は国民と共有できていないとして、さまざまな機会を通じて伝えていく考えを示しました。

新型コロナの感染対策としてのマスクの着用について政府は屋外では原則不要、屋内でも2メートルを目安に周りとの距離がとれ、会話をほとんど行わない場合には必要ないなどするルールを示しています。

加藤厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で「政府が発信している今の時点におけるマスク着用の考え方は必ずしも国民のみなさんと十分に共有できているとは言い難い状況だ」と述べました。

そのうえで「地元の人と話すと『マスクを外していると世間の目がある』という話も聞く。自分でマスクを着けたいという人はいいが、マスク着用の必要がない状況があることをいろいろな機会にしっかりとPRしていかなければいけない」と述べました。

京急電鉄は多言語でのマスク着用呼びかけを検討

国や鉄道各社がまとめた感染対策のガイドラインでは乗客にマスク着用への協力を呼びかけることになっていますが、すでに海外では着用が求められていないところもあり、水際対策の緩和に伴いどう周知していくかが課題となっています。

羽田空港に乗り入れている京急電鉄ではこれまでも消毒などの感染対策を行うとともに日本語でマスク着用の呼びかけを行っていますが、今後、増加が見込まれる外国人観光客など向けに、英語や中国語、韓国語でも呼びかけを行うか対応を検討しています。

一方で、政府はマスク着用のルールを整理する方針を示していることから、京急電鉄では、今後の国の動向などを見ながら対応を決めたいとしています。