水際対策緩和 入国者上限2万人に
観光地は外国人観光客に期待

2022年6月1日

新型コロナウイルスの水際対策が6月1日から大幅に緩和されました。一日あたりの入国者数の上限が2万人に引き上げられ、一部の国や地域からの入国者には入国時の検査などが免除されます。観光地では外国人観光客の受け入れ再開に向けて、準備が進められています。

政府は、観光目的を除く外国人の新規入国を再開しており国内外の感染状況や空港の検疫体制などを踏まえ、一日あたりの入国者数の上限を3月1日に5000人、14日に7000人、4月10日には1万人と、段階的に引き上げてきました。

そして6月1日から入国者数の上限を2万人に引き上げるとともに、入国者に対する検疫措置を緩和することになりました。

ただ、感染拡大前の2019年の一日あたりの平均はおよそ14万人だったことから、依然として7分の1程度となっています。

新たな検疫措置は

これまでの入国時の検査での陽性率などに応じて、世界の国や地域を3つのグループに分け、最もリスクが低いグループの98か国・地域からの入国者はワクチン接種の有無によらず、次に低いグループの99か国・地域からの入国者は3回目の接種を条件に、入国時の検査や自宅などでの待機措置を免除するとしています。

さらに6月10日からは最もリスクが低いグループの国や地域について、添乗員付きのツアー客に限定し、およそ2年ぶりに外国人観光客の受け入れを再開することにしています。

タイから到着の女性「すぐに終わりびっくり」

水際対策が大幅に緩和された6月1日、成田空港では到着した人たちから手続きの簡素化を歓迎する声が聞かれました。検査が免除されたタイから到着した女性は「検疫がすぐに終わり、びっくりしました。少しずつ日常が戻ってきているのかなと思いました」と話していました。

浅草の土産物店「期待以外のなにものでもない」

外国人観光客の受け入れ再開に向け、東京 浅草の土産物の販売店では、外国人に人気のある商品を仕入れ売り場の切り替えを進めています。

浅草の仲見世商店街にある創業120年以上の土産物の販売店では、外国人観光客に人気がある富士山などの名所のマグネットの在庫を5倍以上に増やし、日本の観光客が好む商品の売り場の一部をマグネットに切り替えました。また外国人観光客が好む般若の能面も6月1日朝、およそ2年ぶりに仕入れ、さっそくケースに飾っていました。

一方で、コロナ禍の影響などで仕入れがうまくいかない商品もあり、中国産の日本人形は1か月前に発注したものの手に入らない状態が続いているということです。

店によりますと、新型コロナの感染拡大前は外国人観光客による購入がおよそ8割を占めていたことから、2020年と2021年の売り上げは感染拡大前の10分の1以下に落ち込んだということで、受け入れの再開を歓迎しています。

店主の朝比奈裕次さんは「これまでの商売は相当厳しかったので、受け入れ再開は期待以外のなにものでもない。感染者が増えて同じ状況が繰り返されないよう、店内でも感染対策の注意喚起をしていきたい。やっと来ていただけてうれしいし、外国の方も日本に来られてよかったと思ってもらえたらそれがいちばんだと思う」と話していました。

人力車のスタッフ 英語研修を再開

浅草で人力車を25年運営する店では、人力車を引くスタッフ向けに英語で雷門や隅田川などの名所を紹介するためのテキストの配付や、スタッフどうしの英語の研修を5月から再開しました。いずれも新型コロナの感染が拡大し、外国人観光客が減少した2020年から取りやめていました。

店によりますと、新型コロナの影響で、2020年と2021年の売り上げは感染拡大前に比べおよそ3割にまで減少したということで、外国人観光客の受け入れ再開で売り上げの回復に期待を寄せています。

人力車を運営する店の藤原英則代表は「ここまで我慢してきたので失った2年を取り戻せるよう感染対策も徹底しながら頑張りたい。人力車が世界の人とつながる橋渡しになればと思う」と話していました。

ピクトグラムで感染対策呼びかけ

茨城県の観光地の1つ、ひたちなか市の酒列磯前神社は、新型コロナの感染拡大前には、台湾や東南アジアからの観光客がツアーバスなどで連日のように訪れていたといいます。

外国人観光客の受け入れ再開に向け、境内には英語の表示に加え、マスクを着用することや観光客どうしの間隔をあけることなどを呼びかける「ピクトグラム」を掲示し、日本語や英語が分からない人も感染予防に努めてもらえるよう対策を取っています。

5月下旬には、受け入れ再開に向けた政府の実証事業の一環で、アメリカの旅行会社の経営者など4人が添乗員とともに訪れましたが、マスクを着用し手の消毒をしてから参拝して祈とうを受けたということです。

一方、実証事業ではタイから大分県を訪れた参加者の1人の感染が確認されたこともあり、神社ではさらに掲示を増やして呼びかけていくほか、観光客の規模に合わせた感染対策を検討していくことにしています。

酒列磯前神社の工藤彰将さんは「外国の方にも安心して参拝してもらえるよう、定期的に感染対策を見直し、日本の文化に触れてもらえるよう整備していきたい」と話していました。