東京大阪“時短要請”解除決定
進む制限緩和 海外で再拡大も…

2021年10月21日

東京都と大阪府がいずれも来週月曜日の10月25日から、飲食店に対する時短要請を解除することを決めました。東京は認証を受けた店が対象で、酒の提供時間や営業時間の制限がなくなります。

一方、いち早く制限緩和に踏み切ったイギリスでは感染者が再び増加する傾向が見られます。制限緩和が進む中、どのようなことに注意が必要なのでしょうか。

<東京>“要請解除”決定 10月25日~ 認証店が対象

東京都は感染状況などの改善を受けて、10月25日以降は都の認証を受けた飲食店に対する時短要請を解除し、酒の提供や営業時間の制限をなくすことを決めました。

東京都は10月21日に開いた新型コロナウイルスの対策本部会議で「リバウンド防止措置期間」が終了した10月25日以降の対応を決め、このうち飲食店は感染対策の徹底の認証を受けた店に対する要請を解除します。

現在は
▽酒の提供は午後8時まで
▽営業時間は午後9時までとなっていますが
これらの制限がなくなります。

そのうえで、同じグループの同じテーブルへの案内は4人までにするよう求めます。同じテーブルで5人以上の大人数を案内する場合、ワクチンの「接種済証」やその写真を確認するよう求めます。

また、11月1日からはワクチンの接種を証明する「TOKYOワクションアプリ」の活用を呼びかけます。都が飲食店に対する時短営業を要請しないのは2020年11月以来、およそ11か月ぶりです。

ただ、認証を受けていない飲食店には酒の提供を午後9時までとするよう協力を求めます。都は11月30日までの1か月余りを「基本的対策徹底期間」と位置づけ、これらの対策を行い感染の再拡大を確実に抑え込んでいきたいとしています。

<東京>小池知事「感染は抑えられているが基本的対策の徹底を」

対策本部会議のあと小池知事は記者団に対し「これまでのワクチン接種の推進や感染防止対策などへの協力もあって、感染は急速に抑えられていると思う。ただ、コロナウイルスは次々と新しい事象が起こるなど不透明なことが多いのも事実だ。第6波の到来も危惧される」と指摘しました。

そのうえで「改めて基本に立ち返って手洗い、消毒、正しいマスクの着用、換気の徹底など基本的な感染防止対策の徹底・定着をベースにしながら次のステップを迎えたい。そのことが自身の命はもとより家族や大切な人、社会を守ることになり、社会経済活動の回復・再生につながっていく。引き続きの協力をよろしくお願いしたい」と呼びかけました。

また、小池知事は「まだコロナが完全に消えたわけではない。一般的に冬の期間は乾燥した気候で、年末年始にかけて飲食の機会が増えることや帰省など人の動きが活発になることが考えられ、感染リスクが高まると言われている。11月末までの『基本的対策徹底期間』の取り組みの効果を踏まえて、年末年始に向けた対応を検討していく」と述べました。

<東京>「基本的対策徹底期間」の対応

都は10月25日から11月30日までを「基本的対策徹底期間」としています。この間の飲食店以外への対応は以下のとおりです。

<飲食店以外の施設>
対象は劇場や映画館、集会場や公会堂、展示場や文化会館、デパートなどの商業施設、ホテルや旅館、体育館などの運動施設、パチンコ屋などの遊技場、博物館や美術館、漫画喫茶などの遊興施設、学習塾などです。
これらの施設に対しても営業時間の短縮は求めません。業種別ガイドラインの順守など基本的な感染防止対策を徹底するよう協力を依頼します。また、大人数や長時間におよぶ飲食、飲酒など、感染リスクの高い行動を避けるよう利用者への注意喚起を求めます。カラオケ設備を提供する場合は利用者の密を避けることや、こまめな換気、それにマイクの消毒などを求めます。

<学校などの施設>
対象になるのは幼稚園、保育所、小学校、中学校、高校、大学、介護老人保健施設などです。発熱などの症状がある人の登校や活動への参加自粛の徹底を求めます。また、懇親会や飲み会などについて注意喚起を徹底するよう協力を依頼します。

<イベント>
午後9時までとしていた開催時間の制限は解除されます。10月31日以降は大声の歓声や声援があるものは収容の上限を定員の半分まで可能とします。
大声がないものは
▽定員が5000人以下は定員いっぱいまでの収容を可能とするほか
▽5000人から1万人以下は5000人まで
▽1万人以上は定員の半分まで
それぞれ可能とします。

<都民に対して>
▽外出は少人数で混雑している場所や時間を避けて行動すること
▽帰省や旅行・出張など都道府県間の移動に際しては、基本的な感染防止対策を徹底し特に大人数の会食を控えること
▽路上、公園などにおける集団での飲酒など感染リスクが高い行動を控えることを求めます。

<東京>感染者36人 7日間平均は43.6人

都内では10月21日、新型コロナウイルスへの感染確認は36人で、1週間前の木曜日より26人減り5日連続で50人を下回りました。また、10月20日で50人を下回った7日間平均は10月21日時点でさらに減少して43.6人となりました。

10月21日は東京都のモニタリング会議が開かれ、都内の感染状況の警戒レベルは4段階のうち上から3番目のレベルで維持されました。専門家は「感染状況は改善傾向にある」としたうえで「感染リスクの高い行動を引き続き避けるとともに、基本的な感染防止対策を徹底する必要がある」と呼びかけました。

また、都内のワクチンの接種状況は10月19日時点で、全人口のうち
▽1回目を終えた人が72.1%
▽2回目を終えた人が66%でした。

専門家は「感染拡大のリスクが高くなる冬に備えて、接種をさらに推進する必要がある」としています。そして「2回接種したあとも感染する可能性があり、軽症や無症状でも周囲の人に感染させるリスクがある」と指摘し、ふだん会っていない人との飲食や旅行、その他の感染リスクの高い行動を引き続き避けるよう呼びかけました。

<大阪>“要請解除”決定 10月25日~ 会食時間は2時間程度まで

大阪府も、飲食店に対する営業時間短縮の要請などを10月31日の期限を待たず10月25日から解除することを決めました。

大阪府の新型コロナウイルスの対策本部会議は10月21日午後、府庁で開かれ、担当者が府内では新型コロナの新規感染者の減少傾向が続き、患者用の病床使用率も低下していることなどを報告しました。

これを受けて、10月31日までとしていた飲食店への営業時間の短縮や酒類の提供自粛の要請を10月25日から解除することを決めました。

一方、大人数での会食は感染のリスクが高いとして
▽府の認証を受けている店は1つのテーブルにつく人数を4人以下に
▽認証を受けていない店は引き続き来店時の人数を4人以下とし
会食の時間はいずれも2時間程度までとするよう要請することを決めました。

府民に対しては認証を受けている店の利用を推奨し、マスク会食を徹底するよう呼びかけるとしています。府内全域で飲食店への時短要請などが解除されるのは2020年11月下旬以来、およそ11か月ぶりです。

<大阪>吉村知事「飲食の場はルール守り楽しんで」

大阪府の吉村知事は記者会見で「去年は11月以降、冬場に感染が増えており今後、感染が拡大する可能性は高い。飲食店への時短要請などは解除するが、次の波を大きくしないよう飲食の場はルールを守りながら楽しむようにし、一人一人の基本的な感染対策の徹底をお願いしたい」と述べました。

<京都>“要請解除” 10月22日~ 飲食店は準備「やっと営業できる」

京都府内では、すべての市町村で飲食店などに対する営業時間の短縮要請が10月22日から解除されます。臨時休業をしてきた飲食店では営業再開に向けた準備を進めています。

宇治市にある鉄板焼きや和食を楽しめる飲食店は2021年6月から臨時休業を続けてきましたが、営業時間や酒類の提供時間の短縮要請が解除されることを受けて10月22日からおよそ5か月ぶりに営業を再開します。

10月21日は、店長がテーブルの調味料を補充したり、ビールサーバーを掃除したりして再開に向けた準備に追われていました。

10月22日は深夜1時まで営業する予定ですが、客には会食は1つの席で4人まで、2時間までの利用を呼びかけることにしています。

店長の氷室佑樹さんは「やっと営業できるといううれしさと、外出の機会が減ってきた中でお客さんがどこまで戻ってくるのか分からない不安があります。従業員とお客さんの両方で感染対策を共有して楽しい外食の時間を守っていきたい」と話していました。

<京都>“要請解除” 10月22日~ 酒店は配送準備「今の状況続いて」

また、京都市山科区の酒店では早速飲食店から注文が入り、ビールなどを配送する準備に追われていました。

この店では9月の酒の販売量は例年の4割ほどに落ち込みましたが、緊急事態宣言の解除や今回の時短要請の解除で徐々に注文が増え、10月は例年の8割程度にまで回復してきているということです。

酒店の龍野英次店主は「今後への期待もコロナに対する不安も両方がある。時短要請が解除になってありがたいが、これから忘年会シーズンでそのころにお酒はだめだとまた言われたらそれもつらい。この今の状況が続いていくことをせつに願っている」と話していました。

<沖縄>“前倒し解除”は見送りへ 10月末まで要請続ける

一方、沖縄県は、飲食店に求めている営業時間の短縮について10月31日の期限より前に解除することは見送る方向で調整を進めています。

沖縄県は10月21日午後5時半ごろから対策本部会議を開き、飲食店に求めている営業時間の短縮を当初予定の10月31日から前倒しして解除するか協議しています。

関係者によりますと会議では
▽新規感染者数が下げ止まっていることに加え
▽人口10万人当たりの感染者数は依然として全国最悪だとして
前倒しでの解除は見送り、当初の予定どおり10月末まで要請を続ける方向で調整を進めているということです。

<海外では…>英 制限緩和先行も一日の感染者4万人超

一方、いち早く制限の緩和に踏み切ったのがイギリスです。2021年7月、人口の大部分を占めるイングランドで新型コロナに関するほぼすべての規制が撤廃されました。

しかし、それから3か月がたち感染者は連日、一日4万人を超え、ヨーロッパの各国に比べて感染の再拡大が目立っています。

ジャビド保健相は死者や重症化する人は大きく増えていないとして、現時点で新たな対策には否定的な姿勢を示しています。ただ、冬に向けて感染がさらに増え一日に10万人に達する可能性があるとし、行動規制がほぼない自由な環境を維持するためにもまだワクチンを接種していない人は接種するよう強く促しています。

専門家「ウイルスはまだ市中に潜む 段階的に戻すことが重要」

イギリスなど規制を緩和した海外の国で感染の再拡大が見られることについて、新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は「イギリスはワクチン接種が先行していた国の一つだが、一気に緩めてしまったためにブレイクスルー感染も増えて再び増加してしまった。幸いなことに重症者、死亡者ともに大きな増加はみられていないが、感染者数が増えてしまうと一定数、重症者の再増加が予想されてしまう。日本もワクチン接種は順調に進んできているが、接種率が上がったからといって急に緩めてしまうと再増加が生じてしまう。ワクチンの接種率を少しでも上げるとともに基本的な感染対策はしばらくの間、維持することが必要になると思う」と指摘しました。

そのうえで「国内では緊急事態宣言が解除されて3週間たっても、まだ減少傾向が続いている。今回はしっかり抑え込むことができているので今は段階的に社会経済を戻していくタイミングだと思うが、一気に緩和してしまうと海外のようなリバウンドが起きる可能性がある。あくまで段階的に慎重に戻していくことが重要だ」と話していました。

また、今後、注意すべき点については「ウイルスは無くなった訳ではなく、まだ市中に潜んでいる。特に会食や飲食の場が常にリスクがあると認識する必要がある。飲食店の第三者による認証システムがしっかり動き出しているのでまずはそういうルールに従うことなるが、マスクを効果的に使うことに加え、換気ができているかや、人数を4、5人までにして滞在時間も短くするなど一人一人が感染リスクを考えて注意して行動することが重要だ」と話していました。