コロナ 水際対策緩和で
外国人旅行客増加も人手不足が課題に

2022年10月30日

新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されてからまもなく3週間です。
都内のホテルの中には、外国人旅行客の増加などによって予約が大幅に増えているところがあります。

新型コロナウイルスの水際対策をめぐっては、9月7日に1日当たりの入国者数の上限が5万人に引き上げられたほか、10月11日には入国者数の上限が撤廃され、個人の外国人旅行客の入国も解禁されるなど、大幅に緩和されました。

東京 千代田区のホテルでは、日本の伝統をPRすることで外国人旅行客を取り込もうと、すべての客室を畳敷きにしているほか、フロントの横で日本酒の提供などを行っています。

9月以降、アメリカやヨーロッパのほか、韓国などからの予約が増えていて、水際対策が大幅に緩和された10月は、外国人の予約数が9月と比べておよそ2倍に増えているということです。

また、「全国旅行支援」を利用する国内の旅行客も増えていることから、10月の客室の稼働率はおよそ65%と、2021年の同じ月と比べるとおよそ2倍に増えているということです。

さらに11月と12月は予約でほぼ満室になっているということです。

「星のや東京」の李根株総支配人は「ありがたいことにたくさんのお客様に利用いただいて大変うれしい。日本の方も海外の方も増えていることを体感している。旅行のニーズが高まっていると感じるので、さらなるサービスの向上に努めたい」と話していました。

東京 浅草 多くの外国人観光客でにぎわう

東京 浅草では10月30日も多くの外国人観光客が訪れ、写真を撮ったり人力車に乗ったりして観光を楽しんでいました。

ハワイから訪れたという70代の女性は「日本には2週間ほど滞在する予定で、京都や飛騨高山などを観光します。日本の食や景色、文化がおもしろくて大好きです」と話していました。

イタリア人の20代の夫婦は「新型コロナの影響で旅行はしばらく遠くに行けなかったので、ヨーロッパ周辺を旅していました。久しぶりに遠くに来ることができてうれしいです」と話していました。

従業員不足 レストランの営業中止するホテルも

ホテルの中には外国人の宿泊客が増える一方、従業員が足りずにレストランが営業できないなど、人手不足の影響を受けているところがあります。

千葉県浦安市にあるホテルでは、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、9月までは外国人の予約がほとんど途絶えていましたが、水際対策の緩和によって10月から大幅に増えているということです。

「全国旅行支援」も始まったことを受けて、年末にかけては客室のおよそ8割が予約で埋まっていて、このうち外国人の予約が1割を占めているということです。

一方でこのホテルでは、新型コロナの感染が拡大して以降、正社員140人のうちおよそ50人が退職し、現在はコロナ禍前よりも2割ほど少ない人数で運営を行っています。

このため、レストランの従業員を一時的に客室やフロントの担当に変えざるを得ず、11月からは平日夜間のレストラン営業の中止を決めました。

また、日によっては客室が満室になるほど予約の問い合わせがあるということですが、従業員が不足していることから、客室の稼働率は8割程度に制限しているということです。

現在の客室料金は、コロナ禍前の水準よりは低いということですが、物価高騰の影響で食材の価格や客室のシーツやタオルなどのクリーニング代も上がっていることから、今後も人手不足や物価が高い状態が続けば、宿泊料金の値上げを検討する可能性があるとしています。

ホテルでは人手不足を少しでも解消するため、11月からは客が端末を操作して自動でチェックインできる装置を設置するということです。

東京ベイ東急ホテルの岩本裕明総支配人は「たくさんのお客様に利用してもらってありがたいですが、特に若い従業員の退職が続いていたので、人手不足は大変厳しい状態です。自動化やIT化を進めて補っていきたい」と話していました。

旅館やホテル業界 社員不足と回答6割超

旅館やホテル業界では、9月行われた民間の調査に対し、正社員や非正規の社員が不足していると答えた企業の割合が6割を超えています。

民間の信用調査会社「帝国データバンク」は、毎月、およそ50の業種の全国およそ2万6000社を対象に人手に関する調査を行っています。

最新の9月時点での調査結果によりますと、業種別では「旅館・ホテル」業界で「正社員が不足している」と答えた企業の割合が62.5%でした。

また、非正規の社員についても「旅館・ホテル」業界では62.3%が「不足している」と答えています。

こうした状況の背景には、新型コロナウイルスの水際対策が緩和されるなか、外国人観光客が増加し、繁忙感が高まったことなどがあるとみられます。

日本政府観光局によりますと、9月、観光客を含めて日本を訪れた外国人旅行者は推計で20万6500人と、新型コロナの感染拡大以降初めて20万人を上回りました。

水際対策の大幅緩和や「全国旅行支援」などで今後も観光需要の回復が見込まれる中、人手不足への対応などが課題となっています。

専門家 「キャッシュレス決済やチェックイン自動化の導入を」

観光などの分野に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は「政府が水際対策の大幅緩和を打ち出した直後に、海外の人たちから日本の宿泊業者に予約や問い合わせが増えたと聞いている。日本の観光地の人気は高く、日本を訪れたいという外国人は多い。国際線はかなりの減便を強いられてきたが、航空各社も以前の動きに戻していこうと活発なので、移動の手段も確保されて日本を訪れる人は今後も増えると思う」と話しています。

そのうえで、宿泊料金の動向について「需要と供給の関係なので、需要が多ければ価格が上がるのは自然だ。さらに物価が上昇し、食糧費や燃料費も値上がりしているので、その部分を反映するとコロナ禍の中で提供されていた価格より上がってしまうのはやむをえない」と指摘しています。

また、人手不足を解消するための方策については「キャッシュレス決済やチェックインの自動化などの技術を導入することで、本当に必要なおもてなしをする部分に優れた人材を投入できる仕組みにすることが重要だ」と話しています。