「まん延防止」解除方針も“
医療現場の負担は続いている”の声

2022年3月16日

「まん延防止等重点措置」を解除する方針について、新型コロナ患者の治療にあたる病院からは、感染者は十分に減っておらず、医療現場の負担は続いているという声があがっています。

埼玉県川口市の埼玉協同病院では、軽症から中等症までの新型コロナの患者の入院を受け入れているほか、発熱外来を設けてPCR検査などを行っています。

コロナ患者向けの15床の入院病床は、定員超えが続いていた2月からはいくぶん落ち着いたものの、現在も満床に近い状態が続いているということです。

また、心不全や脳梗塞などで入院するために検査を受けた人に感染が確認され、コロナと並行して治療しなければならないことも少なくないということです。

このため緊急性がない手術を延期しなければならないケースが出るなど、コロナ以外の一般医療への影響も続いているということです。

また、救急車の受け入れを要請されても現在も3割程度しか受け入れることができていない状態が継続しているということです。

埼玉協同病院の守谷能和医師は、「現在も発熱外来で検査を受ける人の5割から6割が陽性になり、陽性率の高い状態が続いている。入院患者の状況が今いちばん大変で、高齢の患者が多いため、重症化しなくても心不全になったり、動けなくなったりして、退院までに非常に時間がかかってしまう」と話しています。

さらに、「感染者が増えても病床や医療従事者の数は限られているので、今後、感染の波が高くなっても対応には限界がある。現在は感染者が十分に減っている状況ではなく、これ以上の波が来ると太刀打ちできない」と話しています。

介護現場からは戸惑いの声も

厚生労働省のまとめによりますと、14日までの1週間に高齢者施設で発生したクラスターなどの数は341件と、過去最多となった前の週から168件減ったものの、今も高い水準が続いています。

クラスターを経験した高齢者施設の一つ、千葉県柏市の特別養護老人ホームでは、1月から2月末にかけて入所する高齢者と職員合わせて22人が感染しました。

感染した高齢者1人は死亡し、1人は今も入院しています。

施設では、検査キットなどの資材も十分ではない中、手探りで対応を続けましたが、職員は次々と感染して人手が足りなくなり、管理職が連日、夜勤などをしてしのぎました。

現在は感染は収まっているものの、対応を続けてきた職員は、心身ともに疲弊しているということで、中には退職を申し出る人も出ているといいます。

また、近くの施設では今もクラスターが相次いでいるということで「まん延防止等重点措置」が解除されても、入所者と家族の対面での面会制限を継続するほか、外出を控えることも続けざるをえない状態で、入所者の身体機能や認知機能の低下が懸念されるとしています。

特別養護老人ホームの宇佐見さくら施設長は、「オミクロン株は感染力が強く、ひとたび感染するとあっという間に広がってしまった。現在も施設内にウイルスを持ち込まないよう細心の注意を払っているが、市中で感染が広がってしまうと防ぎようがない。『まん延防止等重点措置』が解除されることによって、人流が増加して再び感染が増えないか心配だ」と話していました。

そのうえで、「早く入所者の日常生活を取り戻したいが、感染が広がっているかぎり、命を守るために対策を緩めることができず板挟みだ。措置が解除されても再び感染が広がらないようリスクの高い行動は控えてほしい。行政には再び感染が増えた時に備えて検査体制の整備や介護人材の応援、金銭的な支援策などを整えてほしい」と話していました。