“隠れオミクロン”
医療現場が苦慮
救急患者の受け入れ影響も

2022年2月5日

オミクロン株の急拡大で、これまでコロナ患者や救急患者を積極的に受け入れてきた病院でも対応が難しくなってきています。その原因の1つは、症状がなくても実は感染している“隠れオミクロン”とも言える患者が相次いでいることで、その対応に人手や時間が取られ、救急医療に影響が出ています。

けがによる搬送でも検査してみると…

東京 墨田区の東京曳舟病院は、地域救急医療センターとして救急患者の受け入れを担っていますが、搬送依頼はコロナ前の3倍以上となり、受け入れを断らざるをえないケースが出てきているということです。

その原因の1つが“隠れオミクロン”とも言える患者への対応です。

病院には、病気やけがを理由に多くの患者が搬送されますが、検査の結果、新型コロナへの感染が判明するケースが相次いでいます。

1月、救急搬送などで受け入れた964人のうち58人が検査の結果、感染していることが分かったのです。

「検査の間は救急搬送を受けられず」

陽性者が占める割合は高くはないですが、無症状の感染者が混在している可能性がある以上、搬送されてくる患者は、検査結果が出るまではコロナ患者を受け入れる、ウイルスの飛散を防ぐ「陰圧テント」に入ってもらう必要があるといいます。

看護師なども検査結果が分かるまでテントから出られず、患者を入れ替えるたびに消毒のために時間がかかり、コロナ患者や救急患者の受け入れに影響が出ています。

1月、小学生の女の子が自宅で転倒し、顔にけがをして搬送されたケースでも、コロナの症状はなかったものの、検査の結果、陽性だと分かったということです。

三浦邦久副院長は「陰圧テントでの検査の間は救急搬送を受けられず、どうしても受け入れが停滞してしまう。無症状でも、検査をすると陽性だと分かる“隠れオミクロン”の患者がいる以上、感染に気をつけながら対応しないといけない」と話しています。

屋台骨となる若手の医療従事者が…

さらに、患者の受け入れが難しくなってきている原因はほかにもあります。

それは、厳しい現場を支える若い医療従事者が出勤できなくなる事態が起きていることです。

東京曳舟病院では、院内感染は起きていませんが、1月末の時点で看護師や臨床検査技師など10人余りが出勤できない状況になっています。

こうした職員は20代から40代で、職場では夜勤や当直といった厳しい現場をいわば“屋台骨”となって支えていて、家庭ではその多くが子どもを持つ親でもあります。

このため、同居する子どもの発症から自身も感染したり、濃厚接触者になったりするケースが相次いでいるほか、子どもが通う保育園が休園となり、自宅を離れられない職員もいるということです。

こうした若い世代の医療従事者が出勤できなくなることで、病院ではICU=集中治療室のベッドを6床から4床に減らすなど、新たな患者の受け入れを制限せざるをえないということです。

臨床検査技師の勤務管理を行っている柴田孝子係長は「救急病院として新型コロナかどうか検体を調べる検査は24時間、止められないし、コロナの検体数も毎日170件ほどに増えている。同居する家族や子どもの感染は防ぎきれない面もあり、勤務を入れ替えるなどギリギリの状態で対応している」と話しています。

病院「ドミノ倒しで医療崩壊のような状態」

三浦副院長は「オミクロン株は重症化はしにくいが、スタッフが職場に出て来られなくなると、ドミノ倒しのように影響が出て医療が維持できなくなる。その意味で医療崩壊のような状態になっているのが現状で、態勢が縮小となってもできるかぎりふんばって対応を続けたい」と話していました。