軽症患者に使用できる2種類目の治療薬
「ソトロビマブ」承認

2021年9月27日

抗体を投与することで新型コロナウイルスの働きを抑える新たな治療薬が、9月27日夜、国内で承認されました。
軽症患者に使用できる薬としては抗体カクテル療法に続いて2種類目となります。

承認されたのは、イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクラインが、厚生労働省に承認申請をしている「ソトロビマブ」です。

対象となるのは、重症化のリスクが高く、かつ酸素の投与が必要ない軽症または中等症の患者で、新型コロナウイルスの働きを抑える「中和抗体」を点滴で投与します。

海外で行われた治験では、入院や死亡のリスクを79%減らす効果が確認されたということで、アメリカでは2021年5月に緊急使用の許可が出ています。

厚生労働省の専門家部会で9月27日、承認の可否が審査され、有効性や安全性が認められるとして、国内での承認が了承されました。

これを受け、厚生労働省は、9月27日夜、正式に承認しました。

軽症患者にも使用できる薬としては抗体カクテル療法に続いて2種類目となり、より多くの患者の重症化の予防につながることが期待されます。

一方、アナフィラキシーや呼吸困難などの副作用が起きるおそれもあることから、厚生労働省はまずは対象を入院患者に限定したうえで、抗体カクテル療法と同様に外来や往診での投与を認めるか検討していくことにしています。

「ソトロビマブ」とは

ソトロビマブは、すでに承認されている抗体カクテル療法と同じ、「中和抗体薬」と呼ばれる治療薬です。

開発したグラクソ・スミスクラインによりますと、1057人を対象に海外で行われた治験では、入院や死亡のリスクを79%減らす効果が確認されました。

また、投与から24時間以内に、発熱や呼吸困難、悪寒、めまい、発疹などの症状が確認されたほか、1人がアナフィラキシーを起こしたということです。

グラクソ・スミスクラインは、臨床データが限られているため、今後、報告されていない重篤な症状があらわれる可能性もあるとしています。

新型コロナウイルスの治療薬の承認は、レムデシビルとデキサメタゾン、バリシチニブ、それに抗体カクテル療法のカシリビマブとイムデビマブに続いて5種類目となります。

厚生労働省は、供給量の見通しや金額を明らかにしておらず、医療機関から投与する患者の数などを報告してもらったうえで、必要な量を供給することにしています。

田村厚生労働相「新たな治療の選択肢 期待している」

田村厚生労働大臣は9月27日夜、厚生労働省で記者団に対し「新型コロナウイルスに対する新たな治療の選択肢なので期待している。適切に供給されるように、政府でしっかり確保し、必要な医療機関に配送したい」と述べました。

そのうえで、投与の対象について「特例承認をしたばかりなので、副反応が出ても対応できるかなど、しっかり見ていかなければならない。当面は、入院が前提になるが、早い時期に安全性が確認できれば、最終的には往診でも使えるようにしたい」と述べました。

専門家「複数の薬で安定供給できれば重症化予防に」

感染症対策に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉教授は、今回承認された治療薬は、抗体カクテル療法と期待される効果や使い方は同じだとしたうえで「薬の供給量には限界があり、今後もし、感染の急拡大で患者が増えた場合に1つの薬だけでは不足するおそれもある。複数の抗体薬が使えるようになることは医療現場にとって重要だ。複数の薬によって安定的な供給ができれば、必要な人に必要な治療が届き、より多くの人の重症化予防につながるだろう」と話しています。