東京都 自宅療養者が急増
酸素投与まで症状が悪化しても

2021年8月12日

新型コロナウイルスの感染急拡大で都内では自宅で療養する人たちがこれまでで最も多い2万人を超え、急増しています。酸素の投与を行うまで症状が悪化しながらも、自宅で療養せざるをえない患者の姿がみられています。

首都圏を中心に複数の医療機関と連携して夜間や休日、医師に往診をしてもらっている会社では、東京都の委託を受けて登録する医師が新型コロナの自宅療養者を訪問し診療を行っています。

保健所から入院が必要と判断されたものの受け入れ先の調整がつかないケースが相次ぎ、8月に入ってからの1週間で往診した首都圏の自宅療養者のうち、肺炎などが悪化し酸素の投与が行われたのは35件あったということです。

このうち1人暮らしの40代の男性はおよそ1週間、療養が続いていて、往診中も激しくせきこむなど症状が悪化したため酸素の投与が行われたほか、60代の夫婦と40代の息子が感染したケースでは、息子ら2人が入院が必要な状態でしたが調整がつかず家族3人で自宅療養を続けていました。

第4波では大阪で高齢者を中心に自宅療養者が急増しましたが、第5波では基礎疾患のない30代や40代の患者で酸素を投与するまで症状が悪化したケースが相次でいるということです。

往診を行っている「ファストドクター」の代表、菊池亮医師は「これ以上、感染者数が増え続けると患者が適切な場所で適切な医療を受けられないといった状況になり、助けたい命が助けられないことも出てくるかもしれない。できるかぎりの医療を提供して守っていければと思うが、感染対策の徹底もお願いしたい」と話していました。

保健所が入院判断も1週間 調整つかず

東京都から委託を受けて医師が自宅療養者の往診を行う会社が撮影した映像には、酸素の投与を行うまで症状が悪化しながらも自宅で療養せざるをえない患者の姿がみられました。

都内で1人暮らしをしている40代の男性は新型コロナウイルスに感染し保健所から入院が必要と判断されましたが、調整がつかずおよそ1週間、自宅で療養を続けていました。

高熱が出て呼吸が苦しいと訴えていて医師が往診する間も時折、激しくせきこんでいました。

血液中の酸素の値をパルスオキシメーターで測定すると数値は90%前半に下がっていて、治療を始めなければ重症化につながりかねない状態だと判断されました。

このため「酸素濃縮装置」と呼ばれる医療機器を持ち込んで、患者の鼻にチューブをつけて酸素を投与し酸素の量を増やしていきました。すると、酸素の数値は持ち直していきました。

ただ、いつ症状が悪化するか分からず看護師が3時間ごとに電話などで状態の確認を行うことにしたということです。

往診した菊池亮医師は「激しい呼吸苦と40度の発熱もあり、かなり肺炎が進んでいることを疑わせる症状だった。入院調整中のようだがなかなか時間がかかっている状態で、致し方がない状況とは思うができるかぎり対応していきたい」と話していました。

一家全員が感染 入院必要も自宅で療養

都内で暮らす60代の夫婦と40代の息子の家族3人は一家全員が感染し、自宅で療養を続けています。

40代の息子は37度台の発熱があり、胸のあたりが気持ちが悪いと訴えていました。

60代の父親は症状は出ていませんが、60代の母親は39度の発熱と息苦しさを訴えていました。

息子と母親は時折、激しくせきこむ状態で気分が悪くて食事もとれないということです。

保健所からは母親と息子については入院が必要と判断されましたが、調整がつかず医師は応急措置として「酸素濃縮装置」で酸素を投与し点滴を行っていました。

60代の母親は血液中の酸素の値が80%後半に低下していて、40代の息子も数値が90%前半に下がっていました。

60代の父親は往診したスタッフに対して「3人で感染してしまい外にも出られないし、どうしたらいいかも分からなかった」と話していました。

往診した菊池亮医師は「入院が必要な患者が入院できなくて自宅にあふれているということになる。そういった患者にどのような医療支援をしていくか。患者は不安に押しつぶされそうになっている方も多くみられる。自分の病状がどれくらいのところにあり今後どうなっていくのか分からず、本当につらい状況で生活されていると思う。しっかり寄り添って心のケアも含めて治療していきたい」と話していました。