中等症でも急速悪化 重症に転じるケース相次ぐ
首都圏大学病院

2021年7月26日

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、首都圏の患者の治療にあたる大学病院では、中等症で入院した患者が数日後、重症に転じるケースが相次いでいます。医師は「重症はこれまでと比べて少ないと言われるが、実は重症という氷山の下に中等症が大勢いて、いつ悪化するか分からず、警戒を緩められない」と訴えています。

埼玉県川越市にある、埼玉医科大学総合医療センターは、重症と中等症の患者の治療にあたっていて、先週以降、ほかの病院で症状が悪化した患者が連日運ばれてきています。

7月24日時点で、13人が入院していて、30代から50代の若い世代で10人を占め、インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」に感染していた患者は11人にのぼっています。

症状が重い順に「重症」「中等症」「軽症」となりますが、医療現場では、「中等症」は、酸素の吸入が必要なほど症状が悪化した「中等症2」と、それ以外の「中等症1」に分類されます。

この病院ではこれまでのところ、「重症」は2人、「中等症2」は7人ですが、重症の2人は入院時は中等症だったものが重症化したということです。

50代の男性患者は、入院後、「中等症2」のレベルまで症状が悪化しましたが、治療の結果、持ち直すことができたということです。

男性は「熱がものすごく高くなり、つらかった。コロナには二度とかかりたくない」と話していました。

感染症科の岡秀昭教授は「中等症2は、よく誤解されるが、海外では重症に分類するところもあり、酸素を吸わないといけない、人工呼吸器の一歩手前の状態となる。今は重症が少ないと言われるが、実は重症という氷山の下に、中等症2が予備軍のように大勢いるというのが第5波の特徴だ。中等症2で入院した患者が、わずか数日で悪化し、生命維持装置が必要になるケースもあり、警戒を緩められない」と訴えています。

重症度は4段階に分類

厚生労働省によりますと、新型コロナの対応にあたる医療現場では、重症度について、「重症」「中等症2」「中等症1」「軽症」の4段階に分類しています。

このうち、「中等症2」は、血液中の酸素の数値が93%以下になり、呼吸不全が生じている状態で、人工呼吸器の装着を検討する段階だとしています。

これは、人工呼吸器や人工心肺装置=ECMOを装着した「重症」に次いで重い症状に分類されています。

「中等症2」にまで一時悪化した男性は

7月上旬、埼玉医科大学総合医療センターに入院した50代の男性は、感染力が強い、インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」への感染が確認されました。

男性はワクチンは接種しておらず、最初は軽症と診断されましたが、基礎疾患があったため、入院することになりました。

その後、徐々に肺炎が広がり、血液中の酸素の数値も悪化し、入院からおよそ1週間後、酸素マスクをつけざるをえなくなり、「中等症2」の状態にまで悪化しました。

その後、集中的に治療を行った結果、なんとか持ち直し、医師が質問する形式で取材に応じてくれました。

男性は「仕事中に急に寒気がして休憩室で倒れ込んでしまった。39度以上の熱が出て、とにかくつらかった。入院中は不安でたまらず、コロナには二度とかかりたくない」と話していました。

男性は、医師から回復傾向にあると告げられると、ほっとした表情を浮かべていました。

治療を担当した感染症科の岡秀昭教授は「この患者は入院して7日目に呼吸状態が悪化して中等症2になった。軽症で入院した人が、1週間後には中等症2になったり、重症になるかもしれない。きょうの重症者の人数を見て大丈夫だと判断されると、現場としては後手後手になってしまうと言わざるをえない」と話しています。