ピーク時必要な病床数 国目安の3割以下想定の県も

2020年5月28日

新型コロナウイルスの感染が再び拡大した時に備えて、厚生労働省は今後のピーク時に必要となる都道府県ごとの病床数の目安を示していますが、都道府県が主体となって想定している病床数は目安の7割にとどまっていることがわかりました。一部の県では3割以下となっていて、厚生労働省はできるかぎりの準備を進めてほしいとしています。

厚生労働省は専門家チームのメンバーが最悪のケースを想定して都道府県ごとに推計した入院患者数をもとに、その2割がピーク時に必要となる病床数の目安だとして一律に計算しています。

必要な病床数は、全国で合わせておよそ4万4000床に上り、厚生労働省は感染が再び拡大する第2波への備えを進めるよう都道府県に示しています。

病床の確保は、各都道府県が主体となって、地域の状況に応じて必要な数を想定し進めることになっていますが、都道府県による想定では、必要な病床数は合わせて3万1000床と厚生労働省の目安の7割にとどまっていることがわかりました。

このうち「特定警戒都道府県」に指定されていた13の都道府県では、2つの県で3割を下回り、埼玉県が25%、兵庫県が28%となりました。

2つの県ではいずれも厚生労働省とは異なる方法で必要な病床数を計算しています。

これについて埼玉県は「人口に比べて病床数がもともと少なく、対応には限界があるが、現状で十分とは考えておらず、第2波に備えて病床を増やすよう検討したい」としています。

一方、兵庫県は「第2波が来ても現在の想定で十分対応できると考えている。厚生労働省の目安は、何も対策をしなかった場合のものであり、より今の状況に即したモデルを示してほしい」としています。

厚生労働省は、これまでの感染拡大でも事前の想定以上に患者が増加し医療態勢がひっ迫した地域があったとして、できるかぎりの準備を進めてほしいとしています。

病床 地域状況に応じ各都道府県が確保

厚生労働省はピーク時に必要となる病床数の目安について、都道府県の担当者に示し病床の確保を進めるよう求めてきました。

目安のもとになっているのは、厚生労働省のクラスター対策班のメンバーで北海道大学大学院の西浦博教授が、何も対策が行われなかった場合の最悪のケースとして、ことし3月に推計したピーク時の入院患者数です。

厚生労働省は、その2割を必要な病床数としました。患者が重症化する割合についての専門家の見解や、クルーズ船で患者が急増した際の経験などを踏まえたものだということです。

病床の確保は地域の状況に応じて各都道府県が進めることになっているため、厚生労働省が示した病床数はあくまでも目安ですが、東京都や大阪府などではこの目安に沿って病床の確保を進めています。

今後の第2波以降で、感染のピークを迎えるおそれもあるため、厚生労働省は引き続きこの目安などをもとに病床確保を進めるよう都道府県に求めています。

厚生労働省は今後、専門家による新たな推計がまとまった際には、これにあわせて目安を修正することも検討しています。

“特定警戒”13都道府県の想定は

「特定警戒都道府県」に指定されていた13の都道府県が5月21日の時点で想定している今後のピーク時に必要な病床数は次のとおりです。

厚生労働省の目安と比べて少ない順に
▼埼玉県が25%(602床)
▼兵庫県が28%(515床)
▼京都府が45%(400床)
▼岐阜県が62%(458床)
▼愛知県が63%(1500床)
▼北海道が76%(1547床)
▼千葉県が85%(1700床)
▼神奈川県が96%(2800床)
▼茨城県が97%(1000床)
▼東京都が98%(4000床)
▼大阪府が100%(3000床)
▼福岡県が102%(1800床)
▼石川県が124%(520床)
となっています。

専門家「想定以上の病床の余裕が必要」

東京都の病床確保の助言にあたった国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、今のうちに備えを進めておくべきだと指摘します。

大曲センター長は「東京都でも一時期、想定以上に患者が急増し、病床がひっ迫した。想定以上の病床の余裕が必要だと感じた」と話しました。

そのうえで、「都道府県ごとの事情があるので一概には言えないが、これまでの経験を生かしながら第2波に備えて今のうちから病床を確保しておくことが必要だ」と指摘しました。