2020年5月12日更新
新型コロナウイルスに対応する医療体制について、NHKが全国の都道府県に取材したところ、東京都を除くすべての道府県で「入院患者の数」が「確保できている病床数」の8割を下回り、病床がひっ迫する状況が緩和されてきていることが分かりました。
感染者数が減少傾向にあるためですが、専門家は、今後、人の移動が多くなれば、患者が少なかった地域でも増加するおそれがあるとして、引き続き、医療体制の整備を進める必要があるとしています。
全都道府県のデータです。
新型コロナ対応のベッド数と入院患者数
NHK調べ 5月11日時点の最新データ
都道 府県 |
新型コロナ対応 ベッド数 |
入院中の患者数 (入院必要な人含む) |
ベッドに対する 割合 |
軽症者は ホテルに |
---|---|---|---|---|
北海道 | 500 | 356 | 71% | 実施 |
青森県 | 99 | 6 | 6% | 準備中 |
岩手県 | 184 | 0 | 0% | 準備中 |
宮城県 | 388 | 5 | 1% | 実施 |
秋田県 | 105 | 2 | 2% | 実施 |
山形県 | 150 | 11 | 7% | 準備中 |
福島県 | 229 | 32 | 14% | 実施 |
茨城県 | 151 | 38 | 25% | 実施 |
栃木県 | 130 | 26 | 20% | 実施 |
群馬県 | 165 | 56 | 34% | 実施 |
埼玉県 | 575 | 202 | 35% | 実施 |
千葉県 | 450 | 185 | 41% | 実施 |
東京都 | 2000 | 2518 ※ | 126% | 実施 |
神奈川県 | 1152 | 221 | 19% | 実施 |
新潟県 | 400 | 27 | 7% | 実施 |
富山県 | 300 | 101 ※ | 34% | 実施 |
石川県 | 170 | 103 | 61% | 実施 |
福井県 | 131 | 18 | 14% | 実施 |
山梨県 | 80 | 7 | 9% | 実施 |
長野県 | 300 | 26 | 9% | 実施 |
岐阜県 | 458 | 21 | 5% | 実施 |
静岡県 | 200 | 26 | 13% | 準備中 |
愛知県 | 500 | 95 | 19% | 実施 |
三重県 | 171 | 10 | 6% | 準備中 |
滋賀県 | 113 | 29 | 26% | 実施 |
京都府 | 252 | 71 | 28% | 実施 |
大阪府 | 1100 | 381 | 35% | 実施 |
兵庫県 | 509 | 130 | 26% | 実施 |
奈良県 | 240 | 19 | 8% | 実施 |
和歌山県 | 124 | 11 | 9% | 準備中 |
鳥取県 | 322 | 2 | 1% | 準備中 |
島根県 | 253 | 12 | 5% | 実施 |
岡山県 | 117 | 6 | 5% | 準備中 |
広島県 | 257 | 41 | 16% | 実施 |
山口県 | 384 | 4 | 1% | 確保 |
徳島県 | 130 | 0 | 0% | 確保 |
香川県 | 43 | 7 | 16% | 確保 |
愛媛県 | 70 | 5 | 7% | 実施 |
高知県 | 74 | 5 | 7% | 実施 |
福岡県 | 430 | 102 | 24% | 実施 |
佐賀県 | 120 | 15 | 13% | 実施 |
長崎県 | 102 | 8 | 8% | 確保 |
熊本県 | 312 | 22 | 7% | 確保 |
大分県 | 258 | 6 | 2% | 実施 |
宮崎県 | 106 | 5 | 5% | 実施 |
鹿児島県 | 253 | 3 | 1% | 準備中 |
沖縄県 | 173 | 39 | 23% | 実施 |
※ホテル・自宅療養者含む
NHKでは、全国の放送局を通じて5月11日時点の新型コロナウイルスに対応する病床や入院患者の数などについて都道府県に取材しました。
それによりますと、「新型コロナウイルスの患者が入院するために確保している病床の数」は、全国合わせて1万4700床あまりで、4月27日に行った前回の調査と比べて、2100床あまり増えました。
これに対して、現在の「入院患者数」は、前回よりおよそ1400人減って、およそ4900人でした。
さらに、「宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人」も前回と比べて1200人近く減って26都道府県でおよそ1250人となりました。
その結果、都道府県別に「確保できている病床数」に対して「入院患者や入院などが必要な人の数」が8割を超えているのは、前回の3都道県から今回は東京都のみとなりました。
ほかに5割を超えたのも、およそ7割の北海道、およそ6割の石川県だけで、病床がひっ迫している状況はさらに緩和されました。
その一方、「集中治療室などでの治療が必要な重症の患者に対応できる病床の数」を聞いたところ、16の県は非公表、または集計中で分からないとしましたが、全国で合わせておよそ1700床確保されていて、入院している重症患者はおよそ290人でした。
このうち、北海道では、札幌市で重症者用に確保している32の病床に対して、23人が入院していておよそ7割が使われている状態にあります。
さらに、医療体制について懸念していることを聞いたところ、感染拡大の第2波への備えに不安があることや、対応が長期化し医療従事者の疲労がピークに達しているなどといった声が出ています。
また、多くのところが、患者の治療にあたる医療従事者に対する偏見や差別があることや、引き続き、医療従事者、そして、医療用のマスクやガウンなどの確保の難しさを懸念として挙げています。
感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「医療体制のひっ迫状況が緩和されてきているのは、全体の感染者数が減少傾向にあるからこそだ。ただ、今後、人の移動が多くなれば患者が少なかった地域でも増加し、重症患者も増えるおそれがある」と指摘し、引き続き、感染者の増加を抑えるため、感染対策を徹底するよう呼びかけています。
そして、「重症患者は入院が長期にわたり、医師や看護師、それに臨床工学技士などの治療に当たる多くの医療スタッフに加え、治療を受けたあとのリハビリを支えるスタッフも必要となる。自治体は、こうしたことを考慮して、医療機関と協力しながらスタッフや病床の確保など、医療体制の整備をゆるめることなく進める必要がある」と話しています。