人出は? ツアーは? 飲食店は?
東京 4回目の緊急事態宣言期間に

2021年7月12日

▽「駅の様子はいつもと全然変わりません」
▽「できるだけ在宅で仕事するようにしたいと思います」
▽「宣言に慣れてしまい、どれだけ意味があるのか疑問に思います」
東京駅周辺では7月12日朝、勤務先に向かう多くの人たちの姿が見られ、こうした声が聞かれました。東京オリンピックの開幕が迫る中、東京都は4回目の緊急事態宣言の期間に入りました。実際の人出はどうだったのか、そして影響が深刻な飲食店や観光業界などは宣言初日をどのように迎えたのか、一日の動きをまとめました。

東京 4回目の“宣言”期間に 沖縄も延長

東京都は7月12日から4回目の緊急事態宣言の期間に入り、沖縄県でも宣言が延長されました。また埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県ではまん延防止等重点措置が延長され、期間はいずれも8月22日までとなります。

8:00ごろ 東京駅. 「慣れた」「宣言に意味があるのか…」

宣言初日の朝の様子はどうだったのか。東京駅付近では勤務先に向かう多くの人たちの姿が見られました。
・男性(67歳)
「月曜日ということもあって駅の様子もいつもと全然変わりませんし、電車を利用する人も減っているようには見えませんでした。緊急事態宣言に慣れてしまっているという印象です。テレワークも取り入れていますが限界があると思います」

・女性(55歳)
「人の数はいつもと全く変わらず緊急事態が初めて出された2020年4月とは全然違いますし、緊急という雰囲気ではないように思います。会社でテレワークの徹底が呼びかけられているので、できるだけ在宅で仕事するようにしたいと思いますが、こういった状況がいつまで続くのかが不安です」

・女性(25歳)
「街の様子を見ても人の数は変わっていないように感じました。緊急事態宣言に多くの人が慣れてしまっている中で、宣言にどれだけ意味があるのか疑問に思います」

8:00ごろ 沖縄 那覇. 「朝の人出は変わらない」

一方、沖縄県でも那覇市の中心部、モノレールの県庁前駅周辺でふだんどおり通勤や通学をする人たちの姿が見られました。
・女性(40代)
「朝の人出はこれまでとあまり変わらないような気がします。宣言がこれだけ長く続いているので、生活の変化はあまり感じられないです」

・男性(40代)
「宣言の延長はしかたがないのかなと思います。ただ、海水浴場など子どもたちを遊ばせる場所が閉まったままなので、これから夏休みに入る中、子どもたちを退屈させないようにするのが大変です」

・ネパール人女性(20代)
「長引く緊急事態宣言の影響でシフトを減らされました。アルバイト代で日本語学校の学費も払っているので生活が大変です」

人出は先週比1%減 宣言ごとに増加も

緊急事態宣言の初日の7月12日、ビッグデータを使って東京駅付近の朝の人出を分析しました。その結果、先週の月曜日と比べて1%の減少とほとんど変化が見られませんでした。

NHKは、NTTドコモが携帯電話の基地局からプライバシーを保護した形で集めたビッグデータを使って、7月12日午前8時台のJR東京駅付近の人の数を分析しました。その結果「まん延防止等重点措置」が適用されていた先週の月曜日の同じ時間帯と比べて1%の減少と、ほとんど変化は見られませんでした。

一方、2020年4月からの1回目と、2021年1月からの2回目、それに2021年4月からの3回目の宣言の期間中の平日の月曜平均と比べると、いずれも増加しています。1回目を40%、2回目を17%、3回目を5%それぞれ上回り、宣言を重ねるごとに人出が増えている状況がうかがえます。

このほか
▽2021年5月から出されている宣言が延長された沖縄県や
▽まん延防止等重点措置が延長された大阪、神奈川、千葉、埼玉についても
主要な駅で朝の人出を分析し、先週の月曜日と比較しました。
その結果
▽横浜駅と埼玉の大宮駅で2%減少
▽千葉駅で1%減少したほか
▽那覇市の県庁前駅と大阪梅田駅は増減なしでした。

10:00ごろ 「はとバス」ほぼすべてのツアー運休で対応

東京都に4回目の緊急事態宣言が出されオリンピックも無観客となったことで、観光業界では期待していた需要が見込めず二重苦に陥っています。

東京 大田区に本社がある老舗バス会社の「はとバス」は、東京都が宣言の期間に入るのを受けて、都内を発着するほぼすべてのツアーを運休することになり、キャンセルなどの対応に追われています。

会社では宣言が出されるたびにすべてのツアーを運休していましたが、今回は感染対策を施した屋根のないオープン型のバスで途中下車せずに都内の観光地を巡る1コースだけは、運行を継続するということです。

また、オリンピックで1都3県の会場が無観客となったことで、大会期間中に期待していた観光需要も見込めなくなりました。会社によりますと宣言が断続的に出されているため、ことしに入ってから110台のバスの多くがツアーのために稼働できない状態が続いています。

ワクチンの大規模接種会場への送迎バスを運行しているほか、オリンピック・パラリンピックの大会期間中に会場への関係者の輸送を担う計画もありますが、社員の一部は休業せざるをえない状況だということです。

はとバス広報室の本田寛奈さんは「ワクチン接種が始まり夏休みに旅行需要が回復するかと思っていたところで再び緊急事態宣言が出たので、非常に悲しいです。感染状況を踏まえればしかたないとは思います」と話していました。

正午ごろ スポーツバーは落胆…

東京都は、酒やカラオケ設備を提供する飲食店などに対して休業を要請します。提供しない場合は午後8時までの時短営業を要請します。6月21日以降、人数や滞在時間を制限して酒の提供を認めていましたが3週間で再び提供停止の要請となり、対策の実効性をどう高めるかが課題です。今回も要請に応じるというスポーツバーからは落胆の声が聞かれました。

渋谷区のスポーツバー「Fields」は4回目の緊急事態宣言でも都の要請に応じ、酒の提供はせずに感染防止対策を行ったうえで午後8時までに時間を短縮して営業します。

本来は夜間の営業を中心に酒を提供し、スポーツ中継を見て楽しんでもらう店ですが、売り上げが通常の4割程度に減る中、協力金のほか食事のテイクアウトを始めるなどして何とか営業を続けてきました。

こうした中、店ではオリンピックを起爆剤に売り上げを回復したいと観戦用の大型テレビを1台増やしたほか、アクリル板の設置や黙食やマスク着用の呼びかけなど感染対策にさらに力を入れてきました。

大会開幕までの日数の日めくりパネルを設置して店を盛り上げようと考えていた店長の田中守さんは、4度目の宣言により、スポーツバーとして客を十分に楽しませることができないと落胆したと言います。

田中さんは「オリンピックが起爆剤になるとの希望を抱いてこれまで要請に協力してきたが、オリンピック期間中も酒が出せず午後8時までの営業となると、お客さんに観戦の途中で帰ってもらうことになりスポーツバーとしては忍びない。しかし、感染拡大を防ぐために今回も要請に応じます」と話していました。

東京 7月12日の感染確認は502人

都内では7月12日、新型コロナウイルスへの感染が新たに502人確認され、1週間前の月曜日より160人増えるとともに23日連続で前の週の同じ曜日を上回りました。また、インドで確認された「L452R」の変異があるウイルスへの感染も87人確認され、このウイルスへの感染確認は合わせて1000人を超えて1014人になりました。

一方、宣言が延長された沖縄県では新たに28人の感染が確認されました。

デパート各社の対応

東京都に緊急事態宣言が出されたことを受けたデパート各社の対応です。
▽三越伊勢丹▽高島屋▽そごう・西武▽松屋▽東急百貨店▽東武百貨店▽小田急百貨店▽京王百貨店
各社は都内の店舗の営業時間は変更せず、レストランなどでの酒の提供を中止するということです。

大手居酒屋チェーン各社の対応

大手居酒屋チェーン各社の対応です。
▽外食チェーンのコロワイド
国や東京都の要請に従うとしていて、都内の焼き肉店やレストランでは営業時間を短縮するとしています。また「甘太郎」など都内にある居酒屋180店舗余りを休業します。

▽「白木屋」など展開するモンテローザ
都内にある200店舗余りを休業します。

▽「庄や」などを展開する大庄グループ
160店舗余りの居酒屋を休業します。

▽ワタミ
都内にある「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」など70店舗の居酒屋を休業します。

▽「串カツ田中」
直営店のおよそ60店舗の休業を決め、このうち一部の店舗では酒の提供は行わずに土日祝日だけ営業を続けるということです。

外食チェーンの対応

外食チェーン各社の都内の店舗についての対応です。
<ファミリーレストラン>
▽最大手の「すかいらーくホールディングス」が展開する「ガスト」や「バーミヤン」
午後8時に閉店しアルコールの提供を終日、休止します。

▽「サイゼリヤ」
▽「デニーズ」
▽「ロイヤルホスト」や「てんや」を展開する「ロイヤルホールディングス」
店舗は午後8時に閉店しアルコールの提供を休止するとしています。

<牛丼チェーン>
▽「すき家」▽「吉野家」▽「松屋」
店内での飲食は午前5時から午後8時までとし、それ以外の時間帯はテイクアウトや宅配のみの営業を行うとしています。アルコールの提供はいずれも休止します。

官房長官「協力金の支給を迅速化 理解得られるよう努力」

東京都が4回目の緊急事態宣言の期間に入ったことについて、加藤官房長官は、休業要請などに応じた飲食店に対する協力金の支給を抜本的に迅速化することで感染対策に協力を得ていきたいという考えを示しました。

加藤官房長官は記者会見で「首都圏で新規感染者数が明らかに増加に転じていることや、夏休みやお盆を迎え多くの人が地方へ移動することが予想されること、特に東京の感染拡大は全国にも広がりうることを踏まえて先手先手で予防措置を講じるということで、東京都に緊急事態宣言を発出した」と述べました。

そのうえで、休業要請などに応じた飲食店への協力金について「『なかなか支給が行われていない』『遅れている』という指摘もある。今回、協力金の先渡しが可能になる仕組みや審査の簡略化など必要な環境整備を行うこととし、協力金の支給を抜本的に迅速化し事業者の皆さんのご理解を得られるよう努力をしていきたい」と述べました。

公明 山口代表「第5波招かぬ取り組みが問われる」

公明党の山口代表は都内で行った講演で「第5波を招かないような取り組みが問われている。感染を誘発する要因を少なくしリスクを下げるよう徹底することが大事だ。たび重なる緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置によって特に飲食関係の事業者は大変苦しんでおり、支援金制度などを迅速に実行していくべきだ」と述べました。

共産 小池書記局長「宣言の効果あげるには五輪中止」

共産党の小池書記局長は記者会見で「4度目の緊急事態宣言を出さざるをえなくなった政府の責任は重大だ。宣言の効果をあげるために必要なのはオリンピックの中止だ。国民に自粛を要請しておきながら、人流が増える大会をやるのは真逆のメッセージになる。また、事業者に協力してほしいのなら協力できるだけの支援が何より必要だ」と述べました。

また、国が酒類の販売事業者に対し、宣言の対象地域などでは酒の提供を続ける飲食店と取り引きしないよう文書で要請したことについて「要請と言いながら実質的には強制力がある。営業の自由を脅かすもので撤回すべきだ」と述べました。