新型コロナが直撃 6年ぶり下落の路線価
観光地や商業地で顕著

2021年7月1日

相続税などを計算する際の基準となる「路線価」。
2021年は、全国の調査地点の平均が6年ぶりに前の年を下回りました。新型コロナウイルスの影響で、観光地や商業地で下落が目立っていて、専門家は「飲食店を中心とした店舗が撤退し、代わりに入る店も出てこないという状況が原因と考えられる」と見ています。

路線価は、国税庁が1月1日時点で算定した、主な道路に面した土地の1平方メートル当たりの評価額で、相続税や贈与税を計算する基準となります。

2021年の路線価は1日、公表され、調査対象となった全国およそ32万地点の平均は2020年に比べて0.5%下がり、6年ぶりに前の年を下回りました。

39都府県で2020年を下回る

都道府県別にみると最も下げ幅が大きかったのは、静岡の1.6%で、次いで岐阜と愛媛の1.4%でした。

また、東京が1.1%、大阪が0.9%下がって、いずれも8年ぶりの下落に転じるなど、39の都府県で2020年を下回りました。

上昇したのは都市部の再開発などが進んだ、北海道、宮城、千葉、福岡、佐賀、熊本、沖縄の7道県で、前の年より高くなった都道府県の数は、2020年の3分の1となりました。

全国最高額は4272万円 東京 銀座5丁目

地点別で全国で最も高かったのは、東京 銀座5丁目の銀座中央通りの4272万円でした。
36年連続での全国最高額ですが、2020年に比べて7.0%下がり、9年ぶりの下落となりました。

下げ幅が大きい地点

下げ幅が大きかった地点は、
▽大阪市中央区の心斎橋筋の26.4%、
▽岐阜県高山市の上三之町下三之町線通りの12.7%、
▽奈良市の大宮通りの12.5%、
▽東京 台東区の雷門通りの11.9%などで、
各地の観光地や商業地で下落が目立ちました。

国税庁は、新型コロナウイルスの影響を受けて外国人を中心に観光客が減り、飲食店の閉店が増えたことなどが原因だとしています。

8年連続上昇の千葉県

一方、関東で唯一上昇したのが千葉県で、8年連続の上昇となりました。

東京に近く割安感がある市川市や船橋市などで住宅需要が高まり、2020年に比べて0.2%高くなりました。

北海道 6年連続上昇も上げ幅縮小

6年連続で上昇した北海道。
しかし、上げ幅は1.0%となり、3.7%の上昇だった2020年に比べ大幅に縮小しました。

“高級リゾート地” ニセコ地区は

北海道でも高級リゾートとして知られるニセコ地区。

2020年まで上昇率が6年連続で全国で最も高かった倶知安町山田の「ホテルニセコアルペン前」は、2021年は1平方メートル当たり72万円と2020年と同じでした。

この地区の不動産を扱っている会社は、感染拡大で海外投資家の来日が難しくなったことが、土地取り引きの減少につながっているとみています。

ニセコ地区を中心に不動産の売買や仲介をしている小樽市の会社は、感染拡大に伴って顧客の海外投資家の来日が難しくなったと実感しています。

海外投資家は、不動産を購入する前に周辺の環境などの視察を欠かさないことから、2020年2月からこれまでの1年余りの間に、海外投資家との契約はほとんどなかったといいます。

ニセコ地区の不動産を扱う会社「ほぼ新規の取引はゼロ」

会社の石井秀幸社長は「ほぼ新規の取引はゼロの状態になった。北海道に入ってくることができないというのが最大の理由だ。不動産という高額のものを買うとするならば、現地の視察は必要になってくるので、そのためにゼロになった」と話しています。

一方で、感染の拡大が収束したあとには、ニセコ地区を中心とした北海道の不動産の取り引きは再び注目されると見ています。

石井社長は「『密』にならない、豊かな自然資源がある、四季がはっきりしているなど、魅力があるのはアジアの中で北海道だとアジアの投資家が言いだした。とにかく今、『安かったら、下がったら投資したい』と言っている」としたうえで、情報発信を続けて将来的な取り引きにつなげたいとしています。

専門家「観光客に依存しているエリア 大きなダメージ」

不動産調査会社「東京カンテイ」の井出武上席主任研究員は「新型コロナウイルスの感染拡大で、道頓堀や浅草、奈良など観光客に依存しているエリアは大きなダメージを受けて、下げ幅が大きかった。飲食店を中心とした店舗が撤退し、代わりに入る店も出てこないという状況が原因と考えられる」と話しています。

一方、住宅地は比較的影響が小さく、「宇都宮や福岡など長期間再開発を行ってきた地域では上昇している。千葉の市川市や船橋市、さいたま市などではマンションの建設などが進み、東京に比べて価格が安いため需要があり、強含んでいる」と指摘しています。

今後の動向「ワクチン接種進み 全体的に上向き傾向」

また、今後の動向については「新型コロナウイルスのワクチン接種も進み、今回のように大きく下落することはないと考える。海外からの観光客はすぐには戻らないかもしれないが、やがて回復するだろう。商業地もオフィス需要が戻りつつあり、全体の傾向としては上向いてくるだろう」と話しています。