政府の新型コロナ分科会
新型コロナ
特別措置法改正で財政支援や罰則で意見
政府分科会

2021年1月8日

新型コロナウイルス対策を検討する政府の分科会が開かれ、特別措置法の改正に向けて、営業時間の短縮要請に応じた事業者への財政支援や応じない場合の罰則といった論点をめぐって意見が交わされました。

政府の分科会には西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣らが出席しました。

この中で西村大臣は緊急事態宣言について「飲食の機会を中心に対策を講じ、実効性を高めるため、飲食につながる人の流れの制限が大きなポイントだ」と述べ、映画館などにも午後8時までの営業時間の短縮や収容人数の制限を働きかける方針を示しました。

そのうえで西村大臣は特別措置法の改正に向けた論点として、営業時間の短縮要請に応じた事業者への財政支援や応じない場合の罰則のほか、宣言の前からより実効性の高い措置を講じられるようにすることなどを挙げました。

会合には飲食業の関係団体なども出席し、こうした論点をめぐって意見が交わされました。

一方、田村大臣は「人の動きが減らないことや、冬場に入った中での要因もあり、さらなる注意喚起をしていかないといけない。通常国会に感染症法と検疫法の改正案の提出を予定しており、特別措置法の議論を参考にしながら早期成立を目指したい」と述べました。

飲食店業界代表「飲食店だけ悪者扱いは不本意」

分科会に出席した、飲食店などでつくる全国生活衛生同業組合中央会の伊東明彦 専務理事は、記者団に対し「飲食店だけが悪者のような受け止め方をされていることは非常に不本意だ。感染防止策も一生懸命やっているし、ガイドラインも守っている。ただ、罰則については、真面目にやっている店と、そうでない店で不公平感が出てくるのは防がないといけないのでやむを得ない」と述べました。

経済の専門家「罰則と金銭的な補償をバランスよく」

東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹は、記者団に対し「飲食業からは『私権の制限はなるべく慎重にしてもらい、周辺の業界も含めて手厚く補償をしてもらいたい』という要望が出されていたが、政策をしっかりと実現させるためにも罰則と金銭的な補償をバランスよく法律に書いていくべきだ」と述べました。

西村経済再生相「おおむね了解をいただいた」

西村経済再生担当大臣は、記者会見で「分科会での議論を総論で申し上げると、特別措置法の第5条にある『権利の制限は必要最小限とする』という基本的人権の尊重は、しっかり守ることを前提に、実効性を上げるための一定の強制力を持つ措置について、おおむね了解をいただいたと思う。来週早々には、法案の方向性や概要を示せるよう、週末も含めて、作業を急ぎたい」と述べました。

尾身会長 「特措法改正に向けた考え提出したい」

政府の分科会の尾身茂会長は、会合の後で開かれた記者会見で特別措置法の改正に向けた議論について、「かなり深い議論をしないといけないが、関係者で議論を進めて、分科会としてなるべく早くしっかりした考えを提出したい」と述べ、今後、提言を出す考えを示しました。

この中で、尾身会長は、感染症対策を進めるために、迅速に情報を共有する仕組みについても議論する必要があるとしたうえで「個人情報の扱いが自治体によって違うほか、国と自治体の役割分担が不明確な部分がある。感染者の調査で個人情報を守りつつも適切に情報の収集が進められる制度を作ることも必要だ。専門家の間では、日本の感染症対策上、乗り越えなくてはならない問題だと認識されているが、この状況をぜひ知って、国会でも議論してもらいたい」と訴えました。

東北大学 押谷仁教授「不自然な増え方」

政府の分科会のメンバーで東北大学の押谷仁教授は、分科会の会合のあとの記者会見で、東京で2日連続で2000人を超えるなど感染者の報告が急速に増加していることについて「不自然な増え方をしていて、背景にどんな要因があるのか精査する必要がある」と述べました。

この中で押谷教授は、直近の感染状況について「感染の報告が急速に増えている。大みそかに東京都で急激に増えるなど、疫学の観点から見ると、増え方は異常だ。東京都では1000人未満だったところから、10日ほどで2000人を超えるというのは、ちょっと考えにくく不自然な増え方だと考えている」と述べました。

さらに、東京都だけでなく大阪府でも18歳から39歳の若い世代の感染が増えてきているとして、「年末年始に人出が多かったことは影響している。ただ、休みの間に検査されていたケースがまとめて報告されていることも要素の1つではないか。また、年末に政治家の方が亡くなられたり、自宅療養者が亡くなったという報道がかなり増えた影響で、これまで検査に応じてもらえなかった若い人たちも検査を受けるようになり、感染者の報告数の増加につながったということも考えられる。背景に何があるのか、今後の動向を見極めないといけない」と指摘し、急激な増加の原因を分析する必要があるとする考えを示しました。

先月以降のクラスター 飲食関連が20%

先月以降、全国各地で報告されている感染者の集団=クラスターは、感染が広がりやすい飲食関連が20%ほどに上ることが政府の分科会で報告され、専門家は、飲食の場での感染対策について改めて注意喚起が必要だとしています。

このデータは、東北大学の押谷仁教授がきょう開かれた政府の分科会で示しました。

それによりますと、先月以降、全国で報告された5人以上が感染したクラスター807件の特徴を分析したところ、最も多かったのは医療・福祉施設の361件で率にしておよそ45%、次いで飲食関連が156件でおよそ19%、教育施設が123件でおよそ15%、職場関連が95件でおよそ12%、その他が72件でおよそ9%でした。

このうち、飲食関連のクラスターの内訳を詳しく見ると、接待を伴う飲食店が77件でおよそ49%、飲食店が39件で25%、カラオケが19件でおよそ12%、会食が16件でおよそ10%、ホームパーティーが5件でおよそ3%で、接待を伴う飲食店が半数を占めています。

また、教育施設のクラスターでは小学校が9件でおよそ7%、中学校が14件でおよそ11%、高校が41件でおよそ33%、大学が20件でおよそ16%などとなっていて、高校と大学でおよそ半数を占めるほか、部活動に関連していることが判明しているクラスターが19件とおよそ15%になっています。

この結果について、押谷教授は「医療・福祉施設でのクラスターが多いが、こうした施設から地域に広がることは少ないことがわかっている。これを除くと、飲食関係が3分の1以上を占めていることに注目すべきで飲食の場での感染対策は非常に重要だ。また、飲食店だけでなく、若者が自宅で会食する“宅飲み”のような場での感染も見えてきていて、こうした情報を元にした注意喚起が必要だ」と話しています。