5~11歳の子どもへのワクチン接種開始へ
知っておきたいこと

2022年2月21日

5歳から11歳の子どもへの新型コロナウイルスのワクチン接種は、早い地域では2月中にも接種が始まる見通しです。

「子どもにも早くワクチンを打たせたい」
「副反応強い 子どもになんて絶対打たせない」
ネット上ではさまざまな声が聞かれました。

気になる副反応や接種の進め方はどうなるのか、接種による利益とデメリットをどう考えればいいのか、知っておきたい情報をまとめました。

5歳~11歳の接種 2月中にも開始へ

5歳から11歳の子どもへの新型コロナウイルスのワクチン接種は2月21日、正式に公的な接種に位置づけられ今週から医療機関や自治体にワクチンが配送されます。早い地域では2月中にも接種が始まる見通しです。

有効成分量は12歳以上の3分の1

子どもの接種は12歳以上を対象にしたワクチンに比べると1回に接種する有効成分の量は3分の1で、3週間の間隔で2回接種を受けます。学校での集団接種は推奨せず、自治体による集団接種か小児科のクリニックなどでの個別接種とする方針です。

“努力義務ではない”

オミクロン株に対する有効性のデータが十分でないことなどから接種は現時点では12歳以上のように接種を受けるよう努めなければならないとする「努力義務」とはなっていません。

接種には保護者の同意が必要で、厚生労働省は有効性や安全性のデータを踏まえて子どもと保護者が十分に話し合い、かかりつけの医師とも相談して判断するよう呼びかけています。呼吸器などに基礎疾患がある子どもは重症化リスクが高いことから接種を受けてほしいとしています。

ネット上では…

子どもへの接種について、ネット上では子育て中とみられる人たちのさまざまな声が聞かれました。

●接種させたいと考えている人
「私がいつコロナウイルスをもらってきてもおかしくないところで働いているので、子どもにも早くワクチンを打たせたい」
「ワクチンを打って何かなるリスクより、病気そのものにかかった後のリスクの方が圧倒的に高い」

●接種させたくないという声
「子供に対しては接種に反対です。副反応のリスクの高さはきちんと考えたら分かるはず。守ってあげられるのは親だけだと思う」
「副反応強いのは身を持って体験しているから子どもになんて絶対打たせない」

●接種すべきかどうか迷っているとの意見も
「感染しても症状が軽い可能性の方が高いかなと思える。子供へのワクチン接種は数年様子見たい」
「接種する気満々だったんだけどネットで重い副反応の情報を見て、むしろ打たないほうがいいのではと悩んでしまう」

ファイザー臨床試験“発症防ぐ効果 90.7%”

アメリカやスペインなどで5歳から11歳までの2200人余りを対象に行われたファイザーのワクチンの臨床試験では、発症を防ぐ効果は90.7%で接種後に出た症状もおおむね軽度から中程度で安全だと報告されています。

臨床試験で大人のワクチンの3分の1の量に当たる10マイクログラムを3週間あけて2回接種する1500人余りと、ワクチンに似せた物質、プラセボを投与する750人で効果や安全性を確認したところ
▽中和抗体の値は16歳から25歳にワクチンを接種した時と同じ水準まで上昇し
▽2回の接種を受けてから7日以上たったあと新型コロナに感染して発症したのはワクチンを接種した人で3人、プラセボを投与した人で16人で
発症を防ぐ効果は90.7%だったとしています。

●接種後 痛み・けん怠感なども“ほとんどは軽度から中程度”
安全性について接種後には接種した部位の痛みや倦怠感など症状が出たケースが報告されていますが、ほとんどは1日から2日ほどで収まり軽度から中程度だったとしています。

具体的な症状は
▽接種した部位の痛みが1回目の接種後で74%、2回目の接種後で71%
▽けん怠感が1回目で34%、2回目で39%
▽頭痛が1回目で22%、2回目で28%
▽接種部位の赤みが1回目で15%、2回目で19%
▽接種部位の腫れが1回目で10%、2回目で15%
▽筋肉痛が1回目で9%、2回目で12%
▽寒気が1回目で5%、2回目で10%
▽38度以上の発熱が1回目で3%、2回目で7%などでした。

解熱剤を服用した人は1回目で14%、2回目で20%だったということです。

アメリカ 5歳~11歳接種 副反応の報告

アメリカでは2021年11月から5歳から11歳を対象にした接種が始まっていて、CDCはおよそ870万回の接種が行われた2021年12月19日の時点で接種後の有害事象として報告された4249件についての分析結果を公表しています。

アメリカでは誰でも、ワクチンによるものか分からない場合でも接種後に出た症状を報告できる仕組みになっていて、報告されたうちの97.6%に当たる4149件は重いものではなかったとしています。具体的には次のとおりです。
▽おう吐が316件で率にして7.6%
▽発熱が291件で7%
▽頭痛が255件で6.2%
▽失神が255件で6.2%
▽めまいが244件で5.9%
▽けん怠感が201件で4.8%など

一方、重い症状として報告された100件のうちでは
▽発熱が29件で29%
▽おう吐が21件で21%
▽胸の痛みが12件で12%
などとなっています。

このほか
▽心筋炎と診断された人が11人いて全員が回復したということで、心筋炎の起きる頻度は12歳以上と比べて大幅に下がっていると紹介しています。

さらに接種後に亡くなった人は2人いましたが、2人とも複雑な病歴があり接種の前から健康状態が悪かったということで、死亡と接種との因果関係を示すようなデータはないとしています。

米CDC“安全で有効性高く 利益が上回る”

ワクチンの接種は接種による効果などの利益が副反応などのリスクを上回った場合に推奨され、5歳から11歳の子どもに対するワクチン接種についてアメリカのCDC=疾病対策センターは安全で有効性も高く利益が上回るとして推奨しているほか、カナダやフランスなどでも推奨しています。

一方、イギリスやドイツは重症化リスクが高い子どもや免疫の働きが弱くなっている人と同居している子どもなどは接種が可能としています。

●利益とリスク
CDCのワクチンに関する委員会では2021年11月、子どものワクチン接種の利益として
▽ワクチンによって新型コロナウイルスへの感染や重症化を防ぐ効果があることや
▽周りに感染を広げないこと
それに
▽学校などで安心して過ごせることなどが示された一方
リスクとしては
▽短期間の副反応が起きることや
▽ワクチンによる心筋炎など、ごくまれな副反応が起きるかどうかなどが
あるとしています。

「メリットとデメリットを考えなければいけない」

小児科医でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「子どもがワクチンを接種した際のメリットと副反応のデメリット、そして感染した場合のデメリットを考えなければいけない」と話しています。

子どもがワクチンを接種するかどうかの判断材料としては「子どもが感染すると軽症だったとしても自宅療養が続くなど、身体的にも精神的にもつらい思いをする。ワクチンは感染を100%防ぐものではないが少なくとも軽症で済ますことができる可能性が高い。またワクチン接種で子どもから親や同居している祖父母など家庭内に持ち込みにくくなるなどのメリットが考えられる。学習塾や習い事のように家族以外の人と密に接することが多い場面は感染が起きやすく、ワクチンを接種してある程度予防する必要があるかもしれない」と述べました。

そのうえで「重症化しやすい基礎疾患のある子どもは積極的に進める必要がある。ただ、おしなべて全員に接種を進める必要があるかというと専門家の間でも議論が分かれている。子どもの感染が増えていても重症化する人が少ないのなら接種しなくてもいいのではという発想もあるかもしれないが、誰が重症化するかは事前には分からない」と話しました。

そして「ワクチンは強制ではなくみずから理解して決めることが重要で、正しい情報を得て自分で判断するという科学的な見方を身につけてほしい」と述べました。

保護者の考えは…

接種の対象になった5歳から11歳の子どもを持つ保護者は、接種をどのように考えているのでしょうか。

接種を希望する?<東京 江東区>

東京 江東区は区内に住むワクチン接種の対象になった5歳から11歳の子どもの保護者で、区の公式LINEに登録している人を対象に、2月10日から13日にかけて接種についてアンケートを行い2000人余りから回答を得ました。

接種を希望するかどうかをたずねたところ
▽「なるべく早い時期での接種を希望する」が31.3%
▽「様子を見て問題なければ接種したい」が48.7%
▽「接種を希望しない」が20%となりました。

接種に不安は?<東京 江東区>

接種に不安があるかという質問については
▽39.6%が「大いに不安がある」
▽49.7%が「少し不安がある」と回答し
多くの人が不安を感じながら接種を検討していることがわかりました。

東京23区では…

子どもへの接種をどう進めるか東京23区に聞きました。

【予約の受け付け】
▽15の区が2月中、8つの区が3月上旬までに開始

【実際の接種開始】
▽足立区で2月26日から
▽墨田区で2月28日から
▽ほかの21の区では3月からの予定

【集団接種と医療機関での個別接種の組み合わせ方】
▽千代田区では2か所の集団接種会場のみ
▽中央区、中野区、北区、板橋区、葛飾区、江戸川区の6つの区では診療所などの個別接種のみで対応する
▽ほかの16の区では集団接種と個別接種を組み合わせる