オミクロン 小学校クラスター急増
教育現場で起きていること…

2022年2月4日

新型コロナウイルスのオミクロン株の感染急拡大が続き、2月4日も全国の感染確認が9万人を超えました。そして今、“ある変化”が起きています。

デルタ株が広がった2021年夏の第5波では感染者は20代や30代で比較的多かったのが、今回の感染の第6波ではその主体が子どもに移ってきています…

「季節性インフルエンザに近い広がり方」

●東邦大学 舘田一博教授(厚生労働省専門家会合のメンバー)
「オミクロン株は感染性の高さや潜伏期間の短さを考えると1人から2人、2人から4人という形で面的に広がる傾向がある季節性のインフルエンザに近いような広がり方をしていて、それが子どもたちの間で起きているのではないか。ワクチン以外にも何とかして子どもたちでの感染拡大を防ぐ方策を考えていかなければいけない」

●厚生労働省専門家会合 脇田隆字 座長
「年末からことしの成人式にかけて20代から30代の感染が拡大したが、感染の場が学校や家庭などにも移行して特に10歳未満が感染する割合の増加が続いている。ただ学校は子どもの教育の確保のためや働く保護者にとって子どもをみてもらえる場所だということから社会活動維持のためにも必要であり、いかに維持しながら対策を行っていくかが重要だと考えている」

“感染の主体 若い世代から子どもに移ってきている”

1月の新規感染者数を年代別に見てみると、10代以下が4分の1以上を占めました(感染者情報を集約する厚生労働省のシステム「HER-SYS」による)。
▽10代以下が27.1%
▽20代が23.9%
▽30代が15.3%
▽40代が14.0%
▽50代が9.2%
▽60代以上が10.7%

デルタ株が広がった2021年夏の感染の第5波では10代以下は、2021年7月が14.6%、2021年8月が19.2%、感染が収まり始めた2021年9月に23.1%で、20代や30代の感染が比較的多かったのが、今回の感染の第6波ではより低い年齢層の感染が目立つようになっています。
感染の主体はこれまで多かった若い世代から子どもに移ってきています。

クラスター “子どもに関係する場所で増えている”

感染者のクラスターが起きた場所も子どもに関係するところで増えています。1月1日から1月28日までの4週間にクラスターが起きた場所は以下のとおりです(内閣官房がまとめた資料による)。
▽「学校・教育施設」で703件
▽「高齢者福祉施設」が338件
▽「児童福祉施設」が330件
▽「企業など」が269件
▽「飲食店」が202件
▽「医療機関」が162件など

「学校・教育施設」でのクラスターの増加が目立っていて、1月の1か月間だけでデルタ株が広がった2021年7月から9月までの3か月間の合計(691件)を上回りました。

さらに1月の「学校」でのクラスターの内訳は▽幼稚園・保育園が271件、▽小学校が174件、▽中学校が68件、▽高校が153件、▽大学が51件、▽専門学校が6件、▽不明が193件となっています。

特に小学校でのクラスターは1月1か月間だけで174件で、2021年7月から9月までの3か月間合計の92件の1.9倍になっていて、年齢が低い子どもでのクラスターの発生が多くなっています。

なぜ、子どもで感染広がる?

子どもで感染が広がる背景には、
▽オミクロン株の感染力の高さ、
▽保育園や幼稚園では接触が多く、マスクの着用や距離をとるといった感染対策が難しい、

▽11歳以下ではまだワクチンの接種が行われていないことなどがあると指摘されています。

“学校での感染 家庭に持ち帰り拡大する”

これまで新型コロナウイルスでは子どもが学校などで集団生活する中で感染し、家庭に持ち込まれることで感染が拡大する毎年のインフルエンザと異なり「家庭での感染は大人から子どもに移ることが多い」とされてきました。

しかし2月4日に取りまとめられた政府の分科会の提言では、学校での感染を家庭に持ち帰り家庭内で感染が拡大するケースが見られると指摘しています。

全面休校1100校余 学級・学年閉鎖も

文部科学省は全国の教育委員会を通じて公立学校の全面休校などの状況を調査しました。

1月26日時点で全面休校していたのは
▽小学校は653校
▽中学校は219校
▽高校は127校
▽特別支援学校は40校などで
合わせて1114校、全体の3%となりました。

学級閉鎖や学年閉鎖は全体の13%に当たる4727校で、休業措置をとった学校は全体の6分の1に当たる5841校に上ることがわかりました。

休校の割合を都道府県別に見ると
▽8つの市と町で出校停止などの措置が取られていた島根県が27%と突出していて
次いで
▽大阪府と鳥取県が9%だった一方
▽東京は1%未満でした。

学級閉鎖や学年閉鎖は
▽福岡県が最も多く33%
▽京都府は29%
▽埼玉県が25%でした。

文科省 学校現場の感染対策まとめる

文部科学省はオミクロン株に対応した学校現場の感染対策をまとめ
▽特に感染リスクの高い活動は感染レベルにかかわらず基本的に実施を控えるよう求める一方で
▽感染者が出ていない際の学級閉鎖や休校は子どもたちの学びの保障や心身への影響を踏まえ慎重に検討すべきとし
▽感染により休校する前に分散登校やオンライン学習を組み合わせて対応するよう求めることにしています。

3クラスで学級閉鎖となった小学校では

埼玉県入間市の仏子小学校では1月は3クラスで学級閉鎖となったほか、感染への不安から自主的に登校を控えた子どもは多い時で1日当たり81人と全校生徒の3割に上ったということです。

●“学びを保障” 実技もオンラインで
学校では休校や学級閉鎖になった際や自主的に登校を控えた児童への学びを保障しようと、実技の教科もオンラインで参加できるよう新たな試みを始めています。
2年生の音楽の授業では自宅から参加した児童2人がタブレット端末を通じて教室の子どもと一緒にリズムゲームに参加し、音に合わせてポーズをとっていました。

5年生の体育の授業では走り幅跳びが行われ、三脚にセットされた端末越しにオンラインで参加した児童が校庭で次々とジャンプする友達の様子を見てフォームなど改善点をアドバイスしていました。
(男子児童)

「オンラインで参加した人のアドバイスがわかりやすく飛距離が伸びてうれしかったです。家でも授業が受けられるのはよいと思います」
(女子児童)

「いちばんはみんなでそろって登校して、みんなで楽しい思い出を作れたらと思います」

(仏子小学校 田邊玲校長)
「オミクロン株では子どもの感染も増えていると言われているので引き続き予断を許さない状況だと考えています。オンラインでは体験できない行事や教育活動もあり課題も感じますが、学校は学びに加えて仲間と絆を強めることも大事なので、制限があるかもしれませんが一緒に体験ができる場にしていきたいと思っています」

専門家「試行錯誤している」

千葉大学教育学部 藤川大祐教授
「オミクロン株は潜伏期間が短く機動的に学級閉鎖にし広がらなければすぐに解除する学校も増えている。おととしの長期の全国一斉休校でかなりつらかったという声は聞いていて、学校現場はできるだけ対面で教育活動を進めながら感染を広げないよう試行錯誤している」

・学級閉鎖や休校期間中などのオンラインでの授業の在り方について
「突然休みになることもある中で、短期間でどのようにオンラインの授業を進めるか決められる学校はまだかぎられているのが現状だと思う。日頃からタブレット端末などを使っていないと子どもも教員も混乱することになるのでふだんの授業の在り方が問われてくる」

末松文部科学相“感染対策強化 徹底の方針”

末松文部科学大臣は記者団に対し「特に感染リスクの高い教育活動については感染レベルにとらわれず基本的に控えてほしい」と述べ、学校での感染対策を強化・徹底する方針を明らかにしました。

具体的には合唱や管楽器の演奏、調理実習のほか、部活動などでは密集する活動や近距離で組み合ったり接触したりする運動、それに大きな声を出したり激しく呼吸したりする活動などを控えるよう全国の教育委員会などに通知するとしています。