厚生労働省の新型コロナ専門家会合
新型コロナ専門家会合
“年末に向け接触機会増加など注意必要”

2022年12月14日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、全国では感染者数が増加傾向にあり、今後、多くの地域で増加傾向が見込まれると分析しました。全国で重症者数や死亡者数が再び増加傾向になっていて、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」などへの置き換わりの状況や、年末に向けて接触機会の増加などの影響に注意が必要だとしています。

専門家会合は、現在の感染状況について、全国的に増加傾向にあり、感染拡大が先行した北海道では減少傾向が続いているものの、遅れて拡大した近畿、中国や四国、九州、沖縄では増加のペースが大きくなり、東北や北陸・甲信越も減少傾向から増加傾向に転じているとしています。

また多くの地域で高齢者で感染者数が増加し、全国で重症者数や死亡者数が再び増加傾向になっています。

医療体制については、全国的に病床使用率が上昇傾向となっていて、救急搬送が困難なケースも増え、特に、コロナ以外での救急搬送が困難なケースは2022年夏の「第7波」のピークと同じレベルに達していて、年末年始の救急医療体制の確保に注意が必要だとしています。

そして、今後の感染状況の短期的な予測では、多くの地域で増加傾向が見込まれ、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合が国内でも増加しつつあることや、年末年始で接触機会が増えることなどによる影響に注意が必要だと指摘しました。

実際に、夜間の繁華街の人出は、首都圏や大阪、愛知、福岡など大都市部を中心に増加傾向で、2021年の同じ時期を上回る水準で推移しているとしています。

必要な対策について、専門家会合は、年内にオミクロン株対応のワクチン接種を終えるよう呼びかけ、自分で検査できる抗原検査キットの活用を進めるよう求めています。

さらに、飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、換気の徹底、症状があるときは外出を控えるといった、基本的な感染対策の再点検や徹底を改めて呼びかけました。

12月13日まで1週間の新規感染者数 44都府県で前週から増

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、12月13日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.20倍と増加のペースが上がっていて、北海道と山形県、長野県を除く44の都府県で、前の週から感染者数が増えています。

首都圏の1都3県では、
▼東京都が1.16倍、
▼神奈川県が1.15倍、
▼千葉県が1.22倍、
▼埼玉県が1.18倍と増加が続いています。

関西では、
▼大阪府が1.30倍、
▼京都府が1.31倍、
▼兵庫県が1.34倍と増加が続いています。

東海でも、
▼愛知県が1.18倍、
▼岐阜県が1.21倍、
▼三重県が1.20倍と増加が続いています。

また、
▼宮崎県で1.77倍、
▼熊本県で1.65倍、
▼愛媛県、佐賀県、長崎県、大分県で1.56倍などと、
九州など西日本を中心に44の都府県で増えています。

人口10万人当たりの直近1週間の感染者数は、
▼鳥取県が1112.20人と最も多く、
▼宮城県が1067.07人、
▼福島県が1034.07人、
▼佐賀県が979.49人、
▼新潟県が950.72人、
▼秋田県が950.70人などと多くなっていて、
▼東京都は684.64人、
▼大阪府は563.39人、
▼全国では716.43人となっています。

脇田座長「感染の増加傾向続く可能性高い」

専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は、現在の感染状況について「自然感染による免疫も、ワクチンによる免疫も、時間とともに減っているほか、年末年始でふだん会わない人と会う機会も増えるため、全国的に見れば、感染の増加傾向は続いていく可能性が高い」と指摘しました。

その上で、「インフルエンザも年明けから流行が広がる可能性があり、基本的な感染対策を継続してもらうことや、体調の管理は必要だ。年末になって帰省で高齢者に会う機会が増えるので、事前の検査や体調管理の配慮をしてほしい」と呼びかけました。

“インフルエンザ同等と判断できる条件満たしてない”専門家有志

新型コロナウイルスの感染症法上の扱いについて、季節性インフルエンザと同じ「5類」への引き下げも含めた見直しが議論されていますが、専門家の有志は、新型コロナはインフルエンザと同等と判断できる条件を現時点で満たしていないとするリスクの評価をまとめました。

リスク評価は、東北大学の押谷仁教授や、京都大学の西浦博教授など、専門家4人が文書としてまとめ、12月14日に開かれた厚生労働省の専門家会合で示しました。

「新型コロナウイルスの特徴と、中長期のリスクの考え方」と題された文書では、新型コロナのリスクを、▼感染の広がりやすさ「伝播性」や、▼感染した場合の重症度、それに▼医療や社会への影響の3項目について評価しています。

このうち、感染の広がりやすさについては、オミクロン株など変異ウイルスが出るたびに広がりやすくなっていて、ワクチンや過去の感染によって得られる免疫が弱まり、免疫を逃れる方向に変異が進んでいるとして、「季節性インフルエンザと異なる特徴を持つ感染症になっている」と分析しています。

また、重症度については、オミクロン株が主流となってからは当初よりも低下した一方で、2021年以降、実際の死亡者数が統計学的に推計される死亡者数を上回る「超過死亡」が増加し、いわゆる「後遺症」も問題になっているとしています。

そして、致死率や重症度のデータは季節性インフルエンザとは異なる方法で集められていることから、直接比べることは困難だとしています。

さらに、医療や社会への影響については、これまでにも感染者数の増加によって救急搬送が困難な事案も増加して一般医療への負荷が起き、今後、さらに流行規模が拡大すれば社会機能の維持に支障が生じるリスクもあるとしています。

こうしたことから、現時点では、新型コロナは季節性インフルエンザと同等のものと判断できる条件を満たしていないと結論づけています。

その上で、同等のものと判断できるようになるためには、少なくとも年間を通じて流行が起きるような状況を脱することが必要で、日本では諸外国に比べて感染した人の割合が低いことから、より長い時間を要する可能性もあるとしています。

会合のあとの記者会見で、押谷教授は「インフルエンザと全く違う特徴を持っているウイルスと、われわれは対じしていると理解する必要がある」と話していました。

専門家有志から示された新型コロナウイルスのリスク評価の資料について、脇田隆字座長は「インフルエンザと新型コロナを単純に比較するということではなくて、今の新型コロナウイルス感染症をどう理解をして捉えたらよいか、さらにさまざまな特徴への対策は、何が本当に必要で、何が必要でないのかを、しっかり見極めることが重要だという議論があった。新型コロナ感染症はインフルエンザと違って感染力が強い疾患で、関連する死亡者はいま現在も3万人を超え、超過死亡はさらにそれより多く、通常のインフルエンザや、それに関連する死亡よりも多い。まだこの疾患はわからないことが多く、今後もその評価をアップデートしていく必要がある」と述べました。