厚生労働省の新型コロナ専門家会合
新型コロナ
“すでに重症者や死者の増加始まっている”

2022年8月3日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ感染者数の増加幅は小さくなっているものの、すべての都道府県で前回、2022年初めからの感染拡大を大きく超え、医療体制に大きな負荷が生じていると指摘しました。
すでに重症者や亡くなる人の数の増加が始まっており、医療のさらなるひっ迫を防ぐため医療機関の受診や救急車の利用は学会や自治体が示している目安を参考にするとともに、感染リスクを伴う接触機会を可能なかぎり減らすよう呼びかけています。

専門家会合は、現在の感染状況について感染者数の増加幅は減少してきているものの、これまでで最も高い感染レベルを更新し続け、すべての都道府県で前回の感染拡大を大きく超えていて、医療機関や福祉施設だけでなく社会活動全体への影響も生じていると指摘しました。

夏休みに入り、10代の感染は減少に転じた一方、重症化リスクの高い高齢者などでは増加が継続していて、重症者や亡くなる人の数の増加がすでに始まっているとしています。

病床使用率が5割を超える地域も増え、特に沖縄県では7割を超えて厳しい状況にあり、医療従事者の感染が増えて医療体制への負荷が起きていて救急搬送が困難なケースも全国的に急増が続いているとしています。

一部の地域ではピークを越えつつあるという予測があり、実際に感染が減少に転じた地域も出てきているものの、ほとんどの地域では感染者が増加していて、今後夏休みで接触機会が増えることによる影響も懸念されるとしました。

専門家会合は、感染リスクのある接触機会を可能なかぎり減らし、それぞれが感染しない、感染させないための対策に取り組むことが必要で、大人数での会食やお盆や夏休みの帰省などで高齢者と接する前に検査を受けることを推奨し、症状のある人が医療機関を受診する前に自分で検査できるよう抗原検査キットを安定的に供給することが重要だと指摘しました。

また、医療のさらなるひっ迫を防ぐため、医療機関の受診や救急要請の際には、学会や自治体が示している目安を参考にするよう呼びかけました。

さらに、ワクチン接種のさらなる促進、効果的な換気、少しでも体調が悪ければ外出を控えることや、リモートワークを再び推進するよう求めました。

脇田座長 “感染者の全数報告の見直し”についての発言

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は感染者の全数報告の見直しについて「感染状況を把握するためにサーベイランスが非常に重要であることは当然のことだが、現在は、現場の医師が記入する発生届に依存したサーベイランスが行われていて、医療機関や医師に非常に負荷がかかる状況だ。より重層的なサーベイランスに移行すべきだ。感染状況を把握するには例えば、検査の陽性数の調査や、特定の医療機関などの発生数を調べる『定点サーベイランス』、入院が必要な人など一定の症状がある人を対象とした『症候群サーベイランス』などがあり、下水のウイルス量を調べて、地域の流行状況を調べる方法もある。それらをどのように組み合わせていくことが効果的かを速やかに検討する必要がある」と話していました。

1週間の新規感染者数 前週比1.16倍 過去最多レベルの感染続く

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、8月2日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.16倍で、先週までと比べると増加幅は小さくなっていますが、過去最多レベルの感染が続いています。

首都圏の1都3県では、
▽東京都が1.11倍、
▽神奈川県が1.26倍、
▽埼玉県が1.21倍、
▽千葉県が1.17倍と増加が続いています。

関西では
▽大阪府が1.01倍、
▽兵庫県が1.17倍、
▽京都府が1.29倍、

東海でも
▽愛知県が1.10倍、
▽岐阜県が1.25倍、
▽三重県が1.29倍と横ばいから増加となっています。

また、人口当たりの感染者数が最も多い
▽沖縄県は1.04倍となっています。
▽滋賀県は1.64倍、
▽福井県は1.61倍、
▽新潟県は1.54倍、
▽北海道は1.52倍、
▽茨城県は1.49倍などと
44の都道府県では前の週より多い状態が続いていますが、2倍を超えた地域はなくなりました。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、
▽沖縄県が2353.15人と2000人を超えて全国で最も多く、
次いで
▽福岡県が1622.93人、
▽東京都が1595.03人、
▽大阪府が1575.81人、
▽熊本県が1463.84人、
▽鹿児島県が1367.41人、
▽宮崎県が1350.54人、
▽京都府が1334.48人、
▽佐賀県が1292.14人、
▽愛知県が1240.46人、
▽兵庫県が1238.15人、
▽福井県が1225.51人、
▽滋賀県が1177.62人、
▽埼玉県が1125.21人、
▽神奈川県が1105.69人、
▽大分県が1098.90人、
▽長崎県が1052.79人、
▽千葉県が1038.70人、
▽奈良県が1019.95人と19の都府県で1000人を超えていて、
▽全国でも1137.46人と初めて1000人を超えました。

後藤厚労相「これまでで最も高い感染レベル」

専門家会合で、後藤厚生労働大臣は「増加幅が減少してきているものの、感染者数の増加は継続していて、これまでで最も高い感染レベルになっている。病床使用率や重症者数、死亡者数も増加傾向が続いている。今後、夏休みやお盆、『BA.5』への置き換わり、3回目ワクチンの接種効果の減衰などの影響で、多くの地域で新規感染者数の増加が続くことが見込まれる」と指摘しました。

そのうえで「きのう専門家有志の方々からいただいた提言も受け止め、引き続き、感染状況や科学的知見を収集しつつ、社会経済活動をできるかぎり維持しながら、重症化リスクのある高齢者を守る施策に全力で取り組んでいく」と述べました。