厚生労働省の新型コロナ専門家会合
新型コロナ専門家会合
“夏の間 感染者数が増え続ける可能性”

2023年8月4日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が4日開かれ、現在の感染状況について、全国的に緩やかな増加傾向が続いているという見方が示されました。感染者の数は、夏の間増え続ける可能性があり、医療提供体制への負荷が大きくなることも考えられるとして、換気やマスクの効果的な場面での着用、手洗いなど基本的な対策を呼びかけています。

専門家会合は7月7日以来、およそ1か月ぶりに開かれ、最新の感染状況の分析結果が示されました。

それによりますと、新規患者数は全国的には4月上旬以降、緩やかな増加傾向が続き、5類移行後も11週連続で増加しています。

地域別では、先行して感染が拡大した沖縄県で減少傾向がみられるものの、42の都府県で前の週より増えています。

新たな入院患者や重症患者は全国的に増加傾向が続いているものの、医療提供体制のひっ迫はみられていないということです。

ただ、救急搬送が困難なケースは増加が続いているとしています。

また、検出される新型コロナウイルスの種類はオミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、中でもより感染を広げやすいとされる「EG5.1」が増加しているということです。

今後の見通しについては、過去の状況などを踏まえると、夏の間感染者が増え続ける可能性があり、医療提供体制への負荷が大きくなる可能性もあるとしたうえで
▽感染やワクチン接種による免疫の時間経過による低下
▽より免疫を逃れやすい変異ウイルスの増加
それに、
▽夏休みなどで人と人との接触の機会が増えることなどが感染状況に与える影響に注意が必要だとしています。

このため、専門家会合は、
▽感染の動向や医療提供体制を注視しつつ
▽高齢者や基礎疾患がある人など重症化リスクの高い人へのワクチン接種
▽感染が拡大しても必要な医療が提供されるよう、幅広い医療機関で新型コロナに対応する体制への移行を進めていくことが求められるとしました。

そのうえで、暑さのため部屋を閉めきって冷房をかけていても、換気には配慮すること、マスクを効果的に使うことや手洗いなどの基本的な感染対策を呼びかけています。

脇田座長「重症者数の増加の詳細の解析必要」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は現在の感染状況について「感染者数は11週連続で増加していて、感染が拡大していることは間違いない。夏休みで人出が増え、ふだん会わない人と接する機会が多くなることは流行が広がるきっかけになる。感染リスクの高い場面でマスクを着用することや、換気に注意するといった感染対策の重要性を強調したい。医療機関を受診するときや高齢者施設を訪れるとき、通勤ラッシュで混雑した電車に乗るときなどはマスクの着用が推奨されている」と述べました。

そのうえで、7月中旬以降、重症者数が増えていることについて「免疫を逃れやすい新たな変異ウイルスの割合が増えてきている。重症者数の増加が、ウイルスのタイプが変わったからなのか、感染が拡大して入院者数自体が増えたからなのか、詳しい分析はできていない。モニタリングをしっかりして、研究や解析をすることが必要ではないか」と述べました。

また、季節性インフルエンザの注意報や警報のような基準を新型コロナでも設定できないかという議論について「基準を作ることにはみんな賛成していたが、基準を示す目的やどういったものが基準として適切なのかについて議論すべきだという意見があった。専門家向けか自治体向けか、住民とのコミュニケーションのためか、議論が必要だ」と述べました。

加藤厚労相「先手先手で必要な対応を」

加藤厚生労働大臣は「緩やかな増加傾向が続いている。夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があり、引き続き感染状況を重層的に把握しつつ注視していく」と述べました。

そのうえで「夏の感染対策のポイントとして、高齢者に会う時や大人数で集まる時の事前の体調管理の重要性などについて、SNSなどで周知を図っている。さきざきの感染動向を見据えながら幅広い医療機関で対応できる体制への移行や、ワクチン接種を含め先手先手で必要な対応を行っていきたい」と述べました。

42の都府県で前の週より増加

新型コロナウイルスの全国の感染状況は、7月30日までの1週間では1つの医療機関当たりの平均の患者数が15.91人で、前の週の1.14倍となっています。

厚生労働省は「夏の間に感染が拡大する可能性もあり、定期的に換気するほか必要な場面でマスクを着用するなど基本的な感染対策を行ってほしい」としています。

厚生労働省によりますと、7月30日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から9901人増えて7万8502人となりました。

また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は15.91人で前の週の1.14倍となりました。

前の週から増加が続くのは17週連続となります。

都道府県別では多い順に
▽佐賀県が31.79人
▽長崎県が30.29人
▽宮崎県が27.21人
▽鳥取県が25.52人
▽熊本県が24.66人などとなっていて、42の都府県で前の週より増加しています。

このほか、7月30日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1146人で、前の週と比べて1751人の増加となりました。

厚生労働省は全国の流行状況について「全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、夏の間に感染が拡大する可能性もあり、医療提供体制への負荷が増えることも懸念される。定期的に換気するほか必要な場面でマスクを着用するなど基本的な感染対策を行って欲しい」としています。

(参考)1医療機関当たりの平均患者数(都道府県別)
▽佐賀県は31.79人
▽長崎県は30.29人
▽宮崎県は27.21人
▽鳥取県は25.52人
▽熊本県は24.66人
▽大分県は24.33人
▽石川県は24.13人
▽鹿児島県は23.54人
▽福岡県は21.64人
▽愛媛県は21.11人
▽愛知県は20.82人
▽高知県は20.45人
▽山口県は18.76人
▽新潟県は18.51人
▽三重県は18.44人
▽宮城県は18.41人
▽千葉県は18.36人
▽徳島県は18.3人
▽岐阜県は17.9人
▽香川県は17.6人
▽沖縄県は17.59人
▽和歌山県は17.43人
▽静岡県は16.92人
▽奈良県は16.89人
▽茨城県は16.7人
▽京都府は16.54人
▽広島県は15.92人
▽滋賀県は14.9人
▽大阪府は14.66人
▽山梨県は14.22人
▽兵庫県は14.05人
▽福島県は13.63人
▽埼玉県は13.38人
▽岩手県は13.26人
▽栃木県は12.33人
▽長野県は12.2人
▽神奈川県は12.04人
▽富山県は11.63人
▽東京都は11.12人
▽山形県は10.79人
▽福井県は10.08人
▽群馬県は9.94人
▽北海道は8.83人
▽青森県は8.23人
▽秋田県は7.06人