厚生労働省の新型コロナ専門家会合
【詳しく】コロナ「5類」移行
4つの論点 専門家の意見は?

2023年1月23日

新型コロナの感染症法上の位置づけを原則として2023年春に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する政府の方針を受けて、厚生労働省は専門家による部会の議論を踏まえて、移行する時期については早ければ1月中にも判断する見通しです。

移行にあたっては何が論点となっているのか。専門家からはこれまでにどのような意見が出たのか。
詳しくまとめました。

専門家は賛成意見が多数

政府の方針を受けた厚生労働省の専門家らによる感染症部会は1月23日にも開かれました。

この中では、「5類」への移行について、
▽流行によって定期的に医療ひっ迫が起きる状況を踏まえると、新たな分類をつくるべきだという意見が出されたものの、
▽重症化率が低下している中で法律で厳しい措置を続けるのは妥当ではないなどとして賛成する意見が多数を占めました。

4つの論点 専門家の議論は?

厚生労働省は新型コロナの感染症法上の位置づけを5類に見直した場合の論点について次の4つのテーマに整理しています。

▽患者などへの対応
▽医療提供体制
▽サーベイランス
▽基本的な感染防止対策

これまでに出た専門家の意見をまとめました。

論点1:患者などへの対応

現在の「2類相当」ではまん延防止のため、法律に基づく入院勧告や措置、患者や濃厚接触者に対する外出自粛要請を行ってきました。
また、これらの行動制限にあわせて、入院や外来にかかる費用の自己負担分を公費で負担してきたほか、検査も行政検査として無料で行ってきました。

これらの見直しについて、感染症部会で専門家からは
▽検査や入院などの費用の一部が自己負担になった場合、受診を控えるケースが増えることが懸念されるため、段階的に見直すべきだといった意見が出されている一方、
▽類型が変われば、これまで国が個人の治療に踏み込んで感染対策をしてきた法的な前提が無くなるので、自己負担にするべきだといった意見も出されていました。

論点2:医療提供体制

現在は、入院が必要な場合に患者を即座に受け入れるための病床を確保するため、病床確保を行う医療機関に対し国が補助を行うとともに、原則、行政が入院調整を行っています。
また、外来では発熱外来での診療や検査を促し、入院と外来それぞれについて、診療報酬を加算しています。

5類への移行後の医療体制の在り方について専門家からは、
▽新たに受け入れる医療機関を増やすためには、感染防止対策費の補助を継続すべきだといった意見や
▽行政による入院調整や病床確保の補助を続けるべきだといった意見のほか、
▽医療資源は地域差があり、各地域での受け皿を確保するために一定の時間をかけて移行することが望ましいといった意見も出されていました。

論点3:サーベイランス

現在は、高齢者など重症化リスクの高い人への対応に重点化するため、医師の義務である患者の発生届を高齢者に限定するとともに、患者数の把握のために全数把握を簡略化した上で継続しています。
また、変異株の発生を監視するため、国や自治体でゲノムサーベイランスを実施しています。

位置づけの移行後、季節性インフルエンザと同じ、定点把握に移行するべきかについて専門家からは
▽流行状況の把握や新たな病原性を持つ変異株を検出できる体制が必要だとか、
▽国と自治体で調整をした上で新たな体制に移行すべきだなどの意見が出されています。

論点4:基本的な感染防止対策

現在、基本的な感染防止対策としてマスクの着用や手洗い・手指消毒、密接、密集、密閉、3密の回避、換気などを呼びかけています。
また、医療機関や高齢者施設などのクラスター発生防止のための取り組みも行っているほか、業界ごとに感染防止対策が行われています。

位置づけの移行にあわせ、政府はマスクの着用についても緩和を検討することにしています。

専門家からは
▽これからも感染は続くので持続可能な感染対策を定着させることが必要だといった意見のほか、
▽マスクは他人にうつさない目的でも使われているとか、
▽医療、介護、高齢者施設などの現場では、感染防止対策は緩めるわけにはいかないなどの意見が出されていました。

国民に丁寧かつ明確な説明を

こうした4つの論点を踏まえ専門家からは国に対し
▽科学的知見に基づいて、国民に丁寧かつ明確な説明を行いながら、見直しを進める必要があるとか、
▽段階的な見直しにあたっては、方針や計画のスケジュールを早く示してほしいといった意見が出されました。

厚生労働省は1月27日に開く感染症部会で意見のとりまとめを行ったうえで個別の課題について議論を進めることにしています。また、移行する時期について早ければ今月中にも判断する見通しです。