伸びしろが分からないからおもしろい

サニブラウン アブデル・ハキーム

陸上

陸上男子100mで9秒97の日本記録を持つサニブラウン アブデル・ハキーム。東京オリンピックを見据えてプロに転向した2020年シーズンだったが、新型コロナウイルスによってプランは大きく崩れた。100分の1秒を追い求める緻密な練習を続けていたさなかに、スポーツが当たり前にできなくなるという初めての経験。競技に対する考え方に大きな影響を与えたという。

「こういう時だからこそ、スポーツって何なのか、すごく考えさせられた。大学でアメリカンフットボールの試合がある時は、何万人もの人が街に来て、レストランがすごく混んでいたのに、ことしつぶれた店もいっぱいある。スポーツがあることで街が回り、存在するものがあるんだと再認識した」

だからこそ、アスリートとして自分に何ができるのかを見つめ直す機会にもなった。

「自分も陸上をどうやったら広められるかということをずっと考えてきたが、ただスポーツをやるだけでなく、そのスポーツをどうよくするかを考えていくことが大切なんだと」

2020年はレースに出場しない決断をした。延期されたオリンピックに向けて、フォームなど基本的な部分からもう一度作り直しているという。

競技者としての最終目標は、あのウサイン・ボルトが持つ世界記録の更新。底知れない可能性を秘めた男は、2021年、どんな走りでまた私たちを驚かせてくれるだろうか。

「時間が増えた分、できることが増えたので一回りも二回りも成長したい。伸びしろが分からないからおもしろいかな」

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