アスリート×ことば

この悔しさを絶対に晴らしたい

この悔しさを絶対に晴らしたい

朝乃山 大相撲

令和2年の大相撲7月場所。千秋楽の取組を終えた新大関 朝乃山は静かに決意を語った。

「この悔しさを絶対に晴らしたい」

前の年の5月、夏場所で平幕ながら優勝しアメリカのトランプ大統領から「アメリカ大統領杯」を手渡され一躍、注目された。その後、知名度に比例するように番付をあげ、令和2年3月の春場所後、大関に昇進した。
新型コロナウイルスの影響で新大関として臨むはずだった夏場所が中止となり、2か月遅れのデビューとなる7月場所を前に朝乃山は誓った。

「前に出る相撲を取り続けて、勇気と元気を与えたい」

感染拡大や各地で豪雨災害が続く中、看板力士として芽生えた自覚から出たことばだった。
7月場所、朝乃山は初日から自己最多の9連勝をして順調に白星を積み重ねた。日ごとに国技館の観客の拍手は大きくなり、優勝、さらにその先の横綱へと期待が高まっている様子がひしひしと感じられた。
横綱 鶴竜が2日目から早々に休場した場所は、終盤に入って貴景勝と白鵬も休場。横綱、大関陣が不在となり、大関以上ではただ一人土俵を守っていた。

“大関の責任を果たす”という強い使命感が、逆にみずからにプレッシャーをかけている様子だった。
13日目に同じ1敗の照ノ富士との一番に敗れ優勝に届かなかった朝乃山は、12勝3で終えた。新大関として14年ぶりの優勝には届かなかったが、目標の「前に出る相撲」は15日間貫き通した。 日本相撲協会の八角理事長は「最後は横綱、大関が休場して重圧がのしかかった。優勝はできなかったが大関として乗り切った」と新大関の場所を評価した

感染防止対策の徹底で出稽古の禁止が続き、実戦的な調整が難しい中でも、徹底した下半身のトレーニングなどが12勝へとつながり「相撲で勇気と元気を与える」という目標も達成した。 それでも朝乃山にとっては決して満足できない場所だったという。

千秋楽、結びの一番に臨む前の取組で、大関経験者で7月場所で幕内に復帰した照ノ富士が復活優勝を成し遂げた。

「目の前で優勝が決まってすごく悔しかった。大関の務めや責任を考えすぎていた部分はあった。甘くはなかった」

新大関の15日間で得た貴重な経験。プレッシャーを力に変えて、大関の“責任”を果たす日は、きっとやってくるだろう。