ラグビーだけで夢は完結しない

福岡堅樹

ラグビー

新型コロナウイルスの影響が広がるなか、みずからの競技人生に大きな決断をした。ラグビー日本代表として活躍した福岡堅樹。2019年のワールドカップ、福岡は、50m5秒8の俊足を強みに4つのトライを奪い、日本の史上初のベスト8進出に大きく貢献した。

大会後は7人制で争われる東京オリンピック出場を次の目標に掲げ、その後、現役を引退して夢である医師への道に進むという人生設計を描いていた。しかし、ウイルスの感染拡大で事情が大きく変わる。福岡は、1年延期となった東京オリンピックを断念することを決断した。

「7人制は、ことしまでと決めていた。一度決めたことを先延ばしにしたくないし、変えたら後悔すると考えた。次の医師の道へ、自分の人生で決めたことをやり抜きたい」

医師の家系で育った福岡。高校時代に2度のひざのじん帯断裂という大けがを負った経験から医師という職業への憧れを強くした。大学受験では一浪しても医学部進学はかなわず、第一線でラグビーに取り組みながら日々、勉強を続けてきたと言う。アスリートとして旬を迎えている時期での決断に悩みはなかったのか。

「自分でコントロールできないことはどうしようもない。ラグビーに関して後悔はない。次の道に向かっていくための準備にあてることができるので、タイミングはよかったかなと受け入れることができた。ラグビーだけで自分の夢は完結しない。ラグビーと医学の両方を成し遂げてこそ、自分の夢と言えるようになる」

会見では、想像以上にすがすがしい表情を浮かべていた。まさに、初志貫徹。福岡のアスリートとして、そして人間としての強さがあふれ出ていた。

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