世界のトップで競い合う存在に戻ってこられた

宇野昌磨

フィギュアスケート

2021年11月。グランプリシリーズ第4戦、NHK杯。3年ぶりに大会を制した宇野昌磨は、勝者をたたえる拍手を送る観客席に目をやりながら、自分自身のことばをかみしめていた。

「ようやく世界のトップで競い合う存在に戻ってこられた」

2020-21年シーズンの世界選手権、宇野は4位だった。
みずからの演技とその順位にある程度、満足していた宇野。
しかし、ステファン・ランビエール コーチが問いかけた。

「君が世界一のスケーターになるにはどうしたらいいのだろう、何が必要だと思うのか」

このことばに宇野は改めて自分がスケートをする意味を深く考えたという。
そして、強い思いが心に芽生えた。

「世界のトップで戦いたい」

北京オリンピックが控える2021-22年シーズン、宇野はフリーの新プログラムに挑んでいる。4種類の4回転ジャンプを5本跳ぶという自身にとって過去最高難度の構成だ。

「僕は1位を争う選手ではなかった、ずっと。ゆづ君(羽生結弦選手)の後ろにいて、ネイサン(・チェン選手)の後ろにいまはいて。世界で見るとネイサンが一歩抜けて1人だけ1つ高いレベルの構成をやっていてしかも誰よりも安定している。僕もその域に少しでも足を踏み入れたい」

そして、その領域に一歩踏み出したことを証明したのがNHK杯の演技だった。

「完璧な演技ができればもっともっと上の点数が狙える。自分にうぬぼれることなくより高い難度の構成ができるように練習してもっとうまくなりたい」

まっすぐ前を見つめた宇野の視線は揺るがない。

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