僕は自分に厳しくない。このままじゃだめになる

山田哲人

野球

プロ野球 ヤクルトの山田哲人は、シーズンオフにチームのキャプテン就任をみずから監督に申し出た。キャプテンは小学4年生の時に務めて以来。「自分は元気も覇気もない。キャプテンをやるタイプの人間じゃない」と語ったこともあった。
それでも甘えが許されない立場に自分を追い込まなければという焦りのような感情が、山田を突き動かした。

「僕は自分に厳しくない。すぐ甘えたい部分もある。楽したい部分もある。面倒くさがりで、だめなところがいっぱいあるので」

トリプルスリーを3回達成するなど、華々しい成績を残してきた山田。しかし2020年シーズンは、けがの影響もあってかスイングに本来の鋭さが見られなかった。打率.254、ホームラン12本、8盗塁とレギュラーでプレーした7年間で最も成績が落ち込んだ。

「トリプルスリーを目標に掲げていたけど、ほど遠い数字で。このままでいいのかなとか、そのときはいろいろ考えた」

心機一転、移籍して環境を変えるか。FA権行使について人生で一番悩んだという。それでもチーム内からの「残ってほしい」という言葉に胸を打たれ、残留を決断。会見では「自分はすごい愛されているなと感じた」と語った。
その一方で、居心地のよい環境に安住してはいけないとの思いも募っていった。

「本当に周りの方に恵まれていて、監督、コーチ、選手、裏方さん、球団の方、みんながみんなすごくいい人ばっかりで。そこに甘えてしまうんじゃないかと。このまま続けていけば、野球選手としてだめになる。その可能性があるのかなと頭によぎった」
「キャプテンになることによって『キャプテンだから』というのは常に頭に入る。チームのためにも自分が先頭に立って頑張らなければいけない」

2月の春のキャンプ。山田はリーダーとして若手選手に積極的に声をかけた。そして、全体練習が終わったあと1人、室内練習場で黙々と打ち込んだ。

静寂の中、乾いた打球音だけが同じリズムで響く。
ネットの向こう側からは、チームメートがその姿をじっと見つめていた。
汗でびっしょりぬれたTシャツの背中が、キャプテンとしての決意を語っていた。

「チームのことを考えながら、自分自身がしっかりと成績を残せるように、野球のプレーで引っ張っていけたらいい」

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