アスリート×ことば

日々積み重ねた先に金メダルがあればいいんだ

日々積み重ねた先に金メダルがあればいいんだ

渡部暁斗 スキーノルディック複合

スキーノルディック複合の渡部暁斗。オリンピックで2大会連続の銀メダルを獲得し、ワールドカップでは総合優勝。2021年1月には日本選手のワールドカップ最多勝利記録に並び、今や名実ともに日本の「キングオブスキー」となった。

世界の舞台でしのぎを削って15年あまり、まだ手にしていないものがオリンピックでの金メダルだ。なかなか手の届かない金メダルに向け、ピョンチャン大会を終えてから、いっそうの自問自答を続けてきたという渡部。コロナ禍で長年抱いてきたその思いに変化が生じていた。 新型コロナウイルスの影響で世界が変わり、オリンピックの開催についても不透明になったことでたどりついた思いがあるという。

「自分にとってスポーツとは何だろうかというところから考え始めて、オリンピックで金メダルを獲得するという目標を達成するための手段としてのスポーツになってしまっていた。本当はスキーが好きで、スキーが上達することが僕の喜びだったはずなのに」

競技をすることも、ままならない状況になり、目標を見失いかけていた2020年の春、考えに考え抜いた先に答えはあった。

「結果を出すことを最優先にしてはいけない。自分の一番の優先事項は、スキーがやりたくてうまくなりたい。それを日々積み重ねた先にオリンピックの金メダルがあればいいんだ」

さらに、2021年…。

「別に金メダルが優先ではない。というのに気付きました」

そんな境地にたどりついたからこそ、渡部の中で覚悟は決まっている。もし2022年北京オリンピックが行われなかったとしても、自分にはスキーへの情熱がある。それが自分の心の奥底“根っこの部分”であることに気付いてから自分自身に可能性を感じるパフォーマンスができていると自信を深めるようにった。

「(銀メダルの)ピョンチャン五輪の時のままの思いで今を過ごしていたら、まだ苦しんでいたかもしれない。でも自分の中の目的を見失わず、過ごしていけそうだなと思っている。一番いい状態にして北京大会が、それを披露する場になったらうれしい」