悔しい思いをしなかったら、どうしようと思っていた

寺本明日香

体操

体操の寺本明日香は2連覇がかかっていた2020年12月の全日本選手権、女子個人総合で13位に終わった。
その10か月前、寺本は練習中に左足アキレスけんを断裂した。
2大会連続でオリンピックに出場し、2019年の世界選手権では、日本代表のキャプテンも務めた寺本を襲った大きなけがだった。

リハビリを重ねて迎えた全日本選手権。ただ予選、決勝と納得いく演技はできなかった。

「まわりの人からは、10か月で戻ってきているだけで『奇跡だ』と言われるけれど、自分の中では、もうちょっとできると思っていた」

けがをする前のような演技ができなかったと、悔し涙を流した。

「今すぐ帰って練習したいぐらい悔しい。このままじゃいけないと、現実を見た。絶対に戻ってくると思って練習する」

そして、こう語った。

「もし悔しい思いしなかったら、どうしようと思っていた。誰もが、引退する時は大会で緊張しないとか、悔しい思いにならないと言う。その気持ちがなく、逆に絶対戻ってやると思ったことは、一つ安心したことだった」

苦難の1年を糧に、寺本はさらに成長することを誓った。

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