トランプ大統領 一般教書演説 2019

アメリカのトランプ大統領は今後1年の施政方針を示す演説を行い、来年の大統領選挙もにらんで内政のこう着状態の打開を目指し野党・民主党に協力を呼びかけました。一方で、公約の国境の壁の建設では譲らない考えも強調し、先行きは不透明な情勢です。

トランプ大統領は5日夜、アメリカ議会の上下両院の議員などを前に今後1年の施政方針を示す一般教書演説を行いました。
このなかでトランプ大統領は「この2年で世界はわれわれの経済を羨み、軍事力は最強になり、アメリカは日々勝利をおさめている」と成果を強調しました。
そして、いわゆるねじれ議会で下院の多数派となった野党・民主党に対し「われわれはともに数十年に及ぶ政治的な停滞を打破し、分断を埋めることができる」と述べ、党派を超えた協力を呼びかけました。
一方で「国民の命と雇用を守る移民制度をつくる道義的な義務がある。私が壁を作ってみせる」と述べて、メキシコとの国境沿いの壁の建設では譲らない考えも強調しました。
また、トランプ大統領は外交面でも過去の政権が残した問題に取り組んでいるとアピールしました。
中国との貿易問題では「今、協議している新たな貿易の合意には真の構造改革が含まれていなければならない」と述べ、不公正な貿易慣行を終わらせて貿易赤字を削減するとともに、両国の隔たりが大きい知的財産権などをめぐる問題の解決を迫る方針を示しました。
また、北朝鮮との非核化をめぐる協議では「やるべきことは多く残されている」として2回目の米朝首脳会談を今月27日と28日の2日間、ベトナムで開催し成果を急ぐ考えをにじませました。
トランプ大統領は今回の演説のテーマを「偉大さの選択」と位置づけていて、来年の大統領選挙をにらんで内政のこう着状態を打開しさらなる成果を目指す一方、公約を守る姿勢は強調し一定の支持をつなぎとめるねらいがあるとみられます。
しかし、民主党は攻勢の構えを崩しておらず、いわゆる「ロシア疑惑」の捜査が大詰めを迎えるなか新たな疑惑報道も相次いでいて、政権運営の先行きは依然、不透明な情勢です。

一般教書演説抜粋

トランプ大統領の一般教書演説での主な発言をまとめました。

移民と壁

「共和党と民主党は国家的な危機に対して力を合わせなくてはならない。国土を守り、南部の国境を安全にするための予算案に合意するために、10日間の猶予が残されている。今こそ、アメリカは不法移民を終わらせ、冷酷なならずものたち、カルテル、薬物の密売者、それに人身売買業者を根絶やしにしようとしていることを議会が世界に対して示すときだ。こうしている間にも、大勢の移民キャラバンがアメリカに向かっている。メキシコの都市は、これらの移民を排除するため国境警備が手薄なところへ、バスやトラックで移民を運んでいるともいう。移民がなだれ込んでこないよう、新たに3750人の兵士を国境に派遣した。これは道義の問題だ。無法化した国境地帯はアメリカ人にとって安全や安全保障、それに経済的な安定への脅威となっている。われわれは、国民の生命と雇用を守るための出入国管理の仕組みをつくる道義的な責任を負っている」

「私の政権は、国境での危機を終わらせるため議会に対して常識的な提案をしている。人道的な援助、より強力な法の執行、港湾での薬物の探知、子どもを密入国させる抜け穴の封鎖、それに入国地点の間を塞ぐ物理的な『壁』の計画だ。私が壁を作ってみせる。これは、スマートで戦略的な、透明な鉄の壁だ。ただのコンクリートの壁ではない。これは国境警備隊が最も必要とする場所に作られ、壁ができたところでは不法な入国は急激に減るだろう」
「壁は効果がある。壁は命を救う。アメリカを本当に安全な場所にするためにともに働き、妥協し、決着をつけよう」

女性活躍について

「アメリカの好調な経済で最も恩恵を受けたのは女性だ。去年新しく創出された雇用の58%を女性が占めた。すべてのアメリカ国民はかつてないほど多くの女性が働いていることを誇りに思っている」
「アメリカ議会が女性の参政権を認める憲法の修正条項を可決してちょうど100年後となる今、議会にはこれまでで最も多くの女性議員がいる」

育児休業手当について

「有給で育児休業を取得できるよう大統領として初めて予算を組むことを誇りに思う。これにより、すべての親が新たに生まれた子どもとの絆をより深める機会を得られるだろう」

妊娠中絶について

「ニューヨーク州の議員たちは人工妊娠中絶を許可するという法案を受け入れた。これは、新生児には、この世で愛や夢を分かち合う機会が、与えられないと いうことだ」
「私は、すべての人の尊厳を守るため、妊娠後期の人工妊娠中絶を禁止する法案の可決を議会に求めたい。罪のない命を大切にするという文化をともに築いていこう」

同盟国の国防費負担

「この2年間、アメリカ軍の完全な再建に予算を投じてきた。アメリカは何年もNATO=北大西洋条約機構に不当に扱われてきた。ようやくNATOの加盟国に国防費を1000億ドル増額させることを確約させた」

INF=中距離核ミサイル全廃条約

「われわれが条約を順守していた間に、ロシアは長年にわたって違反を繰り返してきた。おそらくわれわれは中国など他の国も含めた新たな枠組みについて交渉できるだろう。しかし、もしそれができなければ、われわれは他国をはるかに上回る投資と開発を進める」

中東

「偉大な国は終わりなき戦争に従事しない」
「われわれは血に飢えた殺人者が掌握していた地域を、事実上すべて解放した。いまこそアメリカの勇敢な戦士たちの帰国を温かく迎える時だ」

アフガニスタン

「われわれは武装グループと建設的な話し合いを進めており、もし進展があれば駐留している兵力の削減に踏み切れる」

北朝鮮

「大胆な新たな外交の一環としてわれわれは、引き続き、朝鮮半島の平和に向けた歴史的な行動を進める」
「われわれの人質は帰国し、北朝鮮は核実験を中止し、この15か月以上、ミサイルも発射していない」。「自分が大統領に選ばれていなかったら、私の意見では、私たちは、今、北朝鮮と戦争になっていただろう」
「まだ多くの仕事が残されている。しかし、私とキム・ジョンウン(金正恩)委員長との関係は良好だ。キム委員長との2回目の首脳会談は、2月27日と28日に、ベトナムで開く」

ベネズエラ問題

「アメリカ政府は、グアイド氏がベネズエラの新しい大統領に就任したことを正式に承認した」

「われわれは自由を崇高に探求しているベネズエラの人々を支持する。マドゥーロ政権の残忍な行為を非難する。マドゥーロ氏の社会主義的政策が、ベネズエラを南米で最も豊かな国から絶望的な貧困に追いやった」

社会主義国にはならない

「アメリカ国内で最近、社会主義の兆しが見え始めていることに不安を感じている。アメリカは、支配や統制ではなく、自由と独立が礎となって建国された国だ。われわれは生まれながらにして自由であり自由であり続ける。きょう、アメリカは社会主義国には決してならないという決意を新たにする」