今さら聞けないTPP 基本がわかる18のカード

協定の発効に向けた各国の動きは

最終更新日:2016年6月30日

発効の条件

日本やアメリカなど12か国が参加したTPP協定の署名式は、日本時間の2月4日、協定文書のとりまとめ役を務めたニュージーランドのオークランドで行われました。各国は、現在、協定の発行に向けて国内手続きを進めています。

TPP協定は、署名から2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効します。しかし、2年以内にこうした手続きを終えることができなかった場合には、12か国のGDP=国内総生産の85%以上を占める少なくとも6か国が手続きを終えれば、その時点から60日後に協定が発効する仕組みになっています。

日本のGDPが17.7%、アメリカが60.4%と、この2国だけで加盟国の全体の78%に達するため、日本とアメリカのほかにGDPが比較的大きな4か国が手続きを順調に終えれば、TPPは2018年の4月に発効することになります。

アメリカの動き

アメリカのオバマ大統領はTPP協定の署名を終えたあと声明を発表し、「TPPはアメリカの主導権を高め国内に雇用をもたらす協定だ。アメリカからの輸出を増やし協定の恩恵がただちに及ぶよう、議会の民主、共和両党と協力しできるだけ速やかに手続きをすすめ年内にTPPの承認を得たい」と述べました。

ところが、アメリカ大統領選挙に向けた候補者のほとんどが、TPPへの反対を表明し、アメリカでの承認の行方が不透明になっています。

民主党の指名獲得を確実にしているクリントン前国務長官は6月22日に行った演説でTPPについて、「われわれはTPPを含め、雇用の創出のための高い水準を満たさない悪い貿易協定には『ノー』と言う」と述べ、反対する考えを強調しました。

共和党の指名獲得を確実にしたトランプ氏は6月28日に行った演説で、「TPPによって、アメリカの製造業は致命的な打撃を受ける。私はTPPから撤退するつもりだ」と述べ、TPPに対するみずからの立場をこれまで表明していた「反対」という考えから「離脱する」へとさらに強め、自由貿易に否定的な考えを強調しました。

こうしたなか、アメリカ、カナダ、それにメキシコの北米3か国の首脳会談が6月29日にカナダで開かれ、TPPを推進する方針を確認しました。会談後、オバマ大統領は「貿易協定から撤退し、自国の市場にだけ集中するというのは誤った処方箋だ。みんなを貧しくするだけだ。われわれがやらなければ、中国がわれわれの労働者やビジネスに不利なやり方で貿易のルールを作ってしまうだろう」と指摘しました。

また、カナダのトルドー首相は「貿易は技術を革新し雇用を創出する」と述べ、TPPの意義を強調しました。さらに、メキシコのペニャニエト大統領はトランプ氏が不法移民を防ぐためメキシコとの国境に壁を築くと主張していることも念頭に「孤立主義は解決策にならない」と批判しました。

アメリカ議会の承認は11月の大統領選挙が終わらないと動かないとみられています。

日本の動き

政府は3月8日の閣議で、TPP協定の国会承認を求める議案と、関連する11本の法律の改正事項を1本の法案に取りまとめた関連法案を決定し、国会に提出しました。

関連法案には、協定発効後、牛肉と豚肉の生産者が赤字経営になった場合に、赤字額を国と農家でつくる積立金を使って補てんする制度を法制化し、補てん割合も引き上げる内容などが盛り込まれました。

議案と関連法案は4月6日の衆議院の特別委員会で審議入りし、TPPの国会承認が後半国会の1つの焦点となりました。しかし、議事運営を巡る混乱や熊本地震への対応などで、当初、目指していた4月中の衆議院通過は困難な情勢となり、4月26日、与党側は、今の国会での承認を断念する考えを野党側に伝えました。

そして6月1日、衆議院本会議でTPP協定の承認を求める議案などを継続審議にする手続きなどが行われ、通常国会は閉会しました。

オセアニアなど

2月4日に行われたTPP署名式の共同記者会見で、オーストラリアとニュージーランドの閣僚は、それぞれ近く、議会での手続きに入ることを確認したほか、シンガポールなども年内に承認されるよう努力する考えを示しました。

アジア各国が参加に関心

TPPを巡っては、ほかの国や地域からも参加の意向が示されています。今のところ、韓国、インドネシア、台湾、タイ、フィリピンの5つの国と地域が参加の意向を明らかにしています。署名式に先だって行われた閣僚会合では、韓国やインドネシアなどへの対応が議題に上がり、首席交渉官レベルで今後の進め方を検討するよう各国で指示することを確認しました。

日本政府としては、多くのメーカーが生産拠点を置くアジアで参加国が増えれば、自動車などの日本製品の輸出の拡大につながるとして、積極的に参加を支援していく方針です。

中国は警戒感

中国の習近平国家主席は、2015年11月にフィリピンで開かれたAPECの一連の会議で、TPP協定を土台に自由貿易の枠組みづくりが進むことに警戒感を示す一方で、中国を含むFTAAP=アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けて主導的な役割を果たす意気込みを示しました。

FTAAPは、APECに加盟している21の国と地域全体で貿易の自由化を目指すもので、2014年、中国・北京で開かれたAPEC首脳会議で、「可能なかぎり早期に実現する」とした首脳宣言が採択されました。

TPPの交渉を主導してきた日本とアメリカは、FTAAP構想を実現するにあたっては、高いレベルの貿易の自由化を目指すTPPを土台にしたいという立場です。これに対して中国は、アメリカ抜きでアジア地域での貿易の主導権を握りたいという思惑から、TPPの意義を強調する日米の動きに警戒感を持っているとみられます。