今さら聞けないTPP 基本がわかる18のカード

発効に向けた各国の動き

最終更新日:2016年12月1日

アメリカの動き

トランプ次期大統領「就任初日にTPP離脱表明」

トランプ次期大統領は11月21日、就任から100日以内に取り組む政策課題について動画のメッセージを、みずからの政権移行チームのウェブサイトに掲載しました。この中で、トランプ氏は「私の政策課題はアメリカ第一主義という原則に基づいている」と述べたうえで、国内の雇用拡大を重視する考えを強調しました。
そして、来年1月20日の就任初日に着手するものとして、まず、貿易政策を掲げ、「アメリカにとって大きな災難となるおそれがあるTPP協定からの離脱を表明する。代わりに、アメリカに雇用を取り戻し、産業を復活させる公平な2国間協定の交渉を進める」と述べました。

TPP協定に署名した12か国は11月19日、ペルーで開いた首脳会合で、協定の発効を目指して各国が国内手続きを進めることを確認し、アメリカのオバマ大統領も「TPPの重要性について今後も国内での理解を求めるべく尽力を続ける」と述べました。しかし、トランプ氏はこうした動きにかまわず、選挙戦で訴えたTPP協定からの離脱の方針を直ちに実行に移す考えを改めて示しました。

米政府高官 トランプ氏就任前にTPPの承認難しい

ホワイトハウスのアーネスト報道官は11月22日、定例の記者会見で「オバマ大統領の任期中に議会で承認を得る見通しはよくない」と述べて、トランプ氏の就任前にTPPが議会で承認されるのは難しいとの認識を示し、TPPの発効は一段と厳しくなっているという見方が広がっています。

米商務長官に起用 ロス氏「ひどい協定だ」

トランプ次期大統領は11月30日、新政権の商務長官に知日派として知られる投資家のロス氏を、財務長官に大手金融機関の元幹部のムニューチン氏を、それぞれ起用すると発表し、経済閣僚の陣容を固めました。
このうち新政権の貿易政策などを担う商務長官への起用が決まったウィルバー・ロス氏は、倒産企業の建て直しで実績を重ねた「再建王」として知られ、日米交流団体のひとつ、ジャパン・ソサエティーの会長も務める知日派です。ロス氏は30日、アメリカのCNBCテレビで、当初、賛成の立場を示していたTPP協定について「ひどい協定だ」と述べ、反対する姿勢を鮮明にしました。

米通商代表 TPP反対を考え直すよう働きかける

アメリカのフロマン通商代表は、11月18日、APEC=アジア太平洋経済協力会議の閣僚会議のあと、NHKなど一部メディアの取材に応じ、TPP協定の現状について説明しました。

フロマン通商代表は「議会でTPPの承認を得るため、この数か月間、それぞれの議員の選挙区で、どんなメリットがあるか説明し理解を得てきた。しかし現状では、関連する法案を提出するかどうかは議会の幹部しだいだ」と述べ、議会での反対が強い中、来年1月までのオバマ大統領の任期中に議会で承認を得るのは難しいという認識を示しました。

そのうえでフロマン通商代表は、TPPが発効しない場合には、アメリカが参加せず中国や日本が交渉を進めているRCEP=東アジア地域包括的経済連携が進展する可能性が指摘されているとして、トランプ次期大統領の政権移行チームなどにTPPへの反対を考え直すよう働きかけていく意向を示しました。

日本の動き

国会で承認 関連法案も成立

TPP協定は12月9日午後開かれた参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、承認されました。あわせて、関連法も可決、成立しました。

本会議の討論で、自民党は「協定は、国内のサービス業、製造業だけでなく、農林水産業も活性化させることができ、わが国の経済成長に大きく資するものだ」と述べました。一方、民進党は「安倍総理大臣は『TPPは、国家100年の計だ』と言っているが、アメリカのトランプ次期大統領の離脱宣言で、発効する可能性はほとんどゼロで、今となっては、まったくの独りよがりに過ぎない」と述べました。

そして、採決が行われた結果、TPP協定は、自民・公明両党と日本維新の会、日本のこころを大切にする党などの賛成多数で可決・承認されました。あわせて関連法も可決・成立しました。

関連法案とは

TPP協定の国会承認とあわせて、11の関連する改正法を束ねた法律が成立しました。

この中には、▽牛肉や豚肉の生産者が全体で赤字経営になった場合に、赤字額を補てんする制度の拡充などを盛り込んだ改正法、▽牛肉や豚肉などの輸入が急増したときに国内の生産者への影響を抑えるため、一定の輸入量を超えれば関税を引き上げる「セーフガード」を発動する手続きを定めた改正法、▽小説や音楽などの著作権について、現在は原則、作者の死後「50年間」となっている保護期間を「70年間」に延長する改正法などが含まれています。

ほとんどの法律はTPPの発効が条件となっているため、当面、施行の見通しは立っていません。

政府は、国会承認を終えたことを受けて、すみやかに必要な政令や省令の改正にとりかかります。そのうえで、準備が整えば、協定の締結を再び閣議決定し、来年早々にも、協定のとりまとめを担当しているニュージーランドに通知することにしています。

そのほかの国は

メキシコ

年内にも協定の批准が予定されているメキシコは、アメリカを除いた11か国でも協定が発効できるよう協議する必要があるという意見も出ています。

ペルー

クチンスキー大統領がロシアのメディアのインタビューでTPPに言及し、「アメリカ抜きでもTPPと似た協定を作ることはもちろん可能で、そうした議論はすべきだ。アメリカがTPPから離脱する場合は、中国やロシア、それにほかの環太平洋の国々も含めた協定となるのが望ましい」と述べ、新たな経済連携協定の構築に意欲を示しました。

ニュージーランド 承認手続き完了

ニュージーランドの議会は、11月15日に開かれた本会議でTPP協定の関連法案について採決を行い、与党などの賛成多数で可決し、議会での承認手続きを終えました。 ニュージーランドはTPP協定のもとになった「P4協定」と呼ばれる経済連携の枠組みを創設した国の1つです。 承認を受けてマクレー貿易相は声明を出し、「国際貿易の自由化に向けてニュージーランドの決意を示したものだ」と歓迎しました。そのうえで「アメリカの次の政権には貿易問題について十分検討してもらう必要がある」として、トランプ新政権に熟慮を求める構えです。

オーストラリア

TPPは「アジア太平洋地域で重要な貿易協定だ」としてトランプ氏に再考を促す一方で、アメリカが協定を承認しない場合には、中国などが主導する貿易協定への参加に向け交渉を進める考えを示唆しています。

マレーシア

TPP協定が発効しないとなれば、ほかの選択肢を探ることになるとして、中国が主導する貿易協定への参加に向け交渉に力を入れていく考えを示しています。

シンガポール

リー・シェンロン首相が地元のメディアに対して、「協定に参加する全ての国が失望している」と述べたうえで、トランプ氏に対して再考を促しています。 交渉をやり直すことについては否定的な見解を示しています。

ベトナム

アメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利したことについて、フック首相が「ベトナムがTPPに参加するための十分な根拠がなくなった」と述べ、国内での早期の批准に否定的な考えを示しました。

発効の条件

日本やアメリカなど12か国が参加したTPP協定の署名式は、日本時間の2月4日、協定文書のとりまとめ役を務めたニュージーランドのオークランドで行われました。各国は、現在、協定の発行に向けて国内手続きを進めています。

TPP協定は、署名から2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効します。しかし、2年以内にこうした手続きを終えることができなかった場合には、12か国のGDP=国内総生産の85%以上を占める少なくとも6か国が手続きを終えれば、その時点から60日後に協定が発効する仕組みになっています。

日本のGDPが17.7%、アメリカが60.4%と、この2国だけで加盟国の全体の78%に達するため、日本とアメリカのほかにGDPが比較的大きな4か国が手続きを順調に終えれば、TPPは2018年の4月に発効することになります。