今さら聞けないTPP 基本がわかる18のカード

協定の発効に向けた各国の動きは

最終更新日:2016年5月11日

TPP署名式

日本やアメリカなど12か国が参加したTPP協定の署名式が、日本時間2月4日、協定文書のとりまとめ役を務めたニュージーランドのオークランドで行われました。TPPは、今後、協定の早期発効に向けて各国で議会の承認を求めるなど国内手続きが本格化することになります。

発効の条件

協定は、2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効します。しかし、2年以内にこうした手続きを終えることができなかった場合には、12か国のGDP=国内総生産の85%以上を占める少なくとも6か国が手続きを終えれば、その時点から60日後に協定が発効する仕組みになっています。

2年以内にすべての国が国内手続きを終了できなかった場合でも、日本のGDPが17.7%、アメリカが60.4%と、この2国だけで加盟国の全体の78%に達するため、日本とアメリカ、それに、GDPが比較的大きな4か国が手続きを順調に終えれば、TPPは2018年の4月に発効することになります。

日本の動き

政府は3月8日の閣議で、TPP協定の国会承認を求める議案と、関連する11本の法律の改正事項を1本の法案に取りまとめた関連法案を決定し、今の国会に提出しました。

関連法案には協定発効後、牛肉と豚肉の生産者が赤字経営になった場合に、赤字額を国と農家でつくる積立金を使って補てんする制度を法制化し、補てん割合も引き上げる内容などが盛り込まれています。

議案と関連法案は4月6日の衆議院の特別委員会で審議入りし、TPPの国会承認が後半国会の1つの焦点となりました。しかし、議事運営を巡る混乱や熊本地震への対応などで、当初、目指していた4月中の衆議院通過は困難な情勢となり、4月26日、与党側は、今の国会での承認を断念する考えを野党側に伝えました。

アメリカの動き

TPP協定の署名を終え、アメリカのオバマ大統領は声明を発表し、「TPPはアメリカの主導権を高め国内に雇用をもたらす協定だ。アメリカからの輸出を増やし協定の恩恵がただちに及ぶよう議会の民主、共和両党と協力しできるだけ速やかに手続きをすすめ年内にTPPの承認を得たい」と述べました。

ところが、アメリカ大統領選挙に向けた候補者のほとんどが、TPPへの反対を表明し、アメリカでの承認の行方が不透明になっています。

共和党の指名獲得が確実となったトランプ氏は、TPPは日本など外国企業ばかりが得をする不利な協定だと批判を強めています。5月6日にネブラスカ州で行った演説では、日本が現在、アメリカ産牛肉にかけている関税を維持するなら日本から輸入する自動車にかける関税を大幅に引き上げるなどと独自の主張を展開しました。

オバマ政権で国務長官としてTPPを推進していたはずの民主党のクリントン候補すら立場を翻しました。指名獲得を争うサンダース候補が反TPPを掲げ、支持を広げていることに危機感を抱き、TPPは労働者保護が不十分だと言いだしたのです。

このため、アメリカ議会の承認は11月の大統領選挙が終わらないと動かないとみられています。

カナダ

大筋合意のあとに政権交代があったカナダは、今回の署名にあたって直前まで態度を明らかにしなかったことから、今後の国内手続きには時間がかかるという見方も出ています。

オセアニアなど

2月4日に行われたTPP署名式の共同記者会見で、オーストラリアとニュージーランドの閣僚は、それぞれ近く、議会での手続きに入ることを確認したほか、シンガポールなども年内に承認されるよう努力する考えを示しました。

アジア各国が参加に関心

TPPを巡っては、ほかの国や地域からも参加の意向が示されています。今のところ、韓国、インドネシア、台湾、タイ、フィリピンの5つの国と地域が参加の意向を明らかにしています。署名式に先だって行われた閣僚会合では、韓国やインドネシアなどへの対応が議題に上がり、首席交渉官レベルで今後の進め方を検討するよう各国で指示することを確認しました。

日本政府としては、多くのメーカーが生産拠点を置くアジアで参加国が増えれば、自動車などの日本製品の輸出の拡大につながるとして、積極的に参加を支援していく方針です。

中国は警戒感

中国の習近平国家主席は、2015年11月にフィリピンで開かれたAPECの一連の会議で、TPP協定を土台に自由貿易の枠組みづくりが進むことに警戒感を示す一方で、中国を含むFTAAP=アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けて主導的な役割を果たす意気込みを示しました。

FTAAPは、APECに加盟している21の国と地域全体で貿易の自由化を目指すもので、2014年、中国・北京で開かれたAPEC首脳会議で、「可能なかぎり早期に実現する」とした首脳宣言が採択されました。

TPPの交渉を主導してきた日本とアメリカは、FTAAP構想を実現するにあたっては、高いレベルの貿易の自由化を目指すTPPを土台にしたいという立場です。これに対して中国は、アメリカ抜きでアジア地域での貿易の主導権を握りたいという思惑から、TPPの意義を強調する日米の動きに警戒感を持っているとみられます。