今さら聞けないTPP 基本がわかる19のカード

農産物重要5項目の合意内容

最終更新日:2016年4月8日

TPPの大筋合意で影響を受ける農林水産物。なかでも特に影響が大きいのが、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料の5項目です。このため、衆議院と参議院の農林水産委員会は、日本の交渉参加を前にした2013年4月、政府に対して農林水産物への配慮を求める決議を行いました。
交渉の結果、農産物の重要5項目では、594品目のうち71%に当たる424品目は、関税撤廃の例外となりました。

コメ

日本とアメリカの2国間協議で最大の焦点となっていた主食用のコメの輸入拡大については、日本はこれまでの関税は維持する一方、新しい輸入枠として年間7万トンの枠を設けることで合意しました。新たな輸入枠は、協定の発効時は年間5万トンで、13年目以降、7万トンまで増やします。

一方、日本はオーストラリアとも主食用のコメの輸入枠を設定することになり、発効時は年間6000トンで、13年目以降、年間8400トンとすることになりました。

これとは別に、お菓子のほか、みそなど調味料の原料に使う加工用のコメについても、年間6万トンの新たな輸入枠を設けます。

小麦と大麦は、国内の需給と価格を安定させるため、国が一括で輸入して国内業者に販売する「国家貿易」を行っています。業者に販売する際には、国内の生産者を保護するため、「マークアップ」と呼ばれる事実上の関税を輸入価格に上乗せしています。
交渉の結果、国家貿易の仕組みは維持する一方、小麦と大麦の事実上の関税の金額を段階的に引き下げ、9年目までに 45%削減することになりました。

さらに、小麦はアメリカとカナダ、オーストラリアを対象に国ごとの輸入枠を設けることになり、輸入枠は協定発効時には合わせて19万2000トン、7年目以降は25万3000トンになります。一方、大麦もTPP参加国を対象にした輸入枠を設けることになり、協定発効時は年間2万5000トン、9年目以降は6万5000トンにすることになりました。

牛肉

牛肉の関税は現在38.5%ですが、協定発効時に27.5%にまで引き下げることになりました。さらに、協定発効から10年で20%に、16年目以降は9%に段階的に引き下げます。

一方、一定の輸入量を超えれば関税を引き上げる「セーフガード」という制度を導入をすることで、国内の生産者への影響を抑えたい考えです。
牛肉のセーフガードは、協定の発効1年目には最近の輸入実績から10%増えた場合に関税を現在の水準である38.5%まで戻します。関税の引き上げ幅は段階的に縮小し、15年目以降、18%にする方針です。その後、4年間、セーフガードの発動がなかった場合は、廃止されます。

豚肉

豚肉は、価格が安い肉には現在1キロ当たり482円の関税がかけられていますが、協定発効時に125円に引き下げます。その後、発効5年目に70円、10年目以降には50円に削減することになりました。

豚肉のセーフガードは、安い肉で発効5年目に関税が70円になった段階で導入され、一定の輸入量を超えた場合に100円まで戻します。その後、関税の引き上げ幅は段階的に縮小され12年目以降は廃止されます。

乳製品など

乳製品について、日本は輸入を制限する現在の国家貿易の仕組みは維持する一方、バターと脱脂粉乳について、TPP参加国を対象にした新たな輸入枠を設けることになりました。輸入枠は、協定の発効当初には生乳換算でバターと脱脂粉乳合わせて年間6万トンとしたうえで段階的に増やし、6年目以降は7万トンまで増やすことになりました。

チーズでは、粉チーズとチェダー、ゴーダチーズは16年目に関税を撤廃します。一方、モッツァレラチーズやカマンベールチーズは、今の関税が維持されます。

重要5項目の中でも、ソーセージは6年目に、牛タンとフローズンヨーグルトは11年目に、関税を撤廃します。

協定発効7年後に再協議規定

政府が公表したTPPの暫定的な協定文書の概要によりますと、農産物や工業製品などの関税の取り扱いについて、協定発効後、交渉参加12か国のいずれかの国からの要請があった場合には、関税の撤廃時期の繰り上げに関して、再協議を行う規定が盛り込まれています。

ただ、日本の農林水産物などは関税撤廃の例外となっている品目が多いため、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、チリの5か国との間で、協定の付属文書に例外規定が設けられています。この中では、協定が発効してから7年後以降に、アメリカなどから要請があった場合、日本の農林水産物の関税や、輸入量が急増した場合に一時的に関税を引き上げる「セーフガード」の取り扱いについて、再協議を行う規定が盛り込まれています。

これによって、農林水産物の関税のさらなる引き下げを求められる可能性もありますが、政府の担当者は「この規定で、日本の農産物などの関税が一方的な不利な扱いを受けるような事態は想定していない」などと説明しています。