今さら聞けないTPP 基本がわかる18のカード

農業への影響

最終更新日:2015年11月6日

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の大筋合意を受けて、農林水産省は、コメや果物など農産物への影響をまとめました。多くの品目で「影響は限定的だ」としながらも、一部は長期的には価格が下落する可能性もあるとしています。このため、農林水産省では、品種改良や農業施設の整備などの安定供給のための対策のほか、輸入品に対する競争力の強化などが必要としています。

【コメ】

主食用のコメは高い関税や国が義務的に輸入するミニマムアクセスという制度など輸入の枠組みはこれまでと変わりません。ただ、TPPによってアメリカとオーストラリアから合わせて年間7万8400トンの輸入枠が新たに設けられます。輸入が増えるとその分、国産のコメの価格が下落する可能性があるため、国は備蓄用として毎年買い入れているコメの量を増やすことで影響を抑えることを検討しています。

【小麦・大麦】

小麦と大麦は国が一元的に輸入する制度を維持するものの、事実上の関税であるマークアップを9年目までに45%削減するため、輸入品の価格下落が国産の販売価格に影響を及ぼす可能性を指摘しています。

【オレンジ】

オレンジは関税が段階的に引き下げられ、8年目までに撤廃されます。国産のうんしゅうみかんの平均価格は1キロ当たり235円。これに対して、オレンジの国際価格は1キロ当たり142円で2倍近い価格差がありますが、味や食べやすさが異なることから差別化が図られているとしています。関税は段階的に引き下げられるうえに一定の輸入量を超えた場合には関税を引き上げるセーフガードを設けることから、影響は限定的だと見込まれるとしています。
ただ、関税が撤廃されることで輸入先の国が日本向けにオレンジの輸出を増やしたり、品質を改良したりした場合は、長期的には国産のみかんや果汁の価格が下落する可能性もあるとしています。

【さくらんぼ】

さくらんぼは協定が発効した1年目に関税が50%削減され、その後、6年目に撤廃されます。国産のさくらんぼの平均価格は1キロ当たり1816円。これに対して国際価格は1キロ当たり1038円と大きな開きがあります。国産のさくらんぼは味や外観の良さから贈答用などの高級品として差別化が図られており、影響は限定的だと見込まれるとしています。ただ、関税の撤廃によって長期的には国産品の価格が下落する可能性もあるとしています。

【りんご】

りんごは協定が発効した1年目に関税が25%削減され、11年目に撤廃します。価格は国内の平均価格が1キロ当たり295円なのに対して国際価格は1キロ当たり217円となっています。国産のりんごは品質の面で国際的に高い競争力を持っており、限定的だと見込まれるとしています。ただ、関税が撤廃されることで輸入先の国が日本向けの輸出を増やしたり、品質が改良されたりした場合は、長期的には国産のりんごや果汁の価格が下落する可能性もあるとしています。

【キウイフルーツ】

キウイフルーツは現在6.4%の関税を協定の発効後すぐに撤廃します。農林水産省によりますと、キウイフルーツは国内の消費量のうち約6割がTPPに参加しているニュージーランドからの輸入が占めていて、関税撤廃によって長期的には国内産の価格が下落する可能性があるとしています。

【メロン・いちご】

メロンといちごは現在6%の関税を協定の発効後すぐに撤廃するため、長期的には国内産の価格が下落する可能性もあるとしています。

【野菜】

かぼちゃやアスパラガス、にんじんなど多くの野菜は、3%の関税が協定発効後すぐに撤廃されます。かぼちゃとアスパラガスは輸入量の9割をTPP参加国が占めているものの、国産と外国産で収穫の季節によるすみ分けができていること、にんじんは輸入量の9割がTPPに参加していない中国からで、影響はいずれも限定的だと見込まれるとしています。ただ、関税が撤廃されることで長期的には国産の価格下落の可能性があると指摘しています。

じゃがいもは、カットポテトなどの加工品で最大20%の関税が11年目までに撤廃されるため、長期的には国内産の価格が下落する可能性があるとしています。

トマトとパプリカ、レタス、ブロッコリーも、現在3%の関税を協定の発効後すぐに撤廃するため、長期的には国内産の価格が下落する可能性もあるとしています。

重要5項目

農林水産物の中でも特に影響が懸念されているのが、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料の5項目です。このため、衆議院と参議院の農林水産委員会は、日本の交渉参加を前にした2013年4月、政府に対して農林水産物への配慮を求める決議を行いました。

具体的には、コメなどの5項目を重要項目として位置付け、将来にわたって生産が維持できるよう、段階的な撤廃も含めて関税撤廃の対象から除外することなどを求めています。また、これらの項目が関税撤廃の対象から除外されないと判断した場合、TPP交渉からの脱退も辞さないことを求めています。

大筋合意を受けた記者会見で、安倍総理大臣は、コメや麦など農産物5項目の決議を踏まえ、重要品目を関税撤廃の例外とすることができたとしたうえで、国内農業への影響を最小限に抑えるため、政府内にすべての閣僚をメンバーとするTPP総合対策本部を設置する考えを示しました。

関連リンク

“攻めの農業へ”

安倍総理大臣はTPPの総合対策本部の初会合で、「農林水産業については、『守る農業』から『攻めの農業』に転換し、意欲ある生産者が安心して再生産に取り組める、若い人が夢を持てるものにしていく。万全の対策を講じていく」と述べ、農業の競争力の強化策を含む、万全な国内対策を講じていく考えを示しました。

農林水産物の生産減少額

農林水産省が2013年に行った試算によりますと、TPP交渉参加国に対する関税がすべて撤廃された場合、日本の農林水産物の生産額は約3兆円減少するとしていました。

出典
農林水産省試算(2013)