偽情報やなりすまし広告 対策の提言案まとまる

偽情報のまん延やなりすましの偽広告による詐欺被害など、デジタル空間の情報流通の課題について対策を話し合う総務省の検討会が開かれました。SNSなどのプラットフォーム事業者が対策を進めるよう促す制度づくりなどを国に求めるとりまとめの案が示されました。

16日、オンラインで開かれた会合では、インターネット上での偽・誤情報への対策を提言するとりまとめ案が示されました。

この中では、メタや旧ツイッターのX、LINEヤフー、グーグルなどプラットフォーム事業者へのヒアリングを行った結果を踏まえ、各事業者の取り組みについて、内容や透明性が十分とはいえないとしています。

そのうえで、プラットフォーム事業者が
▼なりすましやヘイトスピーチなど人の権利を侵害する情報
▼無登録業者の投資の呼びかけ、誇大広告など行政機関から法令違反だと指摘された情報
について、投稿の削除などを迅速に行うよう、国に具体的な制度設計を求めています。

一方、
▽感染症が流行した時に医学的に誤った治療法を推奨する情報
▽災害発生時の偽の救助要請
といった権利侵害や法令違反にはあたらないものの社会的影響が大きい偽・誤情報については、表現の自由への配慮から、削除ではなく収益化の停止などの方法をとるべきだとしています。

また、専門家やプラットフォーム事業者、メディア関係者、それに広告事業者など、情報流通に関わる当事者が連携して協力する協議会のような枠組みを国が設計し、その中で偽・誤情報の拡大を防ぐ行動計画の策定や、プラットフォーム事業者の取り組みの評価・検証などを行うよう提言しています。

この枠組みでは、実効性を高めるためプラットフォーム事業者に対して、関連情報の開示や提供を強く求められる仕組みを整備することが適当だなどとしています。

このとりまとめ案は、パブリックコメントを経て9月にも正式にまとまり、その後の国の政策に反映される見通しです。

SNS型の投資詐欺 手口は巧妙

著名人や投資家になりすまして「もうかる方法を教える」とうたう偽広告などが入り口となるSNS型投資詐欺について、警察庁は去年1月からことし5月の間におよそ5300件、金額にして700億円を超える被害が発生していると発表しています。

多くは、フェイスブックやインスタグラムなどに出ている投資を呼びかける広告からLINEのチャットに誘導され、メッセージのやりとりの中で投資の名目でお金を振り込ませるなどのケースで、実際に資産が増えているように見せかけるアプリを使うなどの巧妙な手口で、数千万円以上だましとられる被害も相次いでいます。

とりまとめ案では、こうしたなりすまし型の偽広告が財産の損害に加え、なりすまされた人の社会的評価を下げるなど権利侵害を起こしているとして、プラットフォーム事業者が対策を進めるよう促す制度づくりを国に求めています。

具体的には、広告を事前審査する段階での
▼日本語や日本の法律などを理解する人材の配置状況の公表
▼AIによる審査のエラー率など実効性についての情報を公開
させることが適当だとし、広告主に対して本人確認することも今後検討が必要だとしています。

また、事前審査をすり抜けた違法や不当な広告を速やかに削除するため、なりすまされた本人や行政機関などからの申請を受け付ける窓口を整備し、一定期間内に削除すべきかを判断して申請者に伝えることを制度化すべきだなどとしています。

災害時にも偽情報 対策は

1月に起きた能登半島地震ではXを中心に、実際の被害や救助要請が投稿された一方、実際と異なる被害の画像などが拡散され、救助活動や復旧活動が妨げられたこともあったと指摘されています。

Xの仕様変更で、一定の閲覧数などを獲得している利用者に広告の収益を分配する仕組みが導入されたことで、閲覧数を稼ぐ目的でこうした投稿が多数見られたとされています。

とりまとめ案ではこうした偽・誤情報について、Xなどのプラットフォーム事業者に収益化の停止や、ファクトチェックの結果をラベルで示すなどの取り組みを促す制度づくりが必要だとしています。

加えて、大規模な災害の時には偽・誤情報が拡散されやすい一方、情報収集や伝達の手段としてプラットフォームサービスの存在感が高まっており、災害時にどういう対応が必要か事前に計画を立てることが、事業者側に求められるとしています。

そして、それぞれの事業者の計画は、情報流通の専門家やメディア関係者などを交えて評価・検証し、表現の自由が制限されないよう、どの時点から「災害発生時」としての運用を始めるかなども事前に協議して決めておくことが望ましいとしています。