なでしこジャパン 五輪前 国内最後の強化試合でガーナに快勝

サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」は13日、パリオリンピック前、国内最後の強化試合でガーナと対戦し、4対0で快勝しました。

パリオリンピックで初めての金メダルを目指す世界ランキング7位の日本は、13日に金沢市で、世界65位のガーナと強化試合で対戦しました。

試合は、ことし1月に起きた能登半島地震の復興支援試合としても行われ、試合前には、両チームの選手たちがピッチの中心で円を作って、黙とうをささげました。

試合で、日本は前半から積極的にゴールに迫りましたが、体格で勝るガーナに球際の競り合いで苦しみ、相手に退場者が出て、数的優位になったあともゴールを決められないまま、0対0で折り返しました。

それでも、後半開始から、20歳の浜野まいか選手が出場すると、攻撃のテンポがあがり、6分には、田中美南選手と鮮やかなパス交換から決定的なチャンスが生まれ、最後は、田中選手が冷静にシュートを流し込んで先制しました。

そして、20分には、コーナーキックのボールを田中選手がヘディングでつなぎ、今度は浜野選手が右足で決めて2点目を奪いました。

さらにその2分後には、藤野あおば選手がフリーキックを直接決めて追加点を奪い、35分にも藤野選手の正確なフリーキックに、絶好のタイミングで飛び出した植木理子選手が頭で合わせて4点目を決め、ガーナを突き放しました。

日本は、パリオリンピック前、国内最後の強化試合で攻撃陣が持ち味を発揮して4対0で勝ち、オリンピックに弾みをつけました。

選手たちは14日にパリに向かい、現地で合宿を行うなどして大会に備えます。

藤野あおば「練習が実を結んだ」

直接フリーキックを決めるなど3得点に絡んだ20歳の藤野あおば選手は「前半から決めきりたい場面はあったが、後半しっかり得点できたところは自分が成長したところだと思うので、プラスに捉えてオリンピックに臨める。フリーキックは去年のワールドカップの準々決勝で外してから、自分の中でしっかり練習をして積み上げて来たところなので、それが実を結んだっていうのはすごくうれしかった」と振り返りました。

オリンピックに向けては「集中力を切らすことのできない毎日になるが、1日1日むだにせず大会ではゴールという結果で貢献できるように頑張りたい」と話していました。

浜野まいか「自分が流れを変えようと」

後半から出場し、1ゴール1アシストの活躍を見せた20歳の浜野まいか選手は「前半、チームがうまくいかない中で自分が試合の流れを変えようと思って入った。まず、田中選手が決めて少しほっとした。そのおかげで楽しんでプレーできたのが自身のゴールにつながったと思う」と試合を振り返りました。

オリンピックに向けては「前半からもう少しスイッチを入れて守備も攻撃もテンポを変えてプレーできたらいいと思う。オリンピックは中2日の厳しい日程だがしっかりリカバーをして、1試合1試合を大切にして世界一になりたい」と意気込んでいました。

熊谷紗希「もうやるしかない」

キャプテンの熊谷紗希選手は「前半もう少し自分たちのやりたいことができたかなと思う部分はあるが、ハーフタイムで修正しながら後半しっかりチャンスを作って4点を取って勝てたことはよかったかなと思う」と手応えを話しました。

オリンピックに向けては「ここまで来たらもうやるしかないし、チームとしてまだまだな部分もあるけれど、ここからまたいい準備をして大会に臨むことができればいいと思う」と話していました。

被災地の子どもたちも声援送る

能登半島地震の復興支援試合としても行われたなでしこジャパンの強化試合には、被災地でサッカーをしている小学生から高校生までのおよそ500人が招待されました。

このうち被害が大きかった輪島市を拠点に活動する輪島サッカークラブジュニアは、小学1年生から6年生までのメンバーおよそ30人がスタジアムを訪れました。

チームは地震で練習拠点を失い、今は週に1回だけ近くの高校のグラウンドを借りて練習をしているということで、上田真也監督は「日本サッカー協会から継続的な支援をいただいている中で試合を見る機会をいただけたことはとてもありがたい。子どもたちが希望を持てるようなプレーが見たい」と話していました。

招待された子どもたちはピッチに近い席で試合を観戦して大きな声援を送り、日本が得点を決めると大喜びしていました。

試合後、池田太監督はスタンドに向けて「たくさんの勇気を与えてもらいありがとうございました。今度はパリで自分たちがこの勇気を返せるように頑張ります」と活躍を誓っていました。

13日の試合のチケット収入などは、日本サッカー協会が復興支援を行う際の費用に充てられます。

課題の“対応力” 成長した姿見せる

なでしこジャパンのパリオリンピック前国内最後の強化試合は、前半、無得点ともどかしい展開で進むなか後半一挙に4点を奪い、試合の中で、柔軟に戦術を変えていく対応力を示しました。

去年のワールドカップで日本は、守備の際、ディフェンスの人数を5人にし、攻撃に移るときは、両サイドの選手が前線に上がって攻め込む形が機能し、ベスト8まで勝ち進みました。

しかし、準々決勝ではスウェーデンに研究され、次の一手が打てずに敗退した反省からオリンピックに向けてはディフェンスを4人にして中盤の人数を増やすフォーメーションに取り組むなど戦術の幅を広げてきました。

13日行われたガーナとの強化試合は、前半、ディフェンスを4人にするフォーメーションで臨みました。

中盤の人数を相手に合わせてしっかり守備をすることがねらいでしたが、両サイドの選手がなかなか攻撃に参加できず、選手どうしの距離も遠くなって個々の突破力に頼らざるをえない状況に陥りました。

相手のガーナは、世界ランキングこそ日本の7位よりを大きく下回る65位でしたが、フィジカル面が強く球際で競り負ける場面が続き前半を無得点で終えることになりました。

そうした状況の中、池田太監督は相手に退場者が出て中盤の選手が1人少なくなっていることを踏まえて後半からワールドカップと同じフォーメーションに切り替えました。

選手たちもこの変更に柔軟に対応し、両サイドの選手がより高い位置でプレーし後半から入った浜野まいか選手や藤野あおば選手など前線の選手たちも相手ゴールに近い場所でプレーできるようになりました。

攻撃のテンポがあがった日本は、6分に浜野選手と田中美南選手の連係からゴールが生まれ、その後のゴールラッシュにつながりました。

池田監督は「どれだけ準備しても予想外のことは起きる。後半、形を変えてサイドの選手がもう少し高い位置でプレーし攻撃の回数を増やすねらいで修正したが、選手間の距離感がよくなって数的優位に攻撃ができるようになった」と話し、試合中の戦術変更に選手たちが対応できたことに手応えを感じていました。

キャプテンの熊谷紗希選手も「きょうのように相手の状況を見て自分たちがねらいを持って形が作れればオリンピックでもいいサッカーができる」とここまでの積み上げに自信をのぞかせていました。

パリオリンピックに向けて池田監督をはじめ選手も何度となく口にしてきた“対応力”という課題。

オリンピック前、国内最後の強化試合で成長した姿を見せパリへの期待が膨らみました。