政府・日銀による市場介入か 外国為替市場で4円以上円高方向に

歴史的な円安局面が続く中、外国為替市場では11日夜、円相場が4円以上、円高方向に動く場面があり、政府・日銀による市場介入が行われたと見られます。

12日の東京市場でも、急速に円高方向に動く場面もあるなど、荒い値動きが見られました。

外国為替市場では、日本時間の昨夜発表されたアメリカの先月の消費者物価指数の上昇率が市場の予想を下回ったことをきっかけに円を買ってドルを売る動きが急速に強まり、一時、1ドル=157円台前半まで4円以上、値上がりしました。

政府・日銀による市場介入が行われたと見られ、市場関係者は「通常では考えづらい急速な値上がりで、アメリカの消費者物価指数の発表のあと円が買われたタイミングにあわせて行われたのではないか」と話しています。

12日の東京市場でも円相場は一時、1ドル=159円台まで値を戻したあと、再び1円以上、急速に円高方向に動く場面もあるなど荒い値動きが見られました。

午後5時時点の円相場は11日と比べて、2円41銭円高ドル安の1ドル=159円21~23銭でした。

ユーロに対しては11日と比べて、2円4銭円高ユーロ安の1ユーロ=173円15~19銭でした。

ユーロはドルに対して1ユーロ=1.0875~76ドルでした。

市場関係者は「今後、歴史的な円安に歯止めがかかるかは不透明で、アメリカで市場の想定どおり利下げが行われるかや、日銀が追加利上げに踏み切るタイミングなどに関心が集まりそうだ」と話しています。

鈴木財務相 市場をけん制「一方的動きに懸念」

外国為替市場で政府・日銀が市場介入に踏み切ったという見方が出ていることについて、鈴木財務大臣は12日の閣議のあとの記者会見で「介入については、有無も含めてコメントは控えるというのが基本的立場だ」と述べるにとどめました。

その上で鈴木大臣は、歴史的な円安水準が続く為替相場の動きについて「為替の水準はファンダメンタルズ=経済の基礎的条件を反映して市場で決定されるものと考えている。そうした中で安定的に推移することが望ましく、急激な変化は望ましくないし、特に一方的動きには懸念を持っている」と述べ、市場の動きをけん制しました。

財務省 神田財務官 市場の動きをけん制

財務省の神田財務官は12日午前8時すぎ記者団の取材に応じ、11日夜、市場介入を行ったか問われたのに対し「きのうどうしたかについて答えることはしない」と述べました。

その上で、このところ外国為替市場で進んでいる円安の動きについて「さまざまなデータを見ても相当の部分が投機ではないかと考えるのが自然で、それで国民生活が脅かされるとしたら問題だと考えている」と述べて市場の動きをけん制しました。

“推計3兆円超規模の市場介入行った可能性”民間の分析

外国為替市場で11日夜、円相場が急激に円高方向に進んだ動きについて、民間の金融仲介会社は、日銀が発表した統計から政府・日銀が推計で3兆円を超える規模の市場介入を行った可能性があると分析しています。

日銀が12日発表した当座預金の統計では3連休明けの今月16日、3兆1700億円の資金が金融機関から政府に移動する見通しだということです。

民間の金融仲介会社「東短リサーチ」によりますと、政府・日銀が円買いの市場介入を行うと通常、見込まれる金額を大幅に超える資金が移動するということで、今回は、推計で3兆円を超える規模の市場介入を行った可能性があると分析しています。

実際に介入が行われたのかどうかは財務省が今月末に発表する統計で明らかになります。

元財務官「円を買い戻す動きで介入か」

11日夜の円相場の動きについて、2014年から2015年にかけて財務省で財務官を務めた山崎達雄氏は、政府・日銀が4月から5月にかけて行ったのと同様「覆面介入」の形で、事実を明らかにせずに市場介入を実施したと推測しています。

そう考える理由について山崎氏は「前回、市場介入したあとも1ドル=160円台の円安がかなりしつこく続いている中で、当局は介入のタイミングをずっと探っていたと思う。こうした中、昨夜はアメリカの消費者物価の発表があり結果が予想を下回ったため、自然に円を買い戻す動きが出た。その動きを後ろから支え、流れを促進させるような感じだったのではないか」と分析しました。

市場介入の効果については「過去を見てもなかなか介入だけで、相場状況を変えることは容易ではない。ただ、介入にはメッセージを発する効果があり、円安で食品や日用雑貨の値上がりが続いていて、生活が厳しいわけなので、投機的な動きによる実態とかけ離れた円安はよくないという姿勢を見せることに意味があると思う」と述べました。

山崎氏は今後の円相場の見通しについて「今の円安ドル高は、日米の金利差に着目して動く。アメリカの9月の利下げが、市場では織り込まれつつあるが、それが着実に行われるのか。日本の次の利上げが7月なのか9月なのか。こうしたことが物価や経済の状況から分かってくれば、今の非常に投機的で行き過ぎた円安の相場は長続きはしないと思う。為替は実際の金融政策の変更を先取りする形で動くので、年内どころかもっと早いタイミングで潮目が変わるだろうし、まさに潮目の変わる兆候を当局は感じ取って、きのう、介入したのではないか」と述べました。