NATO 米の関与低下を懸念 今後のあり方やロシアへの対応は

ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、NATO=北大西洋条約機構の首脳会議がワシントンで始まり、加盟国の結束とウクライナ支援の強化を打ち出す見通しです。

そのなかで各国の注目はアメリカの次期大統領が「誰になるか」です。
もし、トランプ氏が返り咲いたら…。
NATOのあり方を見直す?ロシアやウクライナへの対応は?

トランプ氏をよく知るアメリカの元大使やヨーロッパ側で対応した元大使に取材しました。

トランプ氏 「負担軍事費が十分でないなら防衛しない」

トランプ氏は2月、南部サウスカロライナ州で開かれた選挙集会でNATO各国は軍事費を十分に負担していない。彼らが払わないのであればわれわれは防衛しないと述べるなど、相応の費用負担がなければ加盟国が攻撃を受けても防衛しない構えを繰り返し示しています。

さらに事実上の公約「アジェンダ47」の中で、みずからの政権下でNATOの目的と任務の根本的な見直しを始めたが、そのプロセスを完了させなければならない西洋文明にとって最大の脅威はロシアではない」と述べ、NATOのあり方を見直すと強調しています。

NATOは国防費増でアピール

NATO加盟各国は、NATOの軍事態勢を確保し続けるため、GDP=国内総生産の少なくとも2%を国防費にあてることを2014年の首脳会議で正式に合意しました。

NATOによりますと、2014年の時点で目標を達成したのは3か国でしたが、2024年は32か国のうち、23か国が達成する見通しです。

NATOのストルテンベルグ事務総長は6月、ワシントンで記者団に対し「ことしは23か国がGDPの2%以上を国防費にあてた。これは4年前の2倍で、より多くの国が安全保障に投資していることの証明だ」と述べ、ヨーロッパは集団防衛への関与を強めているとアピールしました。

NATO国防費をめぐって

米元大使「トランプ氏望むのは欧州がより多くの軍事費使うこと」

もしトランプ氏が大統領に返り咲いたらどうなるのか。
トランプ前大統領をよく知るアメリカのソンドランド元EU大使がNHKのインタビューに応じました。

ソンドランド氏は2017年のトランプ氏の大統領就任に向けて多額の資金援助を行った有力な支援者の1人で、トランプ政権で2018年から20年までEU大使を務めました。

トランプ氏がNATOのあり方を見直すと訴えていることについて「トランプ氏は、ヨーロッパには、これまでアメリカが背負ってきた多くの負担を背負うだけの力があると信じていて、その負担の多くをヨーロッパに移したいと考えている。トランプ氏が望むのは、アメリカが中国や北朝鮮、イランの封じ込めに集中できるようにするため、ヨーロッパがみずからのために立ち上がり、NATOのためにいまよりも多くの軍事費を使うことだ」と述べました。

さらに、NATO23か国が国防費の負担目標を達成する見通しとなっていることについて「ヨーロッパが必要としているすべてのものや、起きているさまざまなことを考えれば、トランプ氏が2%で満足することはない。彼はヨーロッパに圧力をかけ続ける」と述べ、さらなる負担を求めるという見方を示しました。

独元大使 “トランプ氏 さらなる国防費の増額求める可能性も”

増額の予想はヨーロッパ側でも出ています。

インタビューしたのは2023年までドイツの駐米大使を務めていたエミリー・ハーバー氏です。トランプ氏について「大統領の任期中、安全保障上の利益と経済問題という直接関係がない2つのものを結びつけてきて非常に対応が難しかった」と述べ、トランプ氏が再び大統領になればヨーロッパは対応に苦慮するという見方を示しました。

そのうえで「ヨーロッパ側の国防費がGDP=国内総生産の2%というNATOの目標を達成していても、取り上げられるのは確実だと思う」と述べ、トランプ氏が国防費のさらなる増額を求める可能性があると指摘しました。

ドイツ 第2次世界大戦後初めて軍派遣 防衛強化アピール

国防費の増額の可能性も指摘されるなか、防衛に貢献する姿勢を強調しているのがドイツです。トランプ氏が大統領在任中には、国防費の負担が少ないと名指しで批判されていました。

ドイツ政府は2023年、NATOに加盟するバルト三国のリトアニアの防衛を担うため5000人規模の部隊の駐留を決め、来年から本格的な派遣を始める予定です。ドイツ軍の外国での常駐は第2次世界大戦後、初めてです。

リトアニアには、安全保障上の懸念から「NATOのアキレスけん」とも呼ばれるロシアの飛び地のカリーニングラードとベラルーシに挟まれた長さ100キロほどの国境地帯「スバウキ回廊」があり、防衛の重要性が増しています。

ドイツ軍は5月にリトアニアでロシアによる攻撃への対処を想定したとみられる大規模な軍事演習を報道陣に公開しました。演習ではドイツ軍の主力部隊が敵と交戦して後退するリトアニア軍の救援にかけつけ、主力戦車の「レオパルト2」や最新鋭の歩兵戦闘車「プーマ」などが一斉射撃を行い、撃退していきました。

ドイツ軍トップのブロイヤー総監は、NATOの集団防衛について「ヨーロッパ側がもっと責任を持たなければならない」と述べヨーロッパの加盟国がいっそう貢献する必要があると強調しました。その一方でNATOの集団防衛は「共に成し遂げるもの」とも述べアメリカの関与が不可欠だという認識も示しました。

ロシアとウクライナの動きへの対応は

米元大使「トランプ氏はプーチン氏に対し強い姿勢で臨んできた」

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、トランプ氏をよく知るアメリカのソンドランド元EU大使は、個人的な意見だと断ったうえで「トランプ氏は、両大統領と協議に入るだろう。プーチン大統領に対しては、『ゼレンスキー大統領との取り引きに応じるか、アメリカがゼレンスキー大統領が望むあらゆる武器を与えるか、どちらかだ』という厳しいメッセージを送るだろう」と述べました。

またトランプ氏が、プーチン氏を「賢い」と評価してきたことなどから、「独裁者に魅了されているのではないか」との指摘が出ていることについてトランプ氏は独裁者に対し非常に冷静だ。カメラが回っていないところでは、彼らに対し非常に厳しいと述べました。

その上で「トランプ氏は、公開されない会話では、基本的にこのように言っている。『ウラジーミル、ロシア国民はあなたの命令をなんであれ、実行しなければならないだろう。だが、友よ、聞いてくれ、もし、あなたがウクライナを侵略するなら、わたしはやりたくないが、あなたの国を空爆しなければならない、だからやめておけ』というものだ」と述べ、トランプ氏はプーチン氏に対し強い姿勢で臨んできたと明らかにしました。

独元大使「“露勝利でも米覇権に影響及ばない”と考える懸念が」

ドイツの駐米大使を務めていたエミリー・ハーバー氏は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「ヨーロッパ諸国がいかに自国の防衛に多額の投資をしなければいけないかを示すものだった」と述べ、ヨーロッパ側はアメリカ大統領選挙の結果に関わらず、NATOの集団防衛への貢献や国防費の増額に取り組む必要があるとしています。

その一方、トランプ氏がロシアは最大の脅威ではないとか、交渉でウクライナへの軍事侵攻を終わらせると主張していることについて「“ロシアがこの戦争に勝利してもアメリカの覇権に影響は及ばない”と考えるのではないかという懸念がヨーロッパ諸国にはある。われわれはロシアへの非常に明確な姿勢から後退することの結果を説明し、世界のほかの地域に与える長期的な影響について指摘する」と述べ、アメリカがNATOの集団防衛で中核的な役割を果たし続けるよう働きかけが欠かせないという考えを示しました。